物流業界の2024年4月の公表M&A件数は11件

2024年4月において公表ベースでのM&A(合併・買収・資本参加)は11件であった。 2023年4月(10件)と昨年比では1件の増加になった。

2024年問題からみる物流・運送業界M&A

4月からトラックドライバーの時間外労働時間上限規制が開始となり、2019年の法改正以降、数年かけて取り組んできた荷主企業との運賃交渉やドライバーの確保、中継拠点の新設など様々な対応の成果を発揮する場面が到来した。

しかしながら、年間数百社の物流企業オーナーとの面談を重ねる中で感じるのは、諦めに似た空気感だ。

トラック運送事業者の大半を占める中小零細企業が労働時間規制、燃料高騰を背景にした経営環境の悪化の中で荷主企業との運賃交渉を重ね、ドライバーが離れないよう賃金アップを図りつつ、利益を確保することは容易ではない。

「事業承継型」から業界再編型・成長戦略へ

多くの協力会社を抱える大手物流企業側の目線としても、自社で運行している車両はもちろんのころ、協力会社に委託している運行の管理まで責任範囲が広がる。同じ責任を負うなら自社車両を増やして自社でできる限り対応することや買収により足回りの強化を検討するという声も多く聞こえてくる。

磐栄ホールディングスのように業容を拡大するための買収を繰り返し、荷主企業側に回る戦略 やオプラスのように大手企業グループの傘下に入りガバナンスや交渉力を備え、一層の成長を図るなどM&Aを活用した成長戦略はさらなる多様化が予想される。

380万社ある中小企業のうち、127万社は後継者不在というデータが表す通り、後継者問題の解決を目的とした事業承継型のM&Aは当面は続いていく。

一方で、自社単独では果たすことのできなかったDX(デジタルトランスフォーメーション)や設備投資、人材育成どの投資を実現するtめい、大手企業グループの参加として経営リソースを集約させ、さらなる企業の成長を目的とした業界再編型のM&Aが今後は物流・運送業界で一層増えていくことだろう。

日本M&Aセンターでは、事業売却をはじめ、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

志賀 俊太 志賀しが 俊太しゅんた

日本M&Aセンター業界再編1部/物流業界専門チーム

1988年生まれ、東京都出身。明治大学政治経済学部卒業後、新卒で大手損害保険会社へ入社。大型トラックディーラーを担当し運送会社、バス会社向けの損害保険営業に従事した後、日本M&Aセンターに入社。現在は物流業界専門のM&Aコンサルタントとして年間300社を超える物流企業のM&A支援を行う。運行管理者資格保有(関東貨物第45840号)。