融資
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中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

事業経営において資金調達が必要になることは多い。その際に、融資の実行、利息の支払い、融資の返済等、経理上の処理をするために仕訳を切る場面が多くある。そこで、ここでは融資に関する仕訳について様々な場面を想定してまとめた。

融資を行った際の仕訳は?

ここでは融資を実行した際に切るべき仕訳について説明する。

基本の仕訳

例えば、10万円を借り入れたときの仕訳は以下の通りとなる。

(借)現金預金100,000/(貸) 借入金100,000

なお、貸方の勘定名は借入金としたが、実際は借入期間に応じて、1年以内に返済する場合は短期借入金、1年を超えて返済する場合は長期借入金という勘定名を使う。

手数料や印紙代がある場合の仕訳

前項では何も差し引かれることなく借入金が振り込まれるケースを挙げたが、実際は振込手数料や契約書に用いた印紙代を控除されることが多い。そこで先ほどとは違い、10万円を借り入れたが、印紙代として200円、振込手数料として440円を差し引いた金額が振り込まれた場合の仕訳を示す。

(借) 現金預金

(借)現金預金
租税公課
支払手数料
99,360
200
440
/(貸) 借入金100,000

印紙代は租税公課として、振込手数料は支払手数料としてそれぞれ費用計上し、残額である9万9,360円が実際に手にする金銭として、現金預金に計上される。

月々の返済や利息に関する仕訳

次に、現金の返済を行う際の処理方法について、返済方法別に説明する。

毎月の利息の支払い

通常、借入金は毎月利息と一緒に元本を返済する。例えば、借入金のうち、1万円を利息500円とともに返済した場合の利息は以下の通りとなる。

(借)借入金
支払利息
10,000
500
/(貸) 現金預金10,500

一括返済に関する仕訳

場合によっては今ある元本すべてを期日前に一括して返済したり、そもそも元本を一括して返済したりする場合もある。

そのようなことが発生するケースとしては、以下のような場合が考えられる。
・元本は一括して返済する契約であった
・借り換えを実行して、従来の借入金を新しい借入金に取り替える
・資金繰りが良くなったので繰り上げ返済を実行する
ここではその仕訳について例を示す。

基本の仕訳

基本的に、融資について一括返済実行をするときには残った元本と、それまでに発生した利息を一緒に支払ってかかる融資を終了させる。ここでは、残った元本9万円とそれまでの利息1,000円を返済する場合について仕訳の例を示す。

(借)借入金
支払利息
90,000
1,000
/(貸) 現金預金91,000

残った借入金を消してそれまでの支払利息を計上し、現金預金をその分消滅させる取引を計上することとなる。

借り換えをするときの仕訳

一括返済する原因の一つとして、借り換えをするケースがある。その場合は、古い借入金を消してその利息を支払い、新しい借入金を認識して差額の現金を受け取るか支払うこととなる。

例えば、現在の元本9万円の借入金を精算し、新しい契約のもとで10万円借り入れるものとする。また、それまでの利息1,000円も支払うものとする。なお、印紙代などの負担はないものとする。この場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)借入金
支払利息
現金預金
90,000
1,000
9,000
/(貸) 借入金100,000

この仕訳は2つに分けられる。まず、従来の借入金を返済して、これまでの利息を支払う仕訳である、

(借)借入金
支払利息
90,000
1,000
/(貸) 現金預金91,000

と、新たな借り入れを実行するための仕訳である、

(借)現金預金100,000/(貸) 借入金100,000

をあわせたものである。

決算のとき融資の仕訳はどうする?

決算時には、期中の仕訳では行わなかった仕訳を切ることとなる。例えば支払っていないものの、期中に発生しているものとみなされる利息を計上したり、借入金の1年以内のものについて分離を行ったりすることがある。

未払いの利息があるとき

まだ支払っていないものの、当期に発生しているものとみなせる利息について、計上することがある。

・期末時点の仕訳
例えば、期末時点で1,000円のまだ期日の関係で支払っていない利息があるとした場合、このような仕訳を切る。

(借)支払利息1,000/(貸) 未払費用1,000

・来期の仕訳
そして、翌期になった場合、未払費用を解消することになるが、2通り方法がある。まずは、実際に支払った場合に未払費用勘定を消す方法がある。例えば、前期未払分1,000、当期分1,000を支払うとする場合、

(借)未払費用
支払利息
1,000
1,000
/(貸) 現金預金2,000

実務上ではこちらを使うケースが多い。

また実例は少ないが、期初に逆の仕訳を切ることもある。先ほどと同じケースではまず、期初に

(借)未払費用1,000/(貸) 支払利息1,000

の仕訳を切り、そして当期最初の支払い時に

(借)支払利息2,000/(貸) 現金預金2,000

この場合、支払利息が一時的にマイナスとなる。しかし実際に支払いがあったとき、マイナス分は取り消されて、支払利息勘定は0またはプラスの数になる。

長期借入金を借り入れているとき

決算書上では、長期借入金は期末から1年以内に返済するか否かによって「1年以内返済予定長期借入金(短期借入金とする場合もある)」と「長期借入金」の2つの勘定に分けなければならない。通常、期末の時点では長期借入金しか残っていないが、これをこの2つの勘定に振り分ける作業を行う。

・期末時点の仕訳
例えば、長期借入金が10万円残っているとして、このうち、1年以内に返済する借入金が3万円あるとする。この場合、以下のような仕訳を切る。

(借)長期借入金30,000/(貸) 1年以内返済予定長期借入金30,000

こうすることによって、1年以内返済する3万円と1年を超えてから返済する7万円とに分けて決算書に表示することとなる。

・翌期の仕訳
翌期の処理の方法は2通りある。

まず、期末の仕訳をそのままにして、返済をするたびに1年以内返済予定長期借入金を取り崩す方法がある。実態をそのまま反映させ、期末までに返済すべき借入金の額を見るのにはいい方法である。すなわち、毎月5,000円ずつ返済するとして、月次の返済時に以下の仕訳を切る。

(借)1年以内返済予定長期借入金5,000/(貸) 現金預金5,000

(利息の支払いはここでは省略する)

この場合、期末時点では1年以内返済予定長期借入金勘定は0円となる。

次に、期初に1年以内返済予定長期借入金勘定を長期借入金に戻す仕訳を切ることもある。決算表示のためだけに1年以内返済予定長期借入金勘定を表示すればよいと言う考え方のもとで行う。この場合、1年以上の借入金の全額が試算表の1箇所に表示されるので借入金の現況がわかりやすい方法である。

(借)1年以内返済予定長期借入金30,000/(貸) 長期借入金30,000

この場合長期借入金は10万円となり、返済時はこれを取り崩すこととなる。そのときの仕訳は以下の通りである。

(借)長期借入金5,000/(貸) 現金預金5,000

融資の支払保証料の処理は?

事業用資金を借り入れる際に、信用保証協会や保証会社に保証していただく代わりに対価を支払う。この対価が信用保証料である。

信用保証料の仕訳

・支払い時の処理
信用保証料60万円を支払うとする。この場合の仕訳は以下の通りとなる

(借)支払手数料600,000/(貸) 現金預金600,000

・決算時の処理
当期支払った分の内、
当期に対応する部分     5万円
翌期に対応する部分    10万円
翌翌期以降に対応する部分 45万円
とした場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)前払費用
長期前払費用
100,000
450,000
/(貸) 支払手数料550,000

・翌期の処理
前払費用としたものをその期の費用とする仕訳を切る。

(借)支払手数料100,000/(貸) 前払費用100,000

また、決算時において、翌期に費用化される部分(10万円とする)について前払費用として振り替える仕訳を切る。

(借)前払費用100,000/(貸) 長期前払費用100,000

翌々期以降も前払費用をその期の費用として計上する。長期前払費用のうち翌期に費用化される部分を前払費用に振り替える仕訳を切るのを繰り返す。

ファクタリングをしたときの仕訳

中小企業の資金調達に「ファクタリング」という方法を用いることがある。その場合はどのような処理方法となるのか、解説する。

ファクタリングとは?

ファクタリングとは売掛債権を債権買取会社等に買い取ってもらい資金を調達する手段である。

仕訳の内容

・売掛金を売却したとき
10万円の売掛金を買い取ってもらい、手数料1,000円を差し引いた9万9,000円が振り込まれた場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)現金預金
債権売却損
99,000
1,000
/(貸) 売掛金100,000

債権を買い取ってもらったことを示す債権売却損勘定を用いることとなる。

・売掛金が決済されたとき
売掛金が決済されたときに切る仕訳はない。

融資を受けるとき手形割引を利用したときの仕訳

手形割引とは、受け取った支払手形を金融機関や手形割引業者等に売却して資金化することである。資金化の際には手形決済日までの利息相当額として、割引料を差し引かれた上で金銭を受け取ることとなる。

なお、ここでは資金化して手形が決済されるまでの流れについて説明し、手形の決済ができなかった場合など通常時ではない場合の仕訳については割愛する。

原則的な仕訳

例えば、5万円の手形を資金化して割引料が2,500円を差し引かれて、残りが現金として受け取った場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)現金預金
手形売却損
47,500
2,500
/(貸) 受取手形50,000

また、当該手形が決済された場合の仕訳は切らない。

評価勘定を使う方法

原則的な仕訳の場合、残高試算表に手形の割引高が記載されないため、それがいくらかわからない。また、当該手形が不渡りになった場合には取り戻さなければならないため、完全に消滅したことにはならない。残高試算表上には、そのための勘定を使ってどれだけの手形が割引に出されて決済されていないかがわかるようにする工夫がなされている。

その方法は2つあるが、まず、評価勘定である割引手形勘定を使う方法である。先ほどと同じ例を用いて仕訳の切り方を説明する。

まず、手形を資金化したときの仕訳は以下のとおりである。

(借)現金預金
手形売却損
47,500
2,500
/(貸) 割引手形50,000

原則的な場合と貸方の勘定が異なっている。この場合、残高試算表には借方には受取手形が、貸方には割引手形勘定が登場することとなる。

資金化した手形が決済されたときの仕訳は

(借)割引手形50,000/(貸) 受取手形50,000

となる。これにより、当該手形に関する受取手形勘定も割引手形勘定も消えることとなる。

対照勘定を使う場合

残高試算表に割引手形勘定の金額がわかるようにする方法にはもう一つ、対照勘定(手形割引義務、手形割引義務見返)を用いる方法がある。この場合の仕訳について説明する。

まず、手形を資金化したときの仕訳は以下のとおりである。

(借)現金預金
手形売却損
手形割引義務見返
47,500
2,500
50,000
/(貸) 受取手形

手形割引義務
50,000

50,000

受取手形勘定を消す代わりに対照勘定となる手形割引義務、手形割引義務見返が出てくることとなる。資金化された手形が決済されたときの仕訳は以下の通りとなる。

(借)手形割引義務50,000/(貸) 手形割引義務見返50,000

このときに資金化された手形について消滅を認識する。

融資を受けるとき当座借越を使う場合の仕訳

当座貸越とは、当座預金等で残高がマイナスになっても引き出しを認めることである。通常、銀行などに対して定期預金などの担保を提供することになる。

期中での仕訳(2勘定制のとき)

当座貸越について、処理の方法としては2勘定制と1勘定制がある。2勘定制とは当座預金の金額がプラスのときは当座預金勘定を用い、マイナスのときは当座貸越勘定を用いる方法である。まず、当座預金において、10万円現金で引き出して残高が△8万円になった場合、以下のように仕訳を切る。

(借)現金100,000/(貸) 当座預金
当座貸越
20,000
80,000

貸越を行っている最中に口座から利息1,000円を引き落とされた場合、以下の仕訳を切る。

(借)支払利息1,000/(貸) 当座貸越1,000

最後に残高のマイナスを消すために81,000円現金での支払いをした場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)当座貸越81,000/(貸) 現金81,000

決算時の仕訳(2勘定制のとき)

残高がプラスのときとマイナスのときとで対応が異なる。

・残高がプラスのとき
仕訳は特に切らない

・残高がマイナスのとき
残高がマイナス8万1,000円であるとした場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)当座貸越81,000/(貸) 短期借入金81,000

来期頭では逆の仕訳を切ることになる。

期中での仕訳(1勘定制のとき)

1勘定制は当座勘定一つで、当座預金にかかる仕訳を切る方法である。先ほどと同じ例を用いて説明する。まず、当座預金において、10万円現金で引き出して残高が△8万円になった場合、以下のように仕訳を切る。

(借)現金100,000/(貸) 当座100,000

貸越を行っている最中に口座から利息1,000円を引き落とされた場合、以下の仕訳を切る。

(借)支払利息1,000/(貸) 当座1,000

最後に残高のマイナスを消すために81,000円現金での支払いをした場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)当座81,000/(貸) 現金81,000

こちらは当座預金の内容を一つの勘定で表すため、仕訳がシンプルになる長所がある。ただし、残高がマイナスになるなど通常の簿記ではありえないことも出てくる。

決算時の仕訳(1勘定制のとき)

2勘定制のときと同様に残高がプラスのときとマイナスのときとで対応が異なる。

・残高がプラスのとき
残高が81,000円である場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)当座預金81,000/(貸) 当座81,000

来期のはじめにはこの逆の仕訳を切ることとなる。

・残高がマイナスのとき
残高がマイナス81,000円であるとした場合の仕訳は以下の通りとなる。

(借)当座81,000/(貸) 短期借入金81,000

来期頭では逆の仕訳を切ることになる。

融資を受けるとき担保を提供した場合の仕訳

金融機関から融資を受ける際に、担保を要求されることがある。この場合、何か処理が必要なのだろうか。結果から言えば、担保を提供した場合は基本的には仕訳を切らない。これは担保に提供したからと言って所有者が変わるわけではないからである。

個人の場合

個人事業主が借り入れをした場合、中には事業用と家事用とで一緒に借り入れる場合もある。
そのような場合、決算書上に計上すべきものは事業用のもののみであるため、使用割合などで事業用と家事用に按分する。

・借入時
10万円借り入れたとするこの内5万円が事業用である。

(借)現金100,000/(貸) 借入金100,000

・利息支払い時
1000円利息を支払ったものとする

(借)支払利息
事業主貸
500
500
/(貸) 現金預金1,000

事業用の借入金見合いの5万円分のみを支払利息として計上する。

仕訳を理解し、経営判断に活かそう

会社経営において資金面での問題が発生した場合、解決する最も一般的な方法が金融機関からの融資を受けることである。融資を受けたとき、返済するときなど状況や返済方法に合わせた処理方法が異なり、難しく感じるかもしれないが、仕訳を知っておくと自社の経営判断に活かせるだろう。

文・中川崇(税理士)