当コラムは、日本M&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが執筆しており、食品業界の最新情報を提供しています。 今回は、水産業界におけるM&Aに焦点を当て、「水産業界を取り巻くM&A」というテーマで解説します。
日本の水産業界事情について:様々な要素から変化する水産業界
この章では、日本の水産業界の現状について説明します。農林水産省の公表データや過去の傾向、将来予測を元に、日本の食料問題と深く結びついている水産業の現状を認識します。
低下していく「食料自給率」
日本の食料自給率は、生産額ベースの自給率が昭和42年の86%から減少し、令和4年時点で58%まで低下しています。この数字だけでは、食料生産の減少というだけではなく、飼料や原料の輸入額が増加することで、食料自給率が低下していることが分かります。
次に、具体的な品目ごとの食料自給率の変化も見ていきます。 昭和40年時の品目ごとの食料自給率と令和4年時の品目ごとの食料自給率を見ていくと、『大麦・はだか麦』『牛肉』『豚肉』『魚介類』『油脂類』の減少が著しいことが見えてきます。
上記項目にて輸入金額で見た際に、最も金額が上昇しているのが『魚介類』です。
つまり、『魚介類』が、国内自給率が最も下がっており、且つ現在において原材料の高騰が著しいアイテムになっていることが確認できるかと思います。 天然資源がありふれて、それを売買することにより潤ってきた日本が、今では他国に仕掛けられる、他国に依存せざるを得ない状況になっていることが分かります。
資源量の減少「水揚げ量の低下」
日本の水揚げ量は、品目ごとにばらつきはありますが、総体的に減少傾向にあります。例えば、令和4年の漁業・養殖業生産量は前年比5.8%減少し、海面養殖業の収穫量も前年比1.6%減少しました。
また、日本の漁業・養殖生産量は、国連食糧農業機関(FAO)が発表した世界ランキングで、令和3年には11位となり、初めてトップ10から外れました。
水産食料の消費量減少
少子高齢化や原価の高騰、食の多様化などの要因から、水産食料の消費量は年々減少しています。例えば、国民1人当たりの食用魚介類供給量は、1989年で平均37.4kgだったのに対し、2018年には23.9kgにまで減少しました。一方で、食用肉類の供給量は増加傾向にあります。