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生命保険が相続対策になると聞いたことがある方は多いでしょう。

しかし、実際のところなぜ相続対策になるのかという点についてはよくわからない人が多いのではないでしょうか。

今回は、死亡保険金、死亡退職金の制度の概要と、相続対策になる仕組みについてご説明します。

生命保険金は相続財産に入るのか?

まず、生命保険金の死亡保険金は相続財産の一部に入ります。

実際のところは、死亡保険金は被相続人(亡くなった人)の財産ではありませんが、本人が生命保険料を負担している場合、被相続人が亡くなると手に入る財産であるということから、実質的には被相続人の財産に近いと考えられています。

そこで、死亡保険金は相続財産に入るということになっています。

いわゆる「みなし相続財産」と呼ばれている制度です。

死亡保険金・退職金の非課税枠とは

法定相続人とは

法定相続人とは、法律で決まっている相続人の範囲のことです。

一例として、夫婦の片方がいればその配偶者、子供がいれば子供になります。

もし、夫婦も子供もいなかった場合は、親や兄弟姉妹に相続権が発生します。

死亡保険金の非課税枠

死亡保険金は、ある一定の金額までは相続税を課税しないという仕組みがあります。

法定相続人の人数に、500万円をかけた金額までは非課税になります。

具体的には、例えば法定相続人が3人いた場合は、500万円×3=1,500万円まで非課税になります。

法定相続人が増えれば増えるほど、非課税枠も大きくなります。

死亡保険金を活用すれば、現金で財産を残すよりもお得に相続をすることができます。

死亡退職金の非課税枠

死亡退職金も、生命保険金と同様にみなし相続財産として扱われていますが、こちらも非課税枠が設けられています。

死亡退職金の非課税枠は、500万円×法定相続人の数です。

弔慰金について

遺族に支払われる弔慰金については、被相続人の死亡した原因が業務上のものなのか、そうではないのかによって非課税枠の金額が異なります。

被相続人の死亡が業務上のものである場合は、被相続人の死亡時の月額普通給与の額×36ヵ月分が非課税となります。

業務上のものではない場合は、被相続人の死亡時の月額普通給与の額×6ヵ月分が非課税となります。

計算例

一例として、8,000万円を現金で残す場合と、8,000万円を生命保険、死亡退職金で残す場合について比較してみましょう。

法定相続人は、妻と3人の子供の4人とします。

死亡保険金は、5,000万円とします。

まず、死亡保険金の非課税枠は、500万円×4=2,000万円です。

5,000-2,000=3,000万円が実際には相続税課税の対象となります。

保険金を複数人でもらっている場合は、非課税枠を按分します。

一方、死亡退職金は、3,000万円出たとします。

死亡退職金の非課税枠も500万円×4=2,000万円ですので、実際に相続税課税の対象となるのは3,000万円-2,000万円=1,000万円になります。

現金で8,000万円を残そうとすると、全額が相続税課税の対象となってしまいますが、生命保険金と死亡退職金を活用すれば、例に挙げたケースだと4,000万円が相続税の課税対象になります。

手元に現金が残るという結果としては同じですが、課税される対象金額が大幅に異なります。

このように、生命保険や死亡退職金は相続対策として活用できるということです。

申告書9表(生命保険金などの明細書)の書き方

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引用:国税庁ホームページ 生命保険などの明細書

生命保険金や死亡退職金をもらった場合の相続税申告の様式について説明します。

まず、1番では、相続や遺贈によって取得した保険金などの金額を書きます。

保険会社の所在地、名称、受取年月日、受取金額、受取人の氏名を記入してください。

受取人が相続人以外であった場合、相続税の非課税枠は適用できません。

相続人以外が受取った場合は、第11表に受取金額を転記します。

次に、2番では課税される金額の計算をします。

法定相続人の人数を書き、非課税枠の計算をして下さい。

さらに、各相続人が受け取った保険金の合計金額と、各相続人の非課税枠の金額を記入します。

保険契約の数が多い場合は、申告書が2枚以上になっても構いませんし、エクセルなどに同じ事項を書いて表にしたものを添付しても構いません。

2枚に渡ったり、別紙をつけたりする場合は、別紙参照などと記載して、本紙のほうに合計金額を記入します。

死亡保険金・退職金のメリット

節税になる

死亡保険金、死亡退職金を活用することのメリットは、何といっても節税になるということでしょう。

先にご紹介したとおり、現金で財産を残すよりも大幅に課税される金額を減らすことができます。

現金が残るというところは結果として同じなので、残される家族としても安心です。

納税資金にあてることができる

相続が発生すると、相続税を納めなければなりませんが、故人の口座はすでに凍結されているので故人のお金を使うことはできません。

そこで、各自持ち出しということになるのですが、相続税を納税するためのお金が用意できないということになると、相続をするはずだった資産を売却しなければいけなくなります。

そこで、生命保険金を活用して、現金を残せば納税資金に充てることができます。

相続税の支払いにあてることで、相続させたい財産を手放すリスクがなくなります。

代償分割に利用できる

現金は、相続人が複数人いても分割しやすい財産です。

ところが、土地や建物などの不動産の場合、共有名義にすることもできますが、実際にはだれか一人が引き継ぐことになるケースが多いでしょう。

だれか一人が引き継ぐとなると、引き継げなかった人には相応の代償を払わなければなりません。

例えば、長男に家を残したいとします。

他に大きい財産がないという場合、長女、次女はほとんど何ももらえないかもしれません。

長女、次女は自分たちが本来もらえるはずだった法定相続分を主張するでしょう(遺留分の請求)。

そうなると、長男は、本来もらえるはずだった法定相続分の半額を、長女や次女に支払わなければいけなくなります。

そして、長男がもし支払えなければ、家を売ってその売却代金を分割するということになり、長男は家を出て引き継げません。

相続をするという権利は、ほかの誰かかが制限することはできません。

本人たちがいらないといえば、それまでですが、そう簡単に事が運ばないことの方が多いのではないでしょうか。

何ももらえなかった兄弟姉妹にも、配慮する必要があるのです。

遺留分を請求されることに備えて、長男に生命保険金が渡るようにしておけば、残したい家を残したい人にあげることができます。

もちろん、遺言などで別に対策をしておく必要はありますが、遺言は遺言をする人の一方的な行為ですので、残された人が遺言どおりにするかどうかはわかりません。

生命保険を利用して、事前に代償分割に備えておけば、代償分割があっても対応することが可能です。

まとめ

今回は、生命保険金と死亡退職金を使った相続税申告についてご紹介しました。

現金で残すよりも、お得に相続ができる制度なので、ぜひ活用してみてください。

といっても、資産のバランス的に、いくらを生命保険に振り分けたらいいのかわからないということもあるかと思います。

その場合は、ファイナンシャルプランナーに相談したり、保険に詳しい税理士に税額の計算を試しにしてもらったりするといいでしょう。

賢く、財産を残したい人に確実に残すために、しっかりと対策をしていきましょう。
(提供:相続サポートセンター