商品車輸送など4事業を柱に100年企業を目指す 総合運行管理システムで業務効率化と安全運転の徹底を実現 採用でもホームページが威力 栃木陸送(栃木県)

目次

  1. 「とちりく」を100年続く会社にしたい 自走陸送専業会社として創業し、商品車輸送、部品のルート配送、納車前整備事業へと順次拡大
  2. 三つの企業理念の一つであるビジョンは「100年先もお客様と共に在る」
  3. 行動規範10箇条の筆頭は「安全最優先」。運転日報のデジタコデータでドライバーごとに安全運転をチェック
  4. 総合運行管理システムの大本を1990年代半ばに導入。まず配車管理と請求書作成業務を一元化
  5. 総合運行管理システムと人材採用担当の登用でこれからを見据える
  6. ホームページのリクルートサイトを充実化。4本柱の事業を紹介する動画もアップ
中小企業応援サイト 編集部
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栃木県宇都宮市を拠点とする栃木陸送株式会社は、複数の大手自動車販売会社と協業関係を確立し、商品自動車の輸送、自動車部品のルート配送、新車の納車前整備、冷凍車の自走陸送を4本柱に、北関東に確固たる事業基盤を確立している。早くから配車管理と請求書作成業務を一元化するなどICTシステムを積極的に活用してきており、業務プロセスの効率化と安全運転の徹底を実現している。(TOP写真:オレンジ色と白色のツートーンカラーで統一された車両が並ぶ栃木陸送砂田車庫)

「とちりく」を100年続く会社にしたい 自走陸送専業会社として創業し、商品車輸送、部品のルート配送、納車前整備事業へと順次拡大

「私の人生の目標でもあるのですが、〝とちりく〟(栃木陸送)を100年続く会社にしたい。そのためには、これからも従業員やお客様、地域の人たち、そして求職者の方々にも選ばれ続ける会社にしていかなければいけません」。こう言葉に力を込めるのは栃木陸送の山本将也取締役本部長だ。

栃木陸送は1969年8月、山本取締役の祖父、山本勝己氏が商品として売買される自動車を自走で運ぶ会社として創業。1971年に冷凍車製造開発メーカーが栃木県に工場進出したのを機に、冷凍車の自走陸送も請け負うようになる。1977年には有限会社から株式会社に組織変更するとともに、大手自動車メーカーの新車をキャリアカー(車両運搬車)で自動車販売店に届けるようになった。さらに1994年からは自動車販売店や自動車整備工場にアフターパーツ(補修用部品)を届けるルート配送事業を開始。2002年には「PDI(Pre Delivery Inspection)」と呼ばれる新車の納車前整備事業にも乗り出すなど、自動車関連事業を順次拡大してきている。

2003年からは山本取締役の父、山本幹夫氏が2代目の代表取締役に就任。2024年で創業55周年を数える。山本取締役は大学卒業後に地方銀行に入行し、経理・財務など経営の基礎を学んだあと、2018年4月に栃木陸送に入社。キャリアカーのドライバーを2年ほど務めたのを皮切りに同社の各現場を順次担当。2024年7月に役員に就き、山本社長を支えて社業全般を見るようになった。「100周年を迎えるのは私が76歳の時。とにかく、それまで、そしてそこから〝とちりく〟を次の世代につないでいくのが私の使命です」と言い切る。

三つの企業理念の一つであるビジョンは「100年先もお客様と共に在る」

商品車輸送など4事業を柱に100年企業を目指す 総合運行管理システムで業務効率化と安全運転の徹底を実現 採用でもホームページが威力 栃木陸送(栃木県)
栃木陸送の本社。2020年に現在地に移転した

同社のミッション、バリュー、ビジョンの三つで構成される企業理念のうちビジョンは「100年先もお客様と共に在る」というもので、山本取締役の思いそのものでもある。ちなみにミッションは「クルマのある豊かな社会を支える」、バリューは「未来をあきらめない集団になる」である。

現在のメイン事業となっているのが年間約10万台にのぼる商品車輸送。最大手自動車メーカー系列の販売会社のモータープールから、キャリアカーを使って栃木県内各地の販売店に新車を運ぶ事業だ。

アフターパーツを4トンのパネルバンに積んでデリバリーするルート配送事業も、商品車輸送事業と同じ二つの自動車メーカー系列の販売店が中心で、そのほかに整備・修理工場にも届ける。アフターパーツのほかにエンジンオイルも運ぶため、バルク車も2台稼働している。

PDI事業は、パーツ取り付け、コーティング、洗車といった新車の納車前整備が中心で、そのほかに中古車再生業務もある。

自走陸送事業は、自動車メーカーや車体製作メーカーなどで生産された大型車、中型車、特殊車といったキャリアカーでは運べない自動車を、自走で全国各地に運ぶ事業。栃木県上三川町にある冷凍車メーカーの工場から冷凍・冷蔵車を陸送する仕事がメイン。

このほか、これら4本柱から派生した事業として、自動車登録代行業と損害保険代理店業務も展開。また、関連会社でトラックのボディー塗装や分解整備も行っている。

1台積みから6~7台積みまでの各種キャリアカーをはじめ、パネルバンやバルク車まで含めた同社の保有車両は82台で、グループ従業員数は155人(2024年4月時点)。車両はオレンジ色と白色のツートーンカラーで統一され、右のドアにはロゴマーク、左のドアには「TOCHIRIKU」の文字。地域の人々には「オレンジ色のキャリアカーといえば〝とちりく〟」として知られている。

行動規範10箇条の筆頭は「安全最優先」。運転日報のデジタコデータでドライバーごとに安全運転をチェック

ドライバーが主役のビジネスだけに、安全運転の徹底は怠らない。同社の10箇条から成る行動規範の筆頭が「安全最優先」だ。「命と身体を守るため我々は常に安全を最優先する。安全に対する思考を変え、行動を変え、習慣化し安全人間になる。」とうたっている。「私たちのような仕事は一発のミスの影響が大きい。人の命に関わることもあるので、責任重大なのです」と山本取締役。年2回、従業員全員が交通安全に関する標語を作る「安全標語大会」を実施しており、最優秀作品は社屋前ののぼりになったり、自社のカレンダーに使われたりする。ちなみに2023年度の最優秀作品は「『気をつけて』安全願う 合言葉」だった。

また、ドライバーには各種運転適性検査を受検させるほか、毎月、運転日報のデータに基づいて、必要に応じた安全運転指導を徹底している。運転日報は、各車両に搭載されているデジタル式運行記録計(デジタコ)と連携している総合運行管理システムにより、自動的に作成される。運転日報にはデジタコから読み取った運行データを様々な角度で分析し、グラフ化して表示される仕組みだ。

運行管理全般を担当する輸送部の松本博樹部長は、運転日報に基づく安全運転指導についてこう語る。「私のパソコンには1ヶ月の運行データがどーんと出ます。スピード、急ブレーキ、急加速、アイドリングなどの状況が、高速道路と一般道路ごとに点数で表示されるようになっています。会社のルールで定めた点数を守れていないドライバーには、指導を怠りません。

総合運行管理システムの大本を1990年代半ばに導入。まず配車管理と請求書作成業務を一元化

栃木陸送がこの総合運行管理システムの大本となるシステムを導入したのは1990年代半ばにさかのぼる。毎日の配車状況に応じた請求書作成作業を電子化するのが狙いでオフコンに運行管理システムを走らせていた。当時、社内でパソコンを使っているのは、まだ役員だった山本社長だけという中での思い切った決断だった。

総合運行管理システムと人材採用担当の登用でこれからを見据える

オフコンからパソコン、ブラウン管モニターから液晶モニターへとハードウェアが進化し、ソフトウェアもバージョンアップを繰り返すにつれ、業務効率が向上。Webオーダーシステムも導入して、総合運行管理システムと連動させることで、日次や月次の受注、請求、支払のデータが自動的に管理され、売上や経費の計算も自動的に行えるようになった。配車表や運転日報も自動的に作成できるので、ドライバーの労働時間管理も早くから対応できたという。この結果、「2024年問題」と呼ばれるドライバーの労働時間規制の強化についても、影響は限定的であった。

「2024年問題」はドライバーの人手不足をもたらすという側面がある。だが、栃木陸送では従業員の採用についてもこのところ順調に推移しているという。山本取締役にその秘訣を問うと、「採用活動に注力できる人間を登用したこと。」と即答する。2024年3月に統括支援部人事課採用担当に任命された岩﨑正充氏のことだ。それまで、採用の専任担当は置いておらず、山本取締役らが片手間仕事で必要に応じて担当していたのだという。

岩﨑氏はもともと、システム支援会社の営業担当として出入りしているうちに栃木陸送という会社の将来性に魅力を感じ、2023年1月に同社に転職。PDI事業に従事したあと現職に就いた。応募してきた人には自らが転職した理由でもある栃木陸送の将来性を強く訴えた。

岩﨑氏が語る。「運送業は人手不足がものすごく顕著に出ている業態です。私は営業マンだったので、応募者には営業感覚で、ドライバーという職種や栃木陸送という会社の魅力をどう伝えられるかを常に考えています。例えば、『これだけ大手自動車販売店様と密接な取引をしている運送業は、栃木県には弊社以外にはない』といったことをアピールします。だいたい、(応募者からの)最初の電話で、しっかりと納得してもらい、役員らと面接する段階では入社の意思を固めてもらっているように心がけています」

ホームページのリクルートサイトを充実化。4本柱の事業を紹介する動画もアップ

商品車輸送など4事業を柱に100年企業を目指す 総合運行管理システムで業務効率化と安全運転の徹底を実現 採用でもホームページが威力 栃木陸送(栃木県)
ホームページのリクルートサイトにアップされた動画の一部

松本部長が語る。「この業界は2、3月の繁忙期に合わせてドライバーの採用に奔走するのですが、四半世紀以上前から会社のことを知っている人間としては、どうして繁忙期でもないのに新しい人が入ってくるのだろうと思えるくらい人が増えています。だから、ドライバーも休暇をしっかり取れて、より良い環境で働けています」。続けて、「かつては新聞広告で募集していたのですが、山本取締役がホームページでの募集を提案。岩﨑も携わるようになりそのホームページを幅広い世代の方に見てもらえるように少しずつ更新していったのです」とも。

そのホームぺージのリクルートサイトには2024年8月、「とちりくを知る」と題する動画がアップされた。同社の4本柱の事業のそれぞれについて、女性リポーターが現場の従業員に教えてもらう内容で、わかりやすく、親しみやすく制作されており、ますます応募者を増やすことになりそうだ。

企業概要

会社名栃木陸送株式会社
住所栃木県宇都宮市川田町748-1
HPhttps://tochiriku.co.jp
電話028-680-6323
設立1969年8月
従業員数155人(グループ合計/2024年4月時点)
事業内容  商品車輸送、ルート配送、PDI、自走陸送、自動車登録代行業、損害代理店事業