相続の際に、相続財産の額を確定することは、相続手続きの第一歩です。
預貯金はそのままの金額になりますが、土地の価格を確定させることは、意外と難しいものです。
ここでは、土地の価格の評価方法について、詳しくご説明いたします。
相続財産の算定方法とは?
財産を持った人(被相続人)が亡くなり、その財産を配偶者や子どもなど(相続人)が引き継ぐことになります。
これを相続と言いますが、この手続きを始める際にやらなければならないことは、2つです。
1つは、相続人を確定させることです。
そのためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本などを取り寄せる必要があります。
もう1つは、相続財産の確定です。
そのためには、被相続人名義の財産、例えば預貯金、自動車、骨とう品などの動産のほかに、土地や建物などの不動産をリストアップする必要があります。
リストアップが出来たら、それぞれの価格を確定させなければなりません。
ただ、土地以外の相続財産の価格を確定させることは、基本的に「時価」で評価することになりますから、それほど難しいことではありません。
預貯金は、残高の金額がそのまま評価額になりますし、上場株式や投資信託などは、金融機関が発行する資料を確認すれば、評価額となる市場価格や基準価格がわかります。
また、死亡保険は、受け取った金額から非課税額を引いた金額が評価額となります。
ただし、相続財産における土地の評価額については、他の財産の算定方法とは異なります。
なぜ土地の評価額を算定することが難しいかというと、土地と言っても同じものが一つとないからです。
例えば、土地の用途は、農地、宅地、山林、駐車場などさまざまです。
しかも土地の一つひとつに、○○円という表示があるわけではありませんから、いろいろな角度から調査を行わなければなりません。
また、同じ面積、同じ用途の土地であっても、以下のように、形や道路との接し方が違う場合は、評価額がまったく異なります。
さらに、その土地を誰が使っていたか、誰に相続するかによっても、評価額は異なってきます。
このように、個々の土地には評価額を決めるための要因がありますから、相続財産の土地の価格を確定させることは、かなり難しいのです。
それでも、相続財産になるような住宅地の土地については、評価額を確定するための方法がありますから、それほど難しく考えることはありません。
土地の評価区分とは?
被相続人から相続した土地が宅地だけであれば、特に問題ありませんが、宅地の一部を貸駐車場にしていたような場合には、土地の評価を分ける必要があります。
これを「評価区分」と言います。
土地を相続した際に、その土地を評価するには、その土地の「地目」を基準に考えます。
「地目」とは、土地の利用状況を表すもので、主な地目には、次のようなものがあります。
宅地 | 建物が建っている土地 |
雑種地 | 貸駐車場、資材置き場など利用している土地 |
田 | 水を利用する農地 |
畑 | 水を利用していない農地 |
例えば、宅地の一部を貸駐車場として利用している場合には、建物が建っている箇所を宅地、貸駐車場として利用している箇所を雑種地に分けて、別々に評価します。
また、宅地の一部を畑として利用している場合には、建物が建っている箇所を宅地、畑として利用している箇所を畑に分けて、別々に評価します。
ただし、宅地の一部を畑として利用していても、採れた野菜を自分の家で食べるなどの、いわゆる家庭菜園の場合には、畑ではなく宅地と考えますから、すべて宅地として評価します。
この「地目」については、被相続人の死亡した日の利用状況に従います。
このことを「現況地目」と言います。
また、土地の「登記事項証明書」に記載された「地目」を「登記地目」、毎年度市区町村役場から送られてくる「固定資産評価証明書」の「地目」を「課税地目」と言います。
例えば、「登記地目」では畑とされている土地が、「課税地目」では雑種地と記載されている場合があります。
これは、土地を登記する際に、畑だったものをその後に貸駐車場などに転用したため、起こる現象です。
このような場合は、先ほどご説明したように、被相続人が亡くなった日の利用状況に従いますから、最新の「課税地目」で評価することになります。
ただ、「課税地目」も現状と違う場合があるかもしれませんので、あくまで「現況地目」という原則に従うことになります。
宅地の評価単位とは?
すべての土地は、「1筆」、「2筆」というように、「筆(ふで)」という単位で数えます。
また、土地の一つ一つには、「○○市○○1丁目100番」、「○○市○○1丁目101番」というように地番がつけられていて、その地番ごとに1筆、2筆と数えるのです。
ただし、相続税申告の際に、宅地を評価する場合には、この地番や筆にはあまりこだわりません。
むしろ、宅地を利用の単位で区切った「1画地」ごとに、評価していきます。
例えば、自宅が「○○市○○1丁目100番」と「○○市○○1丁目101番」の2筆に建っていた場合には、どちらも宅地ですから、2筆を合わせて「1画地」とするのです。
この「画地」という単位は、所有者が自由に使えるか、それとも他の所有者によって使用が制限されているかによって判断します。
同じ敷地内で、自宅と賃貸住宅とが隣り合っている場合には、それぞれの建物の利用者が異なることになるので、「2画地」とカウントすることになります。
反対に、被相続人が使っていた店舗と自宅が隣り合っていた場合には、違う建物であっても利用者が同じですから、2つの建物の敷地を合わせて「1画地」とします。
ただしこの場合に、2つの建物を別々の人が相続した時には、相続した人ごとに土地を「2画地」に分けて、評価することになります。
以下が、1筆の宅地を2画地以上に分けて評価する方法です。
これらの方法によって、公図や地積測量図などの図面で、宅地を1画地ごとに評価します。
実際の宅地を測る
メジャーなどを使用して、宅地の間口や奥行きを測ります。
測った距離を三角スケールで、1/600、あるいは1/500の公図や地積測量図の縮尺に直して、図面に落とし込んで区切ります。
建物図面を参考にする
宅地にどのような位置関係で建物が建っているかを確認します。
建物の資料を参考にする
市区町村役場に行って、その建物を建てた際の「建築申請書」の添付資料「建物計画概要書」などを確認し、建物の概要や配置図を確認します。
路線価方式と倍率方式
土地の評価区分と評価単位の次は、いよいよ土地の評価額を算定します。
宅地の評価額の算定方法には、路線価方式と倍率方式の2つがあります。
路線価方式
倍率方式とは、路線価が定められていない地域での評価方法です。
宅地が面している道路につけられた路線価に、宅地の面積(地積)をかけて評価額を算出します。
この路線価は、「路線価図」という資料に、宅地1㎡当たりの価額が千円単位で書かれています。
また、この「路線価図」にある「⇔」は、適用される範囲を表します。
路線価図は 国税庁のホームページで確認することができます。
倍率方式
倍率方式とは、路線価が定められていない地域での評価方法です。
宅地の固定資産税評価額に、倍率をかけて評価額を算出します。
固定資産税評価額は「固定資産税評価証明書」に、倍率は「倍率表」に書かれています。
まとめ
相続財産の中で、土地の価格は大きな比重を占めます。
ただし、土地の評価方法は難しいので、きちんとした手順で行うことが重要です。 (提供:相続サポートセンター)