CES
(画像=chara_stagram / Shutterstock.com)

古来からの技術を守り続けて繁栄する企業がある一方で、新しいことにチャレンジする企業もある。新たなチャレンジは容易ではないが、現状に悩む企業にとっては生き残るために必要なことだろう。挑戦には失敗がつきものとはいえ、繰り返し挑む体力がない企業にとっては、“次の一手”に慎重にならざるを得ない。そうした企業がチェックすべき世界的なイベントが「CES」。このイベントで世界の潮流を知り、次の布石を打つための参考にしてもらいたい

今年のCESは5Gが主役

そのイベントとは、ズバリCES(Consumer Electronics Show)。例年、年始早々に全米民生技術協会(Consumer Technology Association)がネバダ州ラスベガスにおいて開催するイベントである。「家電見本市」といえば、お聞き及びの方も少なくないだろう。かつてはその和訳通り、世界中の家電メーカーによる新製品の展示会という側面が強かったが、2016年に主催団体が従来のCEA(Consumer Electronics Association)からCTAに名称を変更したことからもわかるように、イベントの主眼は「エレクトロニクス」から「テクノロジー」へと移り変わっている。

このCESには、最先端の技術を一目みようと世界中から関係者が集まってくる。参加資格は「消費者向けテクノロジー業界の関係者」。業界関係者以外にも、インフルエンサーやフリーランサーも参加することが可能だ。2020年は1月7日から10日までの4日間にわたって開催され、述べ17万5000人超の来場者と4500社超(いずれも主催者発表)の企業が集結。各企業のブースでは、最先端の技術や製品がズラリと展示された。

2020年の同イベントで注目度ナンバーワンと言われたのが「5G(第5世代移動通信システム)」関連。中国、韓国、欧州など一部地域ではすでに運用が始まっていて、日本でもこの春に本格的にサービスが開始される予定となっている。5Gというと単にスマートフォンをはじめとしたモバイル向けの通信規格というイメージを持つ人もいるかもしれないが、実際はスマホ以外にも自動運転、、マイクロモビリティ(超小型自動車)、スマート家電やスマートシティ、遠隔医療といった数多くの注目テーマの根幹になる技術だ。

これらの新技術や新製品には、AI(人工知能)が搭載されたり、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)やブロックチェーンの技術が用いられたりしているわけだが、これらは大量のデータを超高速で送受信できる5Gの技術が必須となるからである。

目新しい技術からユニークな製品までズラリ

5Gは昨年の「CES2019」でも主要テーマの1つに挙げられていたものの、同イベントの参加者からは「5Gは空振りに終わった」との声も聞かれた。それもあって、2020年のCESでは巻き返しを狙った企業の展示が相次いだと思われる。

ほかには、折りたたみ式スマホやワイヤレスイヤフォン、スマートスピーカー、マイクロLED、環境型ロボットなどが人々の耳目を集めた。2002年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演の映画「マイノリティ・レポート」の世界がもう目前に迫っているようだ。仏企業は温度や湿度などを自動で調整できる「スマートグリーンハウス」、マウスピース型の音波振動歯ブラシなどを展示。仏企業のブースの数々には人だかりができていたという。

日本企業では、ソニーが30個以上のセンサーを搭載した自動運転の試作車を発表。トヨタは、工場跡地を活用して自動運転車を実現するためのスマートシティ建設を打ち出している。日本のスタートアップ企業が開発した「自立飛行をしながら地図を作成するドローン」は、将来的な物流への活用が期待されるとして注目を集めていた。さらに、最新のAIを搭載した卓球ロボット(オムロン)、スマートシューズ(アシックス)などユニークな展示も人気を呼んでいたようだ。

柔軟な発想、違った視点が将来の飛躍に

注目したいのは、10年前のCESとは状況が様変わりしている点。2010年のCESでは、スマートフォンやスマートブック、3Dテレビなどが展示の中心となっていた。10年後の現在ではもはやスタンダードになっている技術や、あるいは“こけて”しまった製品などが数多く見受けられる。2015年のCESでは、現在でも通用しそうなものが一部で展示されてはいたものの、スマートウォッチやハイレゾ対応部品など目新しさは全く感じないものも少なくない。

CESには、世界中から最先端の技術や開発中の製品が集まるのは確かだ。しかし、5年前の時点ですでに現在では当たり前、あるいは過ぎた時代のものと捉えられかねない展示が出ていたことを考えると、2020年の展示もここ2、3年が勝負どころと言っていいかもしれない。それだけ、テクノロジーの進歩のスピードが加速しているわけだ。

もちろん、2020年の展示物でも姿形を変え、5年後、10年後のCESに登場する可能性はあるが、より近い目先の技術という視点を持つべきだろう。今回のCESで主役だった5Gは数年後に当たり前となり、数年後のCESでは自動運転やスマートシティなどの違う分野に展開するはずだ。そして、現在より数歩先に進んだ技術や製品が出てくるに違いない。こうした新しい技術や製品を自社に取り込むには、そうした柔軟な発想や違った角度からの視点が必要になってくる。裏返せば、CESはそのような発想を持つことさえできれば、将来の飛躍のヒントをつかむことができるイベントということである。

なお、同イベントのホームページのトップには「私たちは新型コロナウイルスの動向をしっかりと監視し、2021年1月に開催される予定のCESのスケジュールプラン作成を進めています」との表記が加わっていた。来年もこれまでの同様、CESに世界中から人々が集まることを願いたい。

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