相続財産の最も代表的なものが「現金」や「預金」ではないでしょうか。
現金や預金は相続税の対象になります。
ただ、預金には普通預金・定期預金・外貨預金などの種類があるため、預金種別の違いによる相続税評価方法の違いに注意が必要です。
現金・普通預金・定期預金・外貨預金の相続税評価と注意点について解説します。
現金と預金の相続税評価の方法とは
相続財産に現金や預金があった場合は、それぞれの財産の性質に合った相続税評価を行う必要があります。
現金は現金で、特に種類はありません。
対して預金は、預金の種類によって相続税評価方法が変わります。
1.現金
2.普通預金
3.定期預金
4.外貨預金
以上の4つの相続税評価方法について、順番に見ていきましょう。
種類ごとに注意すべきポイントにも触れます。
現金の相続税評価方法
亡くなったときに手許にあった現金(手許現金)が相続税評価の対象になります。
手許にあった現金と言われると、お財布の中にあった現金のみという印象があるかもしれません。
相続税評価の対象になるのは、お財布の中の現金だけではありません。
亡くなった人が持っていた現金は基本的にすべて対象になります。
貯金箱やへそくりなどもチェックすることが重要です。
亡くなった日以降に葬祭や生活のために亡くなった人の口座から引き出した現金も、相続財産に含まれることに注意が必要です。
普通預金の相続税評価方法
普通預金の相続税評価は、亡くなった日の残高になります。
残高は「通帳を見ればわかる」と思うかもしれませんが、通帳は記帳が済んでおらず、記録が途中で止まっている可能性があるため、口座のある金融機関から残高証明書を発行してもらいましょう。
金融機関が発行した残高証明書には亡くなった日の時点での残高が記載されているので、その預金額が評価額です。
なお、残高証明書を取得したら、残高の証明日に気をつける必要があります。
「〇年〇月〇日における残高を証明します」といった文言が文書中にあるはずです。
日付が亡くなった日になっているか、よく確認することが必要になります。
定期預金の相続税評価方法
定期預金や定期郵便預金などの円定期も、普通預金と同じように考えて差し支えありません。
相続税評価は亡くなった日の残高です。
金融機関から残高証明書を発行してもらって残高の確認をするところも同じです。
ただ、定期預金には利息があることに注意が必要になります。
定期預金を亡くなった日に解約した場合の利息(税金を引いた利息額)も合算する必要があるのです。
利息も相続税評価に使うため、金融機関に残高証明書を発行してもらうときは、既経過利息の記載もお願いしましょう。
利息計算書の発行を依頼するかたちでも差し支えありません。
残高証明書を発行してもらった場合は、普通預金と同じく日付をよく確認しましょう。
外貨預金の相続税評価方法
亡くなった人が外貨預金を所有していた場合、日本円と外貨には相場の違いがあることに注意が必要です。
外貨のままで相続税評価を行うのではなく、日本円に引き直して相続税評価をすることになります。
外貨預金は金融機関が公表している亡くなった日のTTB(対顧客直物電信買相場)で円に引き直し、相続税評価をするという流れです。
残高証明書にTTBを記載してくれるように、金融機関にお願いしましょう。
残高証明書を発行してもらうときの注意点
普通預金や定期預金の相続税評価で使う残高証明書。
この残高証明書を金融機関に発行してもらうときに注意したいポイントが3つあります。
残高証明書の取得により故人の口座が凍結される
残高証明書を取得することにより、基本的に金融機関側に口座名義人の死が知られます。
口座名義人が亡くなったことにより、口座は凍結、相続手続きを経ることになります。
口座が凍結されてしまうと、お金の引き出しができません。
葬祭費などを預金で用立てようと考えている場合は注意が必要です。
公共料金などの引き落とし先を急いで変える
故人名義の口座から公共料金などの引き落としをしていた場合、口座の凍結があると引き落としできないことになります。
早い段階で引き落とし先を変えておくことが重要です。
口座の相続手続きに使う書類も、早めに準備しておきましょう。
口座凍結前の預金引き出しには注意が必要
残高証明書の発行で金融機関側に事情を知られて口座を凍結されるなら、その前に預金を引き出してしまおうと考えるかもしれません。
預金は相続財産なので、相続人の遺産分割対象になります。
相続トラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
現金や預金の相続税評価は基本的にシンプルです。
現金や預金は額面により価値がはっきりしているからになります。
ただし、油断は禁物です。
外貨預金は日本円に引き直すという複雑さがあり、定期預金には利息があります。
難しいと感じたら、税理士や税務署の窓口に相談しましょう。
(提供:相続サポートセンター)