マルハニチロでは水産部門と業務用食品部門の統合により、提案活動の効率化につながったという。商品では、袋のまま調理できる「出来たてキッチン」などが順調に推移したようだ。今後は国内外で自社の強みを活かした提案を進める。食材流通ユニット業務用流通事業部の谷内勉部長に聞いた。(取材は2024年7月3日に実施)
――食材流通ユニットの業績は。
売上は前年比5.5%増の2,228億円だった。グループ内の連携や市場ニーズの変化を捉えた提案に努めたことと、値上げやコストアップの価格転嫁が増収に貢献した。営業利益は同37億円増の59億円だった。業務効率や生産性の向上を進めた結果だと思う。
大まかなルート別の前年比は、外食が5%増、病院給食を含めた介護給食は11%増、デリカは8%増、量販店水産売り場向けは2%増だった。
病院施設だけでなく、デリカや外食など、広い業態で人手不足は深刻な状態だ。特に外食は、コロナ禍に業界から離れてしまった人も多く、他の業界に根付いてしまった人も多いと聞く。人口が減少している中で、人手不足に対応した商品の引き合いは今も続いている。
――食材流通ユニットに変わって1年、変化は。
水産部門と業務用食品部門を一緒にしたことで、食品から水産まで全ての商品に対応できるようになり、好評だった。1つの会社に別々で提案を行っていたところを一挙に行えるようになるなど、効率的な動きもできるようになった。水産部門も食品部門のルートを活用できるようになり、優位性を感じられるようになったと社内でもよく聞いている。水産最大手の会社として、絶対に水産物は他社に負けられないという意識が根付いた1年だった。この組織再編は間違いでなかったと改めて感じた年だった。
――重点施策と成果は。
昨年度は、販売力強化と高コスト体質からの脱却という方針を掲げ、一定の成果を上げられた。今年度はもう一段上のレベルを追求するつもりで進めている。
販売力の強化は、各地域の支社に本社から担当を派遣し、それぞれの成功例を吸い上げて他の支社にも情報を共有するようにした。お客様にもお伝えできる情報が増えたこともメリットだと思う。
高コスト体質の脱却としては、在庫管理に焦点を当て、物流費を前年対比で抑えられたと同時に、アイテムの集約も進めている。既存の商品から2割ほど絞り込み、工場の生産効率の向上につなげられた。
――新商品については。
美味しさの追求に加えて、冒頭にも申した通り、人手不足の対応が重要になっている。厨房の半分を私どもの工場で仕上げて現場の調理場では今までの仕事の半分で済み、変わらない美味しさを提供できる商品の開発に取り組んできた。
袋のまま調理できる「出来たてキッチン」シリーズを投入した。袋の中に調味液を入れ、コンベクションオーブンで加熱するとかぼちゃの煮物や肉じゃがなどの料理を作れるシリーズだ。今まで通り、温めるだけの焼きそばも売れ行きが順調だ。
惣菜市場向けには、衣が初めから付けてあるため、揚げるだけで揚げ物メニューを提供できるノンプリフライの商品も、大手スーパーからの採用が進むなど順調だった。
――24年の重点施策は。
マグロや、焼きそばなどの麺類に力を注ぐと共に、常温の果物パウチなどの提案も進める。私どもは冷凍食品を多く扱っているが、意外と常温食品を扱っている。ホテルビュッフェなどのフルーツとして広く活用いただけており、まだまだ伸ばせると感じる。この3年で販売を倍増するように計画しており、さらに拡販したい。
紀文食品の工場を活用した商品の製造も検討、各国で販売できる商品開発へ
――生産面については。
グループ工場への製造委託や直営工場での生産など、グループ全体で工場の稼働が上がるように取り組んでいる。今後についても、人手不足の環境は変わらない。機械化できるところは互いに進めて、省人化などにも取り組む。また、今後は資本業務提携をした紀文食品の工場を活用した商品の製造も検討している。
――今後については。
取引先やユーザーから、なくてはならないメーカー、と言われる会社になりたい。中期的には、日本だけでなく世界に輸出して売っていけるメーカーになりたいなと考えており、準備も進めている。
日本の外食チェーンが海外に店舗を出すならば、そこに向けた提案を進めていく。諸外国に日本食レストランはあるが、業務用流通事業部としてそこへの取り組みは今までほとんどやっていなかった。海外には日本とは異なるさまざまな基準があるが、そこを乗り越えて各国で販売できる商品を作り供給していく。
今年春の新商品でMSCの商品を発売したところ、日本でも展開している外資系のホテルから引き合いがあった。インバウンド需要が高まっている中で、日本に来る外国人観光客に向けてこうした商品を販売することは、社会的にも意義があり、新たな提案のチャンスにもなると思っている。ただ作って売るだけでなく、社会のため、地球のためにもなるという仕事につながれば良いと思っている。
〈冷食日報2024年7月22日付〉