相続サポートセンター
(画像=相続サポートセンター)

「自分が亡くなったら、財産を後の社会の発展のために役立ててほしい」とか「今まで自分が応援してきた組織に寄付したい」というケースがあります。

また、相続人達で話し合って寄付しようというアイディアが出ることもあるでしょう。

今回は、遺産を寄付して相続税が非課税になる仕組みについて解説します。

遺産を寄付すると相続税が安くなる

まず、遺産を寄付すると相続税の非課税の特例を使うことができます。

相続人が相続した財産を特定の団体に寄付した場合、寄付した金額が非課税になります。

具体的な計算式としては、相続税の減額分は寄付額に相続税率をかけると求めることができます。

例えば、2,000万円寄付したら、相続税の減額分は寄付額2,000万円×相続税率です。

また、遺産を寄付することで相続税だけではなく所得税や住民税も軽減されます。

所得税の減額分は、寄付額から2,000円を引いて、所得税率と1.021を掛けたものです。

総所得額の40%を超える寄付をしても、総所得額の40%までしか寄付金控除されません。

たくさん寄付すれば、制限なく所得税が安くなるというわけではないので注意しましょう。

住民税は、基礎控除か特別控除を利用することが可能です。

基礎控除による減額分=(寄付額-2,000円)× 10%もしくは特例控除による減額分=(寄付額-2,000円)×(90%-所得税率 × 1.021)となります。

ただし、基礎控除については総所得額の30%、特別控除については総所得の20%までしか適用できません。

誰に寄付すれば安くなるのか

誰でもいいというわけではない

寄付をしたい相手はいろいろあると思われますが、実際のところ税額控除の対象になる寄付先は限定されています。

寄付の相手は誰でもいいというわけではありません。

主に、公益的な目的のために活動している団体で、なおかつ認定を得た団体になります。

認定NPO法人、特定公益増進法人、国・地方自治体などが相続税控除の対象です。

認定NPO法人

NPO法人の中で、行政庁の認定基準を満たし、認定されたNPO法人です。

さまざまな制約がありますが、その分税制上の優遇措置を受けることができる団体です。

特定公益増進法人

特定公益増進法人とは、政令で指定された法人で、日本赤十字社、ユニセフ、学校法人などがあります。

国や地方公共団体(ふるさと納税など)

いちばん身近な法人としては、国や地方公共団体でしょう。

いわゆるふるさと納税を活用することもできます。

相続税の非課税と、ふるさと納税による控除を両方適用することは可能ですが、相続人の意思で寄付してください。

つまり、遺言でふるさと納税を指定するのではなく、遺産分割協議を経たのちに、納税するという形です。

注意点

認定NPO法人と、特定公益増進法人については、2年内に組織・団体が消滅する場合や、公共目的以外に遺産が使われる場合は、特定の相続人が寄付先から何か恩恵を受けている場合については、相続税の非課税特例を適用できません。

組織・団体が2年以内に消滅するかどうかについては、問い合わせをしてみないとわからないことでしょう。

必ず、寄付の方法や、寄付先が認定された団体なのかどうかなどを問い合わせてから寄付をしてください。

遺産の寄付で控除を受けるための4つの要件

申告期限を守る

遺産の寄付で各種税額控除を受けたい場合は、必ず申告期限を守りましょう。

つまり、申告期限までに遺産分割協議がまとまっていないなどのトラブルがあると、申告期限を守れなくなり、特例を適用することができなくなります。

非課税とはなりませんのでご注意ください。

遺産はそのまま寄付

次に、遺産はそのまま寄付しましょう。

例えば、土地建物であったら、それを売却してお金に変えたあとに寄付するのではなく、土地建物そのままの状態で寄付してください。

お金に変えた後の寄付だと、特例を適用できません。

この場合も非課税とはなりません。

寄付先として認められた組織に寄付

寄付先はどこでもいいというわけではありません。

寄付先として認められた団体に寄付しましょう。

所得税・住民税の控除のためには相続人が寄付

相続税だけではなく、所得税や住民税の減額まで視野に入れるのであれば、相続人が相続財産から寄付してください。

相続される人(被相続人)が、遺贈や死因贈与などによって、直接寄付をすると、所得税・住民税の控除ができなくなります(相続税は要件を満たせば控除できます)。

計算例

相続財産の一部の40万円を地方公共団体に寄付した場合

相続税の減額:40万円×30%=12万円
所得税の減額:(40万円-2,000円)×40%×1.021=16万2,543円
住民税基本控除額:(40万円-2,000円)×10%=3万9,800円
住民税特例控除額:(40万円-2,000円)×(90%-40%×1.021)=19万5,656円

これだけの金額が安くなります。

また、相続税申告時には、第14表に明細を記入します。

特例の番号に丸をしたり、寄付をした内容などを表に記入したりします。

計算さえ間違えなければ難しい書式ではありません。

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引用:国税庁ホームページ「純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額・出資持分の定めのない法人などに遺贈した財産・特定の公益法人などに寄附した相続財産・特定公益信託のために支出した相続財産の明細書」

まとめ

今回は、寄付金を使って相続税を減額する方法についてご紹介しました。

生前に応援していた団体や、組織がある場合にはぜひ活用してみてください。

社会の役に立てて、税額の負担も減るという、二重にお得な制度です。
(提供:相続サポートセンター