経営者
(画像=Aaron-Schwartz / Shutterstock.com)

30年にわたる平成の時代は終わり、日本は令和という新しい時代を迎えています。昭和と平成を比較すると、2つの時代の変わり目に経営者の条件に変化があったことは間違いありません。昭和と平成で経営者の条件が異なるように、平成と令和でも経営者に求められる条件は変わってくるでしょう。

では、平成と令和の経営者を分ける条件は何なのでしょうか?今回の記事では、令和の新時代に世界を変える経営者に求められる条件について、平成との比較や人工知能などのテクノロジー、グローバル経済の深化など、あらゆる視点から解説します。

目次

  1. 世界の経営者4選【昭和編】
    1. 1.ジャック・ウェルチ
    2. 2.レイ・クロック
    3. 3.松下幸之助
    4. 4.稲盛和夫
  2. 世界の経営者4選【平成編】
    1. 1.スティーブ・ジョブズ
    2. 2.ジェフリー P.ベゾス
    3. 3.孫正義
    4. 4.柳井正
  3. 令和における経営環境の3つの変化
    1. 1.グローバル化
    2. 2.アジア諸国の台頭
    3. 3.スタートアップの登場などによるフラット化
  4. 世界を変える経営者の3つの条件
    1. 1.最先端のITに精通し、その技術を最大限活用したビジネスを行う
    2. 2.日本国内のみならず世界中の市場や競合企業を視野に入れる
    3. 3.今後の世界を見据えた新しい市場の創出

世界の経営者4選【昭和編】

平成と令和を比べるには、昭和と平成の時代を牽引してきた世界の経営者について知っておく必要があります。これまでの時代を作り上げた経営者について、どのような条件が求められていたのかを把握しておきましょう。

まずは、昭和を代表する世界の経営者を4人紹介します。

1.ジャック・ウェルチ

ジャック・ウェルチ氏は、アメリカにある世界最大規模の電機メーカー「ゼネラル・エレクトリック(GE)社」の元最高経営責任者(CEO)です。1960年に同社に入社した同氏ですが、たちまち類稀な才能を発揮し、瞬く間にCEOの座まで上り詰めました。

同氏はCEOを務めた21年間で、事業の徹底的な選択と集中に取り組み、GE社の売上高を5倍、純利益を8倍まで成長させました。

大規模なリストラを敢行した非情な経営者と言われることもありますが、圧倒的な実績を出した点や、M&Aを積極的に行って事業を成長させた点で、昭和を代表する世界の経営者です。

2.レイ・クロック

レイ・クロックは、ファストフード「マクドナルド」を世界中に広めた経営者です。レイ氏は、マクドナルドの創始者である「マクドナルド兄弟」からマクドナルドの営業権を買収し、マクドナルドのブランドを世界中に広げました。

経営者としてレイ氏が特に優れていたのが、現代では一般的となっているファストフードのビジネスモデルを確立した点です。いつでも同じ味を手軽に食べられるビジネスモデルを確立したことで、客の回転率が向上した上に、食器洗いなどに要する手間の削減にもつながりました。

3.松下幸之助

日本が世界に誇れる昭和の経営者といえば、パナソニックを創業した松下幸之助です。

松下幸之助が経営者として特に優れていた部分といえば、部門や立場を超えて意見をやり取りする社風を作り上げた点です。他の部門に対してはもちろん、部下が経営者である松下氏に対して提案することも歓迎していました。立場や部門の壁を取り払ったからこそ、全員が一致団結して会社の成長を実現したわけです。

一代でパナソニックを日本の代表企業にまで育て上げた手腕から、松下幸之助は「経営の神様」と称されるまでに至っています。

4.稲盛和夫

昭和を代表する日本の経営者としてもう一人有名なのが稲盛和夫です。京セラやKDDIなど、現在の日本を牽引する企業を次々立ち上げては成功させた背景には、稲盛氏が独自に編み出した「アメーバ経営」という手法があります。

アメーバ経営とは、会社の組織をできるだけ細かく分割し、各組織の仕事の成果を「時間当たりの採算」という形で分かりやすく示すことで、全社員に経営に参加している意識を持たせる経営手法です。稲盛氏の経営する京セラは、アメーバ経営を実践することで、1959年の創業以来一度も赤字を出さずに現在に至っています。

また稲盛氏は、当時経営難に陥っていた日本航空の会長に就任し、アメーバ経営のノウハウを駆使することで、着任した翌期には営業利益1,800億円にまで業績をV字回復させました。

中国人経営者の間でも大きな支持を集めているアメーバ経営を発案した点で、稲盛氏は昭和の偉大な経営者といえます。

世界の経営者4選【平成編】

次に、平成を代表する経営者を人4紹介します。

1.スティーブ・ジョブズ

平成の時代、世界に最も大きな影響を与えた経営者といえば、スティーブ・ジョブズでしょう。 今では多くの人が使っているiPhoneやMacBookといった商品は、ジョブズ氏が経営するAppleが開発したものです。

世の中に革新的な商品を数々輩出した背景には、ジョブズ氏の合理的な経営手法がありました。例えば、製品ラインナップの大幅な削減により、競争力のある主力事業に経営資源を集中させたり、製造工程をアウトソーシングすることで在庫の削減や自社工場の数を抑えたりといった施策を実施しています。

カリスマ性やアイデア力ばかりが称賛されるジョブズ氏ですが、その経営手腕も目立たないながら素晴らしいものでした。

2.ジェフリー P.ベゾス

ジェフリー P.ベゾスは、ジョブズ氏と並んで、平成の時代に世界に大きな影響を与えた経営者の一人であり、世界最大のECサイトを運営する「Amazon.com」を立ち上げました。

ベゾス氏の経営者としての最大の特徴は、徹底した顧客満足の追求です。赤字が続いても品ぞろえの豊富さや配送の素早さ、値段の安さに妥協せず追い求め続けたことで、今では世界中の消費者からの支持を集めるに至っています。

顧客満足を徹底追求した甲斐もあり、サービス立ち上げからわずか2年で株式公開を実現しました。「顧客志向」を掲げる経営者は多いものの、ベゾス氏ほど顧客の利益を最優先している経営者はいないでしょう。

3.孫正義

平成の世の中で、最も優秀な日本の経営者といえば孫正義でしょう。孫正義は、電気通信事業やインターネット関連事業など、あらゆる事業で圧倒的な業績を出しているソフトバンクグループの会長です。

経営者として孫正義が圧倒的に優れているのは、時代の先を読んだ的確な判断力と、素早く先進的なビジネスを形にする行動力の2つです。例えば2006年には移動通信業者の最大手「ボーダフォン」を買収し、通信事業における現在の確固たる地位の基礎を作りました。また2008年には、当時は日本で馴染みのなかったiPhoneにいち早く目をつけ、Appleとの交渉の末にiPhoneの独占販売権を獲得しています。

いち早く伸びるビジネスに目をつけ、それを確実に形にする点で、孫正義氏は世界中を見ても優れた経営者であるといえます。

4.柳井正

ユニクロなどのファッションブランドを展開するファーストリテイリングを経営する柳井正は、孫正義氏に匹敵する影響力と実績を持つ経営者です。父親がやっていた紳士服店を継いだ柳井氏は、斬新な経営手法によりたった一代で日本を代表するアパレルブランドを築き上げました。

柳井氏が一代で国内有数の企業を作り上げた秘訣は、当時の日本では馴染みのないSPA(製造小売業)というビジネスモデルを導入した点にあります。SPAとは、商品の企画や製造から流通や販売までの工程を全て自社で行うビジネスモデルです。SPAの導入により同社は、過剰な在庫や製造コストの削減を実現し、質の良い商品を安い値段で販売することに成功したわけです。

中国や東南アジアへの海外進出も果たしたユニクロを作り上げた柳井氏は、世界に通用する能力を持った日本の経営者です。

令和における経営環境の3つの変化

では、令和という新時代を迎えるにあたって、経営環境はどのように移り変わるのでしょうか?この章では、令和を生き抜く企業を取り巻く経営環境について3つに分けて説明します。

1.グローバル化

平成のおよそ30年間で、日本の経済は大きくグローバル化しました。ちなみにグローバル化とは、資本や労働力、サービスの移動が国境という垣根を越えて活発となり、国と国の間の経済的な結びつきが強くなる現象を意味します。

平成元年と直近のデータを比べると、貿易額は67兆円から164兆円と2.5倍に、海外直接投資は6倍、インバウンド(訪日外国人の数)はおよそ10倍になっており、日本経済はグローバル化の一途をたどっているのです。

経済のグローバル化は、企業の経営にも大きな影響をもたらしました。平成30年度の世界時価総額ランキングを確認すると、上位をアップルやアマゾンといったグローバルな規模で事業を行う企業が軒並み上位を独占しています。

特に近年は、AI(人工知能)やビッグデータ、5Gといった最新の技術が次々と生み出されている影響で、ますます国境に関係なくビジネスを展開しやすくなりました。令和の時代も技術力の進歩に伴い、一つの国に縛られるのではなく、国境の垣根を越えてビジネスを展開する企業が台頭すると考えられます。例えば、あたかも外国人と同じオフィスで会話しながら働いたり、実店舗で外国人から直接商品を購入したりといった感覚が当たり前となるかもしれません。

令和の時代を生き抜くには、こうしたグローバル化を前提に経営戦略を考える必要があるでしょう。

2.アジア諸国の台頭

平成の30年間で、日本経済が冷え込む一方でアジア諸国は大きく経済力を上げました。例えば中国は、平成元年(1989年)の名目GDPはおよそ4,610億ドルでしたが、平成30年(2018年)にはおよそ13.3兆ドルまで名目GDPが成長しました。

平成元年には日本が中国におよそ7倍弱もの差をつけていましたが、平成30年には逆に2倍以上も名目GDPに差を付けられており、この30年間で中国が大きく台頭したことが伺えます。また中国以外にも、インドやベトナム、シンガポールなど、あらゆるアジア諸国がこの30年間で経済成長を果たしました。

中国を中心としたアジア諸国の台頭は、令和の時代もますます加速すると予想されます。例えば中国やバングラディシュやインドでは、人口の増加により労働力の上昇が予測されている上に、プログラミング教育などによるIT人材の育成に注力しているため、生産性の向上が見込めます。

地政学的リスクも存在していますが、令和の新時代を生き抜くには、中国をはじめとしたアジア諸国の企業との競争も視野に入れた上で、経営戦略を練る必要があるでしょう。

3.スタートアップの登場などによるフラット化

平成の30年間で特徴的だったのは、インターネットをはじめとしたIT技術の進歩に伴い、短期間でイノベーションを巻き起こし、事業の急速な拡大を実現するスタートアップが数多く出現したことです。世界ではGoogle、Amazon、Facebook、Amazonを指すGAFA、日本ではメルカリやDeNAといった企業が、短期間で急成長して話題になりました。

令和の時代は、さらに高度なスキルや創造的なアイデアを持ったスタートアップが台頭することで、世界が「フラット化」すると予想されます。世界のフラット化とは、モノやサービス、カネなどが国境を越えて満遍なく行き渡る状況を意味します。例えばFacebookはアメリカのマーク・ザッカーバーグが起こした企業ですが、日本でも同じようにそのサービスを受けられることから、フラット化の一例と言えるでしょう。

今後技術力の進歩に適応したスタートアップが出てくることで、これまで以上にフラット化が進むと予想されます。フラット化を日本企業から見ると、遠く離れた海外企業が競合となりえることを意味します。国内のみならず海外の消費者や企業の動向にも目を向けることが、令和の時代に加速するフラット化に適応する上では重要となるでしょう。

世界を変える経営者の3つの条件

今後企業が直面する経営環境について理解したところで、いよいよ本題を考えてみましょう。令和に求められる世界を変える経営者の条件とは、一体どのようなものでしょうか?具体的には、下記3つの条件が考えられます。

1.最先端のITに精通し、その技術を最大限活用したビジネスを行う

お伝えした通り、平成の30年間で企業を取り巻くIT環境は大きく進歩し、令和に突入してからその進歩の速度はさらに上がっています。

そのため、令和の時代を生き抜く経営者には、こうした最先端のITについて精通しておくことが求められます。ただし単にITについて知っておくだけではなく、その技術を最大限ビジネスで活用する必要があります。

しかし経済産業省が公表している「DXレポート」によると、多くの日本企業は最新のデジタル技術を活用してビジネスモデルを構築する「DX化」に適応できておらず、このままだと大半の企業は市場の変化に適応できずに敗者になると予測しています。

したがって令和の時代を生き抜く経営者には、AIやビッグデータ、5GなどのITに精通し、その技術を最大限活用したビジネスを実践することが求められます。例えば、ソフトバンクやトヨタ自動車といった国内を代表する企業では、最先端の技術を用いた自動運転のビジネスに積極的に取り組んでいます。

身近なところであれば、CRMの活用やWebマーケティングに注力するなど、大きな設備投資がいらないため、規模の大きくない企業でも実践できる取り組みも多いでしょう。

2.日本国内のみならず世界中の市場や競合企業を視野に入れる

令和の時代、世界に大きな影響を与えたいならば、日本のみならず世界中の市場や競合企業にも目を向けなくてはいけません。

前述した通り、スタートアップの台頭や技術力の進歩により、企業の競争でもグローバル化が加速しています。特に中国や東南アジアの有力企業が日本の市場に参入していることや、国内人口の減少の影響で、令和の時代は日本国内で安定的な経営を続けることは難しくなると予想されます。

以上より令和を生き抜く経営者は、世界中の市場や競合企業の動向を探り、自社にとって有利な戦略を採用することが必要です。例えばアジア全体を市場にしたビジネスを展開したり、市場が成長している先進国に海外進出したりといった戦略が考えられます。

世界全体に視野を広げることで、厳しい経営環境で生き残れるだけでなく、グローバルな規模で影響を与えるビジネスを展開できる可能性があるのです。

3.今後の世界を見据えた新しい市場の創出

昭和の経営者と平成の経営者、どちらにも共通している要素が「将来を見据えた事業を創出している点」です。

例えばFacebookは、つながっている知人の近況を知れる「ニュースフィード」という機能を2006年に実装しました。当初は反対されましたが、経営者であるザッカーバーグ氏はかたくなにサービスを続け、今では世界中で当たり前に使われる機能となりました。

成功している経営者は、反対されても今後の世界を見据えて新しい市場を作り出すことで、事業を大きく成長させています。

時代が代わり令和になっても、「未来を見据えた市場創出」が世界を変える経営者にとって必要な条件であると考えられます。令和の時代に大きな影響力を持つビジネスを実現したいならば、最新の技術や画期的なアイデアを駆使して、今後の世界に求められる市場を創り出すことを考える必要があります。

この記事では、昭和と平成の時代に世界に影響を与えた経営者を取り上げながら、令和の新時代を生き抜く経営者に求められる条件を伝えました。

昭和と平成には、卓越したリーダーシップや合理的な経営手腕を発揮した経営者が世界に大きな影響を与える成功を果たしました。一方で令和の経営者には、それに加えて最先端技術への適応や、グローバルな視点で事業を展開するスキルが必須となります。令和の厳しい経営環境を生き抜くために、経営者が何をするべきかを今一度考えるきっかけにしてもらいたいところです。

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