東京の不動産価格の高止まりが続く。この春以降、やや落ち着きつつあるが、新築マンションの1戸当たり平均販売価格が1億円を越えた昨年からの趨勢は変わらない。こうした中、今年1月から入居がはじまった “晴海フラッグ” で、住民票登録がない物件が全体の3割に達し、500戸を越える分譲物件が転売、賃貸に出されていていることが過熱する不動産投資の象徴事例としてあらためて衆目を集めている。
“晴海フラッグ” は、東京オリンピック・パラリンピックの選手村を改修した大規模マンション群で、もともとが都有地であるため販売価格は周辺相場に対して割安となった。結果、投資資金が殺到、売り出し時の平均倍率は70倍、もちろんすぐに完売し、同時に転売もはじまった。リセール価格は急騰、今や購入できる層は業者、富裕層、外国人、そして、ハイクラスの “パワーカップル” に限られる。
そもそも公有地の開発物件に対して、投機筋を抑える制限を何らつけなかったことも問われるが、それはひとまず置くとして、低金利、円安という金融環境がTOKYOの一等地の旨味を倍増させたということだ。先日、中国、米国、アジアで幅広く事業を展開する旧知の中国人実業家が筆者を訪ねてきた。彼曰く、「港区やベイエリアは中国人が多くて安心する。白金あたりは日本人にとっての虹橋・古北(上海の日本人居住エリア)のようだ」とのこと。彼にとってのTOKYOは投資対象であり、かつ、ビジネスや生活のリーズナブルな拠点というわけである。
18日、国土交通省は「令和6年版 首都圏白書」を発表、「東京への転入超過が20代でコロナ前の水準を越えるなど首都圏への人口流入が戻りつつある。一方、30代、40代では都内から埼玉、神奈川、千葉、茨城へ転出する傾向もみられ、コロナ前のそれぞれ2倍、4倍となった」という。同レポートは生活意識の変化も指摘する。東京圏在住者の全年齢で “地方移住” に対する関心が高まっており、とりわけ20代では44.8%に達する。とは言え、地方へのハードルは高い。都心の物件に手が届かない子育て世代は近郊4県へ、収入への懸念から若者は東京から出られない。雇用、職種、地域、働き方、資産、生活価値観、、、あらゆる局面で進行する “ギャップ” と “ミスマッチ” がウェルビーイングを遠ざける。
今週の“ひらめき”視点 6.16 – 6.20
代表取締役社長 水越 孝