企業が資金調達を行う場合、選択肢の1つとなるのが金融機関からの借入である。ただし、借入金をする場合、避けて通れないのが利息の支払いだ。利息は、低いほうが望ましいことは言うまでもない。月々の支払額を抑えるために返済期間を長くすると、支払う利息の総額は増える。
スポット的に運転資金を緊急で調達するなら高金利での借入も必要になるが、その場合当然利息負担は大きくなる。利息負担をどう考えるかは、特に財務体力の乏しい中小企業にとっては、重要な問題だ。
今回は借入金の利息に注目し、その種類や計算方法、調達先、金利の決定要素などについて詳しく解説したい。
目次
借入金の利息の種類と支払方法
金利タイプには、固定金利と変動金利がある。どちらで借入をするかによって負担が大きく変わるため、企業の経営者・経理担当者は注意が必要である。
借入金の返済方法には一括返済と分割返済があり、分割返済には元利均等返済と元金均等返済がある。分割返済の場合、返済方法が元利均等返済と元金均等返済のどちらであるかによって、利息の支払い方が変わる。
借入金の金利タイプは固定金利と変動金利の2種類
企業が金融機関から借入をすると支払利息が発生するが、支払利息の金額は「借入金×利率」で計算される。つまり利率の値によって、支払利息の金額が変わるのだ。
金利タイプは、大きく分けて固定金利と変動金利がある。
固定金利とは、借入時に金融機関側と取り決めた利率が完済まで変更されないものだ。通常、金融機関は経済情勢の変化によって、融資時の金利を変える。しかし固定金利の場合、当初決定した利率が完済するまで固定されるので、経済情勢がどのように変わろうとも、あるいは金融機関の経営状態がどう変化しようとも、利率は変わらない。
変動金利とは、金融機関の短期プライムレートを基準として借入中に利率が変動するものだ。短期プライムレートとは、各金融機関が「業績が良い」「財務状況が良好」といった最優良の企業に対して融資を行う際の最優遇貸出金利(プライムレート)における、1年以内の短期貸出金利を指す。
通常、短期プライムレートは経済情勢の影響を大きく受けるため、好景気になればそれに合わせて借入金の利率も上がる。利率が上昇すると企業が負担する支払利息が大きくなる。変動金利には、固定金利にはないリスクがあると言えるだろう。
まとめると、以下のようになる。
①固定金利は融資が完済されるまで金利は変わらない。
②変動金利は完済されるまでの期間で、金利が変動することがある。
固定金利と変動金利のどちらが企業にとって得になるかは、将来の金利動向によって変わる。今後、融資を受ける銀行が設定する金利が大幅に上昇していくと見込まれるなら、固定金利にしておいたほうが企業にとっては得になる。金利が下がると見込まれるのであれば、固定金利で金利を固定するよりも、変動金利にしておいたほうが企業側は得をするだろう。
しかしながら、将来の金利についての正確な予測は誰にもできない。そのため、融資を受ける側が今後の金利を予測して、固定金利と変動金利のどちらかを選ぶしかない。
基本的に変動金利で融資を受けた場合、途中で固定金利に変えることは難しい。同様に、固定金利で受けている融資を途中で変動金利にしてもらうことも難しい。よって融資を受ける際は、慎重な判断が必要になる。
借入利息の支払方法・・・元金均等返済と元利均等返済について
金融機関から融資を受けて返済をする場合、その返済方法は大きく分けて2種類ある。1つが「一括返済」で、これは返済期日に借入金をすべて返済する方法であり、支払利息は固定金利もしくは変動金利によって決められた額を返済日までに支払うことになる。この場合、借入金の元金部分の金額は変わらないため、利率は元金をもとに計算される。
もう1つは「分割返済」で、完済日までに何回かに分けて借入金を返済していく方法である。この場合、完済日までに融資を受けた元金は減っていくため、支払利息の金額もそれに合わせて減少していくことになる。完済日を同じ日とするなら、当然ながら一括返済よりも分割返済のほうが支払利息の総額は安くなる。
分割返済には、「元金均等返済」と「元利均等返済」がある。完済日までの返済方式をどちらで行うかによって、利息の支払い方法が変わる。
「元金均等返済」とは、借入金の総額を完済日までに一定期日ごとに均等分割して返済していく方法である。完済日までに借入金の残高は段階的に減少していくので、支払利息もその都度減っていく。
ただし元金均等返済には、返済期間の最初は負担が大きいという難点がある。最初は借入金の残高が大きいので利息額が大きい上に、均等に分割された元金も返済しなければならないからだ。しかし、元金の返済が進めば支払利息額も減っていくので、完済日が近づくにつれて次第に負担は減っていく。
「元利均等返済」とは、元金の返済額と支払利息の合計額が常に同額になる返済方法である。元金均等返済は借入金の元金を均等に返済していくので、最初の頃は負担が大きいが、返済が進むと支払利息額が減り、負担は軽くなっていく。一方元利均等返済の場合、融資を受けた日から完済日まで、返済日における負担額は一定だ。
元利均等返済のメリットは、元金均等返済よりも返済初期の負担が軽いことだ。特定時期の重い負担を避けたい場合、元利均等返済は有利な返済方法・利息の支払い方法と言えるだろう。また、企業が定期的に負担する金額(返済額+支払利息)が完済日まで変わらないため、資金計画を立てやすいというメリットもある。
しかし、返済額と支払利息の合計額が完済日まで同じということは、返済初期は後期に比べて、元金部分の返済が少なくなることを意味する。そのため、元金の返済スピードが遅くなってしまい、支払利息を含む支払総額が多くなるというデメリットがある。
借入金の利息は調達先によって変わる
金融機関には、大きく分けて「都市銀行・地方銀行・信用金庫など預金を扱う民間の銀行」「政府系金融機関」「預金を扱っていない消費者金融や信販会社」がある。中小企業が融資を受ける場合、これらの金融機関のうちどれを選択するかによって、金利は大きく変わる。
中小企業は、自社の置かれた状況から、どの金融機関を利用するのが最も合理的であるか、慎重に判断する必要があるだろう。ここからは、各金融機関の金利設定の特徴について解説する。
都市銀行、地方銀行、信用金庫からの借入
一般的に銀行からの融資というと、このタイプの金融機関からの借入を意味することが多い。民間の金融機関であるため、いざというときに国からのサポートを受けられる政府系金融機関とは異なり、自行の利益を優先的に考える必要がある。そのため、融資にあたっては厳しい審査が行われ、実際に融資が行われるまで時間がかかる傾向がある。
金利は、各銀行が行う審査結果によって決まる。審査は「信用格付け」と呼ばれる基準をもとに行われ、具体的には以下のような内容が調査・分析される。
①企業の事業が黒字であるか赤字であるか
②各種決算書の内容
③延滞金があるかどうか
その上で企業をスコアリングして分類し、その内容によって融資の可否や金利が決まる。
金利は、銀行によって異なる。銀行側は融資を申し込んだ企業ではなく、自行の利益が最大となるように金利を提示する。企業側は、融資を申し込んだ銀行が提示する条件を受けるか受けないかを決めることになる。
実際の金利については、現在、日本政府が定めている政策金利(民間銀行に中央銀行がお金を貸すときの金利)が低いため、銀行が融資を行う際の金利相場も昔ほど高くない。近年の優良中小企業向けの融資である短期プライムレートはおおむね1.8~2%。一般企業に対する金利は、2~3.5%が相場だ。
政府系金融機関からの借入
国が運営する金融機関である「日本政策金融公庫」は、小規模企業向けの小口資金を扱う国民生活事業、中小企業向けの長期的な融資を扱う中小企業事業、農林水産業における長期融資を扱う農林水産事業という3つの融資制度を設けている。多くの企業が利用しているのが中小企業事業向けの融資であり、融資対象は業種や資本金、従業員数などによって定められている。
中小企業事業ではさまざまな融資を行っており、たとえば「新事業育成資金」は創業から5年以内の企業を対象とし、融資限度額は6億円で融資期間は20年以内だ。ただし、融資対象となるのは新規性、成長性のある事業を行っている企業に限られる。
また「企業活力強化資金」では、小売業や卸売業、飲食サービス業などを対象に、店舗の新築、改築、機械設備の購入を行う際の融資を、融資限度額7億2,000万円、融資期間20年以内で行っている。
「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」という融資制度もある。これは廃業歴のある人など、所定の条件を満たす人が対象となる制度で、融資限度額は7億2,000万円、設備資金は20年。「IT活用促進資金」は、情報化投資を行う企業を対象とする融資で、こちらも融資限度額は7億2,000万円、設備資金は20年だ。
他にも多くの融資制度があるが、日本政策金融公庫の最大の特徴は、民間の銀行に比べて金利が安いことだ。基準となる利率は1.11%であり、特定の条件を満たせば、特別利率(0.30~0.71%)で融資を受けることもできる。中小企業は、利用すべき金融機関と言えるだろう。
ノンバンク(消費者金融や信販会社)からの借入
ノンバンクは、預金を扱わない金融機関である。もっぱらお金を融資することを目的としており、最大の特徴は、融資を受けるまでの時間が短く、その代わりに金利が非常に高いことだ。条件次第では借入を申し込んだその日に融資を受けられることもあるが、平均的な金利は5~18%で、政府系金融機関などと比べると圧倒的に高い。
これだけ金利が高いと、財務体力の乏しい中小企業にとっては利用しにくいように思われるが、緊急で資金を必要となった場合、ノンバンクの融資制度は非常に便利だ。
たとえば、「来月初めには資金確保の目途が立っているが、今月末は資金が不足し、社員の給料を現金で支払うことができない」という場合、ノンバンクから即日で受けられる融資は大きな助けとなる。金利は高いが、借入期間が短いのであれば、支払利息の負担も限定的だろう。
これまでの内容をまとめると、以下のようになる。
①都市銀行、地方銀行、信用金庫・・・金利は政府系金融機関よりも少し高いが、ノンバンクよりははるかに低い。利用条件は政府系金融機関よりもやや緩いが、審査が厳しく、融資まで時間がかかる。
②政府系金融機関(日本政策金融公庫)・・・金利が最も低い。ただし、融資制度ごとに利用条件が限定されており、融資までに時間がかかる。
③ノンバンク(消費者金融や信販会社)・・・金利が極めて高い。ただし、融資基準・利用条件は緩く、融資を受けるまでのスピードも速い。
借入金の利息の決定要素とは?
金利の高さは大まかに「政府系金融機関(日本政策金融公庫)<預金を取り扱う民間の銀行<ノンバンク」ということになるが、実際の金利を決定するのは各金融機関である。各金融機関は、企業から融資の申し込みがあった場合、各自の決定メカニズムに従って具体的な利率を決める。
以下では、金融機関における金利決定のメカニズムと、企業が借入金の金利を下げる方法について解説する。
金融機関の金利決定のメカニズム・・・制度と信用度
日本の金融機関における金利決定のメカニズムは、大きく分けて「制度によって決まる」場合と、「借り手の信用によって決まる」場合がある。
政府系金融機関(日本政策金融公庫など)の融資の中には、あらかじめ国によって定められていて、それに基づいて利率が決定されるものがある。この利率は、国際の金利や市場動向など、経済的な要因によって変動するが、金融機関が独自の判断で勝手に変えることはできない。
一方、民間の金融機関では、短期プライムレートなどを基準にしつつ、信用状況によって実際の金利が決められる。たとえば、借り手の信用度が高ければ、短期プライムレートに近い利率で融資を行い、信用度が低い場合はそれよりもずっと高い利率で融資が行われる。
ここでいう信用度とは、企業の採算性のことだ。「信用度が高い」とは、事業が安定していて融資をしてもきちんと返済される可能性が高いことを意味し、「信用度が低い」とは、事業の採算性が悪く、貸し倒れになるリスクが高いことを意味する。
融資を行った際、金融機関は貸倒引当金を積むことになるが、信用度が低い融資先ほど貸し倒れになる危険性が高いので、より多く積む必要がある。それを補うために、銀行は信用度の低い企業に対する金利を高く設定するのだ。
借入金の利息を下げるには?
企業の「信用度」が物を言う民間銀行やノンバンクでは、信用度を高めることが金利低下につながる。金利を下げるための具体的な施策は、以下のとおりだ。
①業績を良くして連続黒字を達成する。
②融資対象となる事業に対する評価を高めるために、経営計画書を作成・提出し、予実管理を行う。
③「中小企業の会計に関する指針」に従った会計処理を行う。
予実管理とは、企業が目標として立案した予算と実績を比べて、達成状況を管理することだ。確固とした事業計画を銀行側に提示することで、信用度の向上が期待できる。
「中小企業の会計に関する指針」は、日本商工会議所、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、企業会計基準委員会などが定めた会計指針で、その内容に忠実に従った会計処理を行っていると、健全な会計を行っていると判断され、信用度を高めることができる。
融資を受ける場合、借入金の利息の仕組みを理解しておくことが大事
中小企業が事業を維持・拡大する場合、金融機関からの融資が必要になることがある。実際に融資を受ける場合、借入金の利息の種類と計算方法、金融機関ごとの金利の違い、金利の決定要素などは最低限理解しておく必要がある。
金利の仕組みをきちんと把握しておけば、自らの経営状況・事業計画に適した最適な融資先を見つけることもできるだろう。また、民間銀行から融資を受けようとする場合、信用度を高めるための努力を惜しまずに行うことが、金利を低くする上でのカギとなることも、覚えておくべきである。
文・THE OWNER編集部