主力の配管工事で大手メーカーの信頼を獲得 常駐技術者の勤怠管理システム導入で実働把握と経営効率化狙う 矢代工業(神奈川県)

目次

  1. 1961年に配管工事専業で独立 高度な技術力を要するサニタリー配管で高い実績 不純物混入や腐食を回避するノウハウが強み
  2. 大手化粧品メーカーで信頼構築 定期的な全面改修の大型プロジェクトなど設立以来の常駐請負で独自技術力の強さ発揮
  3. 残業はほぼゼロへ 大型プロジェクトは協力会社の応援を受け積極的に引き受ける
  4. 勤怠管理システムを導入し、長年の自己申告からネットで打刻へ 正確な実働時間を把握し経営に生かす 2024年からクラウド版に移行
  5. 楽しく働ける環境と顧客工場での礼儀を重視、顧客先の評価は上々
中小企業応援サイト 編集部
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矢代工業株式会社は、化粧品メーカーや鉄鋼メーカーなど大手企業の工場での特殊用途の配管工事を中心とした常駐型請負が主力。現場では客先の要望に応じたメンテナンスが含まれるため多様な勤務形態となる。従業員の正確な実働時間を把握するために勤怠管理システムを導入。2024年からクラウド版に変更した。今後は給与計算や販売管理の各システムとの連携も検討。少数精鋭で効率経営を追求していく考えだ。(TOP写真:多様な液剤が通る配管の装着作業には高度なノウハウが生かされている)

1961年に配管工事専業で独立 高度な技術力を要するサニタリー配管で高い実績 不純物混入や腐食を回避するノウハウが強み

主力の配管工事で大手メーカーの信頼を獲得 常駐技術者の勤怠管理システム導入で実働把握と経営効率化狙う 矢代工業(神奈川県)
配管工事のエキスパートとして大手企業の工場で欠かせない存在となっている

1961年に設立された矢代工業株式会社は、横浜市に本社を置く空調設備事業の「矢代工業株式会社」で経理業務をしていた先代が配管設備工事専業として独立した際に、「矢代工業」をそのまま社名とした経緯がある。

主力の配管工事に加えて付随する設備工事も手掛けながら技術力を磨き、高度な技術力が要求されるサニタリー配管を含む配管工事のエキスパートとして、大手企業の工場に欠かせない存在となっている。同社の得意分野であるサニタリー配管とは、一般的な配管より衛生面を重視する目的で装着され、製造に重要な役割を担う配管設備を指す。表面や内面が研磨処理されて洗浄しやすい構造となっており、分解しやすくゴミなどが入りにくい精緻(せいち)な組み立て技術が要求される。食品や薬品など不純物の混入や腐食を完全に回避し、製品の品質を保証しなければならない分野で不可欠な配管である。

大手化粧品メーカーで信頼構築 定期的な全面改修の大型プロジェクトなど設立以来の常駐請負で独自技術力の強さ発揮

主力の配管工事で大手メーカーの信頼を獲得 常駐技術者の勤怠管理システム導入で実働把握と経営効率化狙う 矢代工業(神奈川県)
サニタリー配管には外側も内側も変質しない高度な溶接ノウハウが求められる

設立以来同社の顧客となっている大手化粧品メーカーでは、化粧品製造のための薬剤や香料などを流し込むサニタリー配管主体の工事やメンテナンスを請け負っている。耐腐食性の高いステンレス鋼など素材はもとより、熱が加わっても酸化しない溶接技術など、随所に独自ノウハウが生かされている。

大手鉄鋼メーカーの工場では、機械装置関連や冷却水の配管を長年担当。ガラス瓶メーカーでは、ガス配管を除く工場の配管を一括で請け負っており、数年に一度の全面改修作業は大掛かりなプロジェクトになる。

残業はほぼゼロへ 大型プロジェクトは協力会社の応援を受け積極的に引き受ける

主力の配管工事で大手メーカーの信頼を獲得 常駐技術者の勤怠管理システム導入で実働把握と経営効率化狙う 矢代工業(神奈川県)
自社のベテランの経験と技術力の高さを語る岩崎社長

岩崎末喜代表取締役は2004年に就任。2024年で20年目を迎えた。現在の従業員は6人。最も若い従業員が勤続19年。さらに20年、30年、40年を超えるベテランがそろっており、経験と技術力が同社の高い評価につながっている。今は若い世代の採用に注力している。

現場責任者は、主な協力会社5社の従業員とともに、配管作業のほか「関連した作業で要望があれば積極的に引き受けるし、機械のメンテナンスも手掛ける」(岩崎社長)。全面改修などの大型プロジェクトでは、同社より規模の大きな協力会社から10人前後応援に来てもらうこともあるという。「土日出勤しても代休はしっかり取るように言ってあるし、いまは残業ゼロに近い」(岩崎社長)と話すように、就労環境の改善には追い風となっている。

勤怠管理システムを導入し、長年の自己申告からネットで打刻へ 正確な実働時間を把握し経営に生かす 2024年からクラウド版に移行

主力の配管工事で大手メーカーの信頼を獲得 常駐技術者の勤怠管理システム導入で実働把握と経営効率化狙う 矢代工業(神奈川県)
勤怠管理システムの導入で実働状況を正確に把握。経営効率化に向けシステム化の推進を目指す

固定顧客主体の安定経営ともいえるが、労務管理のシステム化や経営効率化などの課題には取り組んできた。2020年には勤怠管理ステムを導入した。

工場常駐の従業員は基本的に直行直帰のため、勤怠管理は長年自己申告だったが、超過勤務時間規制もあり、実働状況を正確に把握する必要が出てきたためだ。労務管理を担当する加藤美智代取締役は「残業の正確な時間や、逆に仕事がなくて早く帰れる時もあり、従来のやり方ではとても管理できなかった」と導入経緯を説明する。2024年にはクラウド版の勤怠管理システムに変更し、従業員が現場でパソコンに打ち込むと瞬時にクラウド上の勤怠管理システムに反映され、本社でタイムリーに状況が把握でき、管理業務はさらに軽減された。

従業員の勤怠管理が正確に把握できるようになり、現場の負荷の状況もわかるなど、労務管理全体への波及効果が出ている。従業員の勤務状況を把握し、改善することで新たに採用する人の安心感につなげていく。

同社はコンピューターウイルスやスパム、不正侵入など多様なセキュリティー対策機能を備えたUTM(統合脅威管理)システムも導入。すでに稼働している給与計算、販売管理システムと勤怠管理システムとの連携も検討中だ。

楽しく働ける環境と顧客工場での礼儀を重視、顧客先の評価は上々

経営理念について、岩崎社長は「会社を大きくするよりも、従業員が皆、楽しく働くことができる環境作りが第一だ」と従業員第一を明言する。ただ、顧客の工場で1日中働くため、あいさつや礼儀については徹底してきた。

「通常のあいさつはもちろん、歩き方ひとつでもだらしないのはだめ。工場内とはいえ、身だしなみは当たり前だが、靴の履き方にも注意している。かかとをつぶして履くのも禁止」と徹底してきただけに、顧客先での評判は上々という。

こうした従業員への評価と、高い技術力があいまって、大手企業からは工場新設に伴う配管工事・メンテンナンス業務を新たに請け負ってほしいとの要望もある。しかし、現在は人手不足のため単発の工事以外は「対応できなくて断っている」(岩崎社長)のが実情だ。岩崎社長は、新たな人材採用のための働く環境の改善に注力している。また岩崎社長は、これから技術継承の道筋をつけていこうとしている。矢代工業の今後に期待したい。

企業概要

会社名矢代工業株式会社
住所神奈川県鎌倉市笛田3-11-18
電話0467-31-8282
設立1961年1月
従業員数6人
事業内容各種配管工事(サニタリー配管含む)、関連工事、メンテナンス