亡くなった人(「被相続人」と言います。)から、生前に相続人へ財産を贈与した分は、ある一定の条件の下では、相続財産とみなされ、相続税の対象となります。
ここでは、生前贈与の暦年課税と相続時精算課税をご説明します。
また、被相続人が行った養子縁組の注意点も併せてご説明いたします。
生前贈与財産に関する必要書類チェックリスト
書類名 | 取得できる場所や費用 | 備考 |
<暦年課税> 贈与税申告書(過去6年分) | ・贈与税申告書、相続時精算課税選択届出書に関しては、控えがあればでOK。 ・戸籍附票の写しに関しては、本籍のあった市区町村役場(郵送可)、手数料は市区町村により異なります。 | |
<相続時精算課税> ・贈与税申告書(過去分すべて) ・相続時精算課税選択届出書 ・故人と相続時精算課税適用者の戸籍附票の写し | ・戸籍附票の写しに関しては、相続開始日以後に作成されたものが必要です。 | |
贈与契約書 | 保管されていれば | |
故人および贈与を受けた方名義の通帳 | あれば |
以下で、生前贈与と相続税の関係について解説します。
生前贈与と相続税①暦年課税
生前贈与は、相続税の節税対策として、一般的に行われる方法です。
被相続人が亡くなる前に、相続人に対して、年間110万円までを贈与することで、相続財産を減らすことができ、結果的に相続税を減らすことができます。
贈与金額が、年間110万円を超えると贈与税が課税されるため、相続人一人に年間110万円までを贈与する方法が一般的です。
ただし、相続によって財産を取得した人は、被相続人から相続開始前3年以内、つまり被相続人が亡くなる前の3年以内に贈与された財産は、相続財産とみなされます。
相続によって財産を取得した人なので、法定相続人でなくても、遺言によって財産を取得した人や死亡保険金を受け取った人も含まれます。
これを「暦年課税」と言います。
なお、被相続人が相続人に贈与を行ったことがわかる証拠品が必要です。
例えば、贈与契約書や被相続人から相続人の預金口座に、現金が移動したことがわかる明細書などです。
また、あえて110万円を超えて贈与し、税務署に贈与税の申告を行うことで、贈与の証拠とすることもできます。
生前贈与と相続税②相続時精算課税
先ほどの「暦年課税」とは別に、「相続時精算課税」という制度もあります。
この制度は文字どおり、生前贈与された被相続人の財産について、相続時に税額を精算する制度です。
具体的に言うと、親から子どもへ財産を贈与した時に、贈与税がかかりますが、これを相続税の「仮払い」とするものです。
そして、相続があった時に、その贈与税を含めて計算した相続税額から、すでに納めた贈与税を控除するのです。
この制度では、「暦年課税」とは違って、相続で財産を取得していない人も該当します。
例えば、祖父から孫へ相続時精算課税で財産を贈与していた場合、孫は祖父の法定代理人ではなく(孫に親がいない場合を除く)、遺言がない限り祖父から孫に財産が相続されることはありませんが、この場合でも相続財産に加算されます。
なお、贈与税の申告期限は、6年で時効になります(悪質な脱税の場合は7年で時効)。
つまり、贈与税の申告漏れが明らかになった場合には、過去6年分、または7年分について、税務署から贈与税が課税されますから、相続税を申告する際に、過去の贈与で申告漏れがないかを確認する必要があります。
なお、この制度では、被相続人から生前に贈与を受け、贈与税の配偶者控除、住宅取得等資金贈与の非課税、教育資金一括贈与の非課税、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税の適用を受けた箇所については、相続開始前3年内でも相続財産に加算しなければなりません。
この「相続時精算課税」の制度を利用するためには、贈与税の申告書(過去の分すべて)と相続時精算課税届出書が必要です。
また、被相続人と相続時精算課税の適用を受ける人(贈与をされた人)の戸籍附票の写しも必要です。
さらに、贈与契約書や被相続人と相続時精算課税の適用を受ける人の通帳があれば、必要となります。これらは、贈与があったことを確認するためのものです。
養子縁組と相続税
相続税の節税対策として、被相続人が生前に孫を養子縁組して、相続税の基礎控除額が増やす方法があります。
基礎控除額とは、その金額までの相続財産には相続税がかからないというもので、具体的には、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。
法定相続人とは、民法で相続人として規定されている親族で、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹などです。
そして、被相続人が養子縁組をした人も法定相続人になりますから、基礎控除額が増えることになるのです。
この養子縁組のメリットは、養子になった人に、養親の財産の法定相続分、遺言がある場合の遺留分、相続する権利がある点です。
また、特別養子になる場合を除き、養子になった後でも実親との関係が続きますから、実親が亡くなった時でも、実親の財産を相続する権利を持ち続けることになります。
さらにメリットとしては、法定相続人の数が増えるので、相続税の基礎控除額や死亡保険・死亡退職金の非課税枠が増えることです。
一方、デメリットとしては、法定相続人の数が増えることで、相続財産の取り分が減ることになり、実子から反発される可能性があることです。
養子縁組の手続きは、養親か養子のいずれかが、養親か養親の本籍地、または届出人の住所地の市区町村役場に、養親縁組届、養親・養子の戸籍謄本、写真付きの身分証明書を提出することになります。
まとめ
生前贈与を上手に使うことで、相続税に対する節税対策を行うことができます。
ただし、計画的に行わないと、煩雑になる可能性がありますので、注意が必要です。 (提供:相続サポートセンター)