相続税の課税対象となる資産には、土地や建物などの不動産をはじめ、株式や現金・預金、そして、相続人が事業をおこなっていたのであれば、機械などの事業用資産も課税対象になります。
事業用だけに限らず、生活用具などの家庭用財産も相続税の課税対象となります。
土地や、建物などの不動産は、市区町村などが発行する「固定資産評価証明書」や「路線価」などをもとに計算することはできますが、家庭用財産は一体どのように評価額を算出するのでしょうか。
今回は、家庭用財産の評価方法といくつかの注意点をご説明したいと思います。
家庭用財産などには何が含まれる?
家庭用財産とは名前のとおり、家庭用に使用するための財産のことを指します。
具体的に挙げるならば、家具、エアコンや洗濯機などの電化製品などがあります。
家庭用財産の評価方法
家庭用財産を評価する場合には、原則的な評価方法とそれ以外の場合のいずれかの方法で評価することになります。
評価する家庭用財産は、1個または1組単位で評価をします。
原則的な評価方法
相続開始日現在の家庭用財産の価値を調べる必要があります。
価値を算定にするにあたり参考とする価格は、直近の類似している家庭用財産の売買実例価額や、評価する家庭用財産を取り扱っている専門家の意見を参考とします。
相続開始日にいくらで売却できるかを考えれば、わかりやすいと思います。
原則的な評価が困難な場合
相続開始日の家庭用財産の時価がわからない場合は、その家庭用財産の新品価額から、相続開始日までに価値が下がった金額を差し引いた金額を評価額とします。
ここでいう「価値が下がった金額」とは、法定耐用年数に基づく減価償却費の累計額を指します。
実務上の取り扱い
家庭用財産の中には、1個、1単位あたりの評価額が5万円以下になるような場合が多いです。
家庭用財産の1つ1つを個別に評価することは、実務上難しく、そのような場合には1世帯ごとに家庭用財産をまとめて評価し、「家財一式:10万円」など概算での評価をおこない、申告することが一般的です。
ただし、あくまでも、5万円以下程度のものに限るので、高級ブランド品などがある場合は、概算額ではなく、上記の原則的な評価方法に基づいて評価額を算出した方がよいでしょう。
自動車や船舶の評価方法
自動車も上記の家庭用財産と同じように、評価する場合には原則的な評価方法とそれ以外の場合のいずれかの方法で評価することになります。
評価する自動車・船舶は、1台、または、1艇単位で評価をします。
原則的な評価方法
相続開始日現在の価値を調べる必要があります。
価値を算定にするにあたり参考とする価格は、直近の同車種や同クラスの船舶の売買実例価額や、評価する自動車・船舶を取り扱っている店舗の意見を参考とします。
自動車や船舶などは、種類さえわかれば、中古販売サイトなどで概算での買取見積もり価額などを調べることができるので、そちらを参考としても良いです。
原則的な評価が困難な場合
評価する自動車・船舶の新品価額から、相続開始日までに価値が下がった金額を差し引いた金額を評価額とします。
ここでいう価値が下がった金額は、先ほど説明したように、法定耐用年数に基づく定率法での減価償却費の累計額を指します。
また、中古車や中古船などを評価する場合は、初年度登録日をもとに評価額を算出します。
初年度登録日から、法定耐用年数をすでに過ぎている場合には、「評価額0円」とする場合もあります。
骨董品等美術品の評価方法
絵画や書画などの美術品や貴金属等を評価する場合には、古美術商などの専門家、鑑定を依頼する方法や、買い取り業者などに査定をしてもらい実際の売却価額を参考とする方法、そして過去の売買実例価額を参考とする方法があります。
骨董品等については、この査定額が間違っていると、相続税の課税漏れになりかねないので、きちんとした専門家へ依頼することをおすすめします。
評価額が数万円~数十万円程度の場合
骨董品等美術品が偽物の場合や、保存状態が悪い場合は、購入価額が高額でも、数万円程度にしか、評価額がならないものもあります。
このように、上記の査定方法で評価した価額が、数万円から数十万円程度だった場合は、家庭用財産の中に含めることができます。
まとめ
家庭用財産などは、相続が発生した際に自分の価値観で「すべて価値はないものだ」と判断し、相続税を申告する際に、「家財なし」としている方もいますが、税務調査があった場合に、「一般的に、家庭用財産がない家は、存在しませんよね?」と指摘されれば、どうすることもできません。
そのため、家庭用財産の価値はない、と思っている場合でも、概算でも構いませんので、数万~数十万円などと評価し、申告する方が良いでしょう。
(提供:相続サポートセンター)