「造園」「土木」の二刀流に強み 従業員のほとんどが造園施工管理技士、土木施工管理技士の国家資格を持つ 人材確保に各種媒体を活用し情報発信を積極化 萩原造園土木(群馬県)

目次

  1. 三代目が土木工事を強化し事業は様変わり、名実ともに「造園土木」に
  2. 「造園」「土木」事業を持つことで、繁忙期が重ならず年間を通じてコンスタントに仕事が入る二刀流のメリットで安定的な事業運営を実現
  3. 会社の魅力を発信し、人材確保に向け採用ページをトップに据えてホームページをリニューアル
  4. 健康経営優良法人、群馬県いきいきGカンパニー、環境GS認定制度等の認定を取得し、働く環境を整備した
  5. 第三の柱として外構工事を視野に 外構工事専用3D-CADを導入
  6. 基幹業務は手計算のアナログからデジタル化に大転換 業務効率化は驚くほど進んだ
中小企業応援サイト 編集部
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萩原造園土木株式会社は、社名が示す通り造園工事と土木工事の二つの事業を群馬県中心に隣県も含め広い範囲で展開している。両事業とも自治体向け、民間向けを手掛け、従業員のほとんどは造園施工管理技士、土木施工管理技士の両方の国家資格を持つ。強みは何といってもこの造園、土木の「二刀流」にあり、経営的には両事業の繁忙期が重ならず、コンスタントに仕事があることが安定した事業運営につながっている。一方、人手不足は深刻で、採用への投資は惜しまず、自社ホームページはもちろん各媒体を通じて情報発信に努める。(TOP写真:植栽工事に取り組む萩原造園土木の従業員。同社ホームページから)

三代目が土木工事を強化し事業は様変わり、名実ともに「造園土木」に

「造園」「土木」の二刀流に強み 従業員のほとんどが造園施工管理技士、土木施工管理技士の国家資格を持つ 人材確保に各種媒体を活用し情報発信を積極化 萩原造園土木(群馬県)
「現在は完全に造園と土木の二刀流で事業を進めている」と話す萩原信弥代表取締役

萩原造園土木の前身は1946年にさかのぼる。現在の萩原信弥代表取締役の祖父が個人事業を立ち上げ、養蚕や植木屋を営んできた。その後、萩原社長の父が造園工事に加えて土木工事にも手を広げ、1976年12月に萩原造園土木株式会社を設立した。しかし、「造園土木」を名乗ったものの、「かつては造園工事に特化していて、土木工事は弱かったのが実態だった」と萩原社長は説明する。

ただ、現状は大きく様変わりしている。売上ベースで造園、土木はほぼ半々で、土木工事は一件当たりの金額が大きいことを割り引いても、土木工事の事業が確実に拡大してきたことを裏付ける。そのきっかけを作ったのは三代目として2019年9月に就任した萩原社長の存在だった。

萩原社長は群馬県藤岡市にある建設会社に入社し、土木工事の経験を積んできた。萩原社長は「当初、10年は勤めるつもりだったものの、父が病気がちだったことから5年に短縮して当社に戻った。建設会社での経験を生かし、しばらくは土木工事の面倒を見てきた」とこれまでの経緯を話す。その結果、「現状は完全に造園と土木の二刀流みたいな形で事業を進めている」と言う。

造園工事は建設業許可制度で定められた専門工事の一つで、萩原造園土木は玉村町役場や隣接する伊勢崎市が発注する公園の植栽や除草、剪定(せんてい)などいわゆる緑地管理や街路樹関係を請け負う。群馬県からも緑地管理を要請されることもある。自治体向けと民間向けはほぼ半々で、民間は個人向けから企業向けまで様々な造園工事を手掛ける。一方、土木工事はほとんどが公共工事で、下水道工事やアスファルト舗装のほか排水構造物、U字溝敷設などで、群馬県のほか周辺の市町村の工事を請け負っている。

「造園」「土木」事業を持つことで、繁忙期が重ならず年間を通じてコンスタントに仕事が入る二刀流のメリットで安定的な事業運営を実現

「造園」「土木」の二刀流に強み 従業員のほとんどが造園施工管理技士、土木施工管理技士の国家資格を持つ 人材確保に各種媒体を活用し情報発信を積極化 萩原造園土木(群馬県)
群馬県玉村町にある萩原造園土木の本社事務所

萩原造園土木にとって事業の強みは、造園も土木も完全にこなせる「二刀流」にあることは言うまでもない。そこは萩原社長が自らの経験を踏まえて土木に力を入れてきた賜物(たまもの)であり、萩原社長は「おそらく群馬県内で造園工事をこなし、土木工事ができる業者はほとんどいないと思う」と自信をのぞかせる。

例えば、園庭といった大きな構造物を作り、橋を架けたりする技術は一般的な造園業者では対応できない。ただ、土木技術を持ち合わせていれば可能で、萩原社長はこの点を「造園、土木の技術を備えて、広く浅く、何でもこなすことができるのが当社の事業イメージであって、そこが当社の売りだ」と語る。

一方、二刀流は年間を通じた萩原造園土木の仕事の平準化にも大きく貢献している。一般的に土木工事、特に公共工事は年度末の冬場に集中し、春から8月ぐらいまでは閑散期に入る。造園工事は逆に夏場が繁忙期で、萩原社長によれば「造園の仕事は夏場に無限に入ってくる」。このため、造園と土木をこなす萩原造園土木には「時期を問わずにコンスタントに仕事があり、経営的には非常にありがたい」環境が醸成されている。萩原社長はこの二刀流の強みを「今後もさらに強みにしていきたい」とし、従業員にも「強みをさらに強く」と働きかけている。

会社の魅力を発信し、人材確保に向け採用ページをトップに据えてホームページをリニューアル

「造園」「土木」の二刀流に強み 従業員のほとんどが造園施工管理技士、土木施工管理技士の国家資格を持つ 人材確保に各種媒体を活用し情報発信を積極化 萩原造園土木(群馬県)
求職者向けに、ホームページのTOPにメッセージ

ただ、課題は人手不足にある。萩原社長は「造園業界は長く人手不足が続いており、採用関係に投資してきているものの、解消するのはなかなか難しい」と嘆く。実際、2024年7月には自社ホームページを更新し、リクルートページをトップに置いたほどだ。このほかSNSやインスタグラム、さらに求人媒体を使って、「当社は実際にこうした仕事をやっているといった具体的な業務内容をできるだけクリアにして、発信することに努めている」。

萩原造園土木が自社ホームページを開設したのは2018年で、政府のIT導入補助金を活用して導入した。さらに2022年には「健康経営」の考え方に基づき、従業員の健康増進を図り元気に働ける事業所を目指す健康事業所宣言を社内外に発信するため、ホームページをリニューアルし、働きやすい環境づくりや従業員の待遇改善に力を入れている。リクルートに特化したページを設けた今回の更新を含め、各種媒体により情報発信を進めている理由について、萩原社長は「これから当社に入ってくる人に向けて、会社としての魅力を伝えることが重要」と判断した。

健康経営優良法人、群馬県いきいきGカンパニー、環境GS認定制度等の認定を取得し、働く環境を整備した

「造園」「土木」の二刀流に強み 従業員のほとんどが造園施工管理技士、土木施工管理技士の国家資格を持つ 人材確保に各種媒体を活用し情報発信を積極化 萩原造園土木(群馬県)
取得した「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」の認定証

萩原造園土木は2023年と2024年の2年連続で「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」を取得している。このほか、育児・介護休業制度の利用促進や職場における女性の活躍推進、従業員の家庭教育などワーク・ライフ・バランスの推進を図り、働きやすい職場環境づくりを推進する「群馬県いきいきGカンパニー」の認証を取得し、環境保全活動でも、「環境GS(ぐんまスタンダード)認定制度」で群馬県の認定を受けるなど、率先して企業魅力の向上を図ってきた。

こうした取り組みもあって、ホームページなどを見て応募があった。実際にこれまでに5人の採用につながっており、2024年8月末には新入社員1人を迎える。萩原社長によると「造園業界はある程度仕事ができるようになると独り立ちしたがる者も多い。ただ、独り立ちしたいとなったら、そこは応援してあげなくてはいけない」と業界事情を説明する。

第三の柱として外構工事を視野に 外構工事専用3D-CADを導入

「造園」「土木」の二刀流に強み 従業員のほとんどが造園施工管理技士、土木施工管理技士の国家資格を持つ 人材確保に各種媒体を活用し情報発信を積極化 萩原造園土木(群馬県)
導入した外構・エクステリア設計に特化した3D-CADソフトを使った立体画像

一方、萩原造園土木は造園、土木に次ぐ新規事業として建物の周囲の環境を整備する外構工事の事業化を検討している。実際、外構工事の資格を持つ女性技術者がおり、「そこをうまく機能させていくことで新しい仕事をコンスタントに増やしていければと思っている」(萩原社長)。それは「時代も含めてさまざまなものが変化していくなかで、造園、土木と同じくらいの売上が取れる3本目の槍が欲しい」(同)との理由からだ。ただ、「まずはしっかりとした土台を築いてからスタートすべきで、今後の課題に位置付けている」(同)。

ただ、外構工事への備えは怠っていない。建設・施工に対応した汎用CADに加えて、2021年には外構・エクステリア設計に特化した3D-CADソフトを導入した。それまでは手書きの平面図で対応していたのを「造園業を手掛けている以上、立体的に表示する最低限のツールは整えていないといけない」(同)と判断、汎用CADソフトを取り入れ、さらにこの先を見据えて3D-CADの導入に踏み切った。

基幹業務は手計算のアナログからデジタル化に大転換 業務効率化は驚くほど進んだ

基幹業務については数年前までは萩原社長の母が手計算で経理関係を担当していたように、経理ソフトも入れず完全にアナログな手法で対応していた。さすがにこれはあまりに非効率であり、萩原社長は「今はデジタル化によって新しく土台を作っている状態に変えつつある」と言う。

基幹業務のデジタル化に当たって導入したのは給与計算のクラウドサービスで、勤怠管理ソフト付きタイムレコーダーと連携することで給与計算と労務管理の効率化を図った。また、クラウド型の建設業向け原価管理システムや、電子帳簿保存法に対応して証憑電子保存サービスも導入し、経理関係の効率化にも取り組んでいる。事務業務はここ1年でデジタル化を図り、萩原社長も「業務効率化は半端でないくらい進んだ」と語る。

萩原造園土木が「健康経営優良法人」など様々な認定を取得しているのは、従業員を大事にし、働きやすい職場環境を作り、従業員の働き方に対する意識の向上を図ることによって企業としての魅力を高めることにある。それはひとえに事業を支える人材の確保、ひいては採用活動に精力的に取り組むゆえんでもある。

企業概要

会社名萩原造園土木株式会社
住所群馬県佐波郡玉村町樋越460-2
HPhttps://hagiwarazouen.jp/
電話0270-65-2757
設立1976年12月
従業員数10人
事業内容総合造園土木事業