矢野経済研究所
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2019年度の国内非住宅木造市場を前年度比1.4%増の6,540億円と予測

~非住宅分野の木造構造建築物の工事費予定額は2018年度に木促法施行後初めての縮小、2019年度予測では増加に転じる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の非住宅木造市場を調査し、市場規模、セグメント別動向、将来展望を明らかにした。

図1.非住宅木造市場規模の推移・予測(面積ベース)

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図2.非住宅木造市場規模の推移・予測(工事費予定額ベース)

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1.市場概況

2018年度の国内非住宅木造市場規模(新築+増改築)は、面積ベースでは415万8,144㎡(前年度比92.2%)、工事費予定額ベースでは6,451億円(同89.0%)となった。非住宅分野の木造構造建築物は、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(木促法)が施行された2010年度以降、ほぼ右肩上がりに推移してきたが、2018年度は面積・金額ベース共に大幅な縮小という結果となった。

面積ベースで内訳をみると、これまで市場を牽引していた民間分野の木造構造建築物の需要減少に加えて、公共分野(官需)着工面積も木促法施行以降初めて30万㎡を割り、市場全体の需要が縮小した。要因として、市場の過半数を占めている小規模建築物(300㎡未満)の着工面積減少が挙げられるとともに、シェアは低いものの大規模建築物(3,000㎡以上)の着工面積も減少した。
一方、2018年度は工事費予定額ベースでも面積ベースと連動するかたちで縮小したが、これまで職人不足で高騰していた労務費が大きく下落したことで、面積ベースを3ポイント上回る縮小となった。

2.注目トピック

部材供給事業者の市場参入が相次ぎ、建設事業者は中高層の”木質”建築物に注力

非住宅分野の木造建築構造物に取り組む事業者は、大きく“部材供給事業者” と “建設事業者” に分けられる。
部材供給事業者は、集成材メーカーや工法メーカー、建設資材(プレカット)メーカー、建材メーカーなどが該当し、多くは木造のコストメリットを最も発揮できる1,000㎡未満の小規模建築物を主戦場として、基本的に自社製品(部材)を適用した “木造” 構造建築物を推進する事業者である。また、元請である建設事業者と連携し、部材を供給して木造構造建築物の建設を行う役割も担う。
一方、建設会社やハウスメーカーなどの建設事業者は、基本的に元請となり非住宅分野の木造構造建築物を建設している。また、都心部で中高層“木質”建築物を施工するため、大手ゼネコンはそれを実現する技術として耐火構造部材の開発を行っている。建設事業者は、自社製品の適用を進める部材供給事業者と違い、木造だけにこだわらず適材適所に木材を適用した、木造・木質建築物の実現を目指している。

3.将来展望

2019年の消費増税前の駆け込み需要とその反動減は軽微にとどまる見込みで、2019年度の国内非住宅木造市場(新築+増改築)は面積ベースで421万㎡(前年度比101.2%)、工事費予定額ベースで6,540億円(同101.4%)と予測する。

非住宅分野の木造構造建築物は民間需要の構成比率が高く、民間の動向が市場全体へ大きく影響をあたえる。民間分野では、これまで需要を押し上げてきた地方での乳幼児・児童向け施設(こども園、幼稚園、保育園)の需要が一巡した地域もみられ、陰りがみえ始めている。
一方で、老人福祉施設における木造構造建築物の需要は堅調に推移している。老人福祉施設でも、サービス付き高齢者向け住宅や特別養護老人ホーム等の中大規模施設は需要がやや停滞しており、老人ホームなど小規模施設の需要が高まっている。その他、バブル時期前に建てられたオフィスビルが、今後建て替え時期に入るとみられることから、こうした中高層建築物の木造化が期待される。
市場は横這いから微増傾向で推移し、2023年度の非住宅木造市場規模を面積ベースで421万㎡(2018年度対比101.2%)、金額ベースで6,540億円(同101.4%)と予測する。