会社に勤めていた人が亡くなった場合、退職金に関する手続きが必要です。
ここでは、会社、金融機関、共済、それぞれの手続きについて、ご説明いたします。
<退職金関係の相続に関する必要書類>
書類名 | 概要 | 注意点 |
退職手当金等受給者別支払調書 | 勤務先 | 必ずしも交付されるわけではない |
弔慰金、花輪代、葬祭料などの通知書や領収書 | 実質的に退職金に該当するものがないか要確認 | |
(確定給付企業年金・確定拠出年金・企業年金連合会などの場合) 支払通知書 | 生命保険会社、信託銀行、管理運営している基金・機関などから郵送 | ・在職中の死亡の場合:勤務先の担当部署に確認 ・退職後の死亡の場合:取扱機関に確認 |
(小規模企業共済の場合) 支払決定通知書兼振込通知書 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構から郵送 | 個人事業主や小規模企業経営者が該当 |
受取人の通帳 | 入金の確認のため |
退職手当金等受給者別支払調書とは
亡くなった人(被相続人)が会社勤めだった場合、被相続人が受け取るはずだった退職金について、相続財産を受け取る権利がある人(相続人)が代わりに受け取ります。
この場合、相続人が受け取った退職金は、所得税の対象となる財産ではなく、被相続人から引き継いだ財産、つまり相続税の対象となる相続財産となります。
被相続人が亡くなった後、被相続人が勤めていた会社から「退職手当金等受給者別支払調書」が相続人に発行されます。
ここで、この「退職手当金等受給者別支払調書」について説明いたします。
会社員が亡くなった場合、退職手当金をその会社員の相続人が受け取るケースがあります。
このとき、退職手当金を受け取ることが認められた人だけが、「退職手当金等受給者別支払調書」と「退職手当金等受給者別支払調書合計表」を提出しなければなりません。
もし「退職手当金等受給者別支払調書」や「退職手当金等受給者別支払調書合計表」が正しく記載されていなければ、税務署が書類を受理してくれない場合があります。
なお、会社から受け取ったなどには、相続税はかかりません。
ただ、被相続人が業務上での死亡の場合、弔慰金、花輪代、葬祭料などの金額が給与の3年分を超えると、超えた部分の金額に相続税がかかります。
また、被相続人が業務上以外での死亡の場合、給与の半年分を超えると、超えた部分の金額に相続税がかかります。
「退職手当金等受給者別支払調書」の記載方法と提出省略範囲
国税庁のホームページ(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hotei/9/01.htm)では、「退職手当金等受給者別支払調書」の記載方法と提出省略範囲について記載されています。
それによると、「退職手当金等受給者別支払調書」は、退職手当金等の支給を受けた人ごとに作成し、受給者欄にはそれぞれの受給者の名前を記載すること、となっています。
また、この「支払調書」の提出省略範囲の金額基準の判定は、それぞれの受給者ごとに判定することになっています。
受取人が複数いる場合、受給者欄に「代表者○○、他○人」と記載せず、退職手当金を受け取る人ごとに、「支払調書」を作成しなければなりません。
また、提出省略基準の判定も、受給者ごとに判定します。
なお、誰を退職手当金の受取人とするかは、次に掲げる条件に合致している否かで判断します(以下「国税庁のホームページ」より抜粋)。
(1) 退職給与規程その他これに準ずるもの(以下3-25において「退職給与規程等」という。)の定めによりその支給を受ける者が具体的に定められている場合 当該退職給与規程等により支給を受けることとなる者
(2) 退職給与規程等により支給を受ける者が具体的に定められていない場合又は当該被相続人が退職給与規程等の適用を受けない者である場合
イ 相続税の申告書を提出する時又は国税通則法(昭和37年法律第66号。以下「通則法」という。)第24条から第26条までの規定による更正(以下「更正」という。)若しくは決定(以下「決定」という。)をする時までに当該被相続人に係る退職手当金等を現実に取得した者があるとき その取得した者
ロ 相続人全員の協議により当該被相続人に係る退職手当金等の支給を受ける者を定めたとき その定められた者
ハ イ及びロ以外のとき その被相続人に係る相続人の全員
(注) この場合には、各相続人は、当該被相続人に係る退職手当金等を各人均等に取得したものとして取り扱うものとする。
引用元:国税庁 「https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/03.htm」
会社以外での手続き
会社以外の機関から、退職手当金以外の名目で、相続人に支給される金銭があります。
例えば、確定給付企業年金の遺族年金、特定退職金共済の遺族一時金、適格退職年金の遺族一時金、企業年金連合会の死亡一時金、企業型確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)の死亡一時金、小規模企業共済の共済金、中小企業退職金共済の退職金などが、それに該当します。
これらに関する「支払通知書」は、その種類によって取得できる機関、場所が異なります。
例えば、確定給付企業年金・確定拠出年金・企業年金連合会などの「通知書」は、生命保険会社、信託銀行、管理運営している基金・機関などから郵送されます。
もし郵送されない場合は、窓口に問い合わせてみましょう。
なお、在職中に被相続人が亡くなった場合には、勤務先の担当部署に確認し、退職後に被相続人が亡くなった場合には、取り扱い機関に確認しましょう。
また、小規模企業共済の「支払決定通知書兼振込通知書」は、独立行政法人中小企業基盤整備機構から郵送されます。
この小規模企業共済は、基本的に個人事業主や小規模企業経営者が加入するものです。
みなし相続財産とは
今まで説明した死亡退職金は、相続財産とみなされますが、このように被相続人の死亡によって発生した金銭で、相続財産とみなされるものを「みなし相続財産」と呼びます。
「みなし相続財産」には、主に次のようなものが該当します。
・生命保険金・損害保険金
被相続人の死亡によって、相続人が受け取る生命保険金や損害保険金などのいわゆる「死亡保険金」のうち、死亡した本人が保険料を支払っていたものが対象です。
・死亡退職金
会社員が在職中に死亡した場合、通常、その人の支給されるはずだった退職金が遺族、相続人に支給されます。
このように、被相続人の死亡によって受け取ることができる退職金、功労金などで、死亡から3年以内に支給が確定したものについては、みなし相続財産とされます。
・生命保険契約に関する権利
例えば、妻が自分を被保険者とする生命保険に加入し、保険料を夫が負担していた場合、夫が死亡しても保険金は支給されません。
しかし、これとは別に、税法ではこの時点で保険契約の権利、つまり解約返戻金の請求権が、夫から妻へ移転することになります。
このように、相続時に保険事故が起こっていない保険の契約において、保険料を負担していた被相続人とは別の人が保険の契約者であった場合には、契約者はその権利を相続、遺贈によって所得したものとみなされます。
なお、同じく保険事故が起こっていない保険の契約で、被相続人が保険の契約者であり、保険料も同時に負担していたような場合には、本来の相続財産として課税されることになります。
・定期金に関する権利
定期金とは、年金のように定期的に支給されるものを言います。
終身保険などの年金契約も、先程の「生命保険契約に関する権利」と同じような扱いになります。
定期金という場合、まだ給付の事由が発生していない年金契約であり、被相続人が掛け金を負担し、被相続人とは別の人が契約者である場合、契約者は相続・遺贈によって、この契約の権利を取得することになります。
・保証期間付定期金に関する権利
例えば、ある人が保証期間付の個人年金に加入し、自分で保険料も負担して、すでに年金を受給していた場合、もしこの人が保証期間内に死亡したら、残りの期間、遺族、相続人が年金、あるいは一時金を受け取ることができます。
この時、遺族や相続人は、相続または遺贈によって、年金受給権を所得したとみなされ、相続税が課税されることになります。
・遺言によって受けた利益
遺言で借金を免除してもらったり、著しく低い価額で財産の譲渡を受けたりしたような場合には、その経済的利益の相当額を遺贈によって取得したとみなされ、相続税が課税されることになります。
非課税財産
被相続人の死亡に伴い、受け継いだ財産のうち、次に掲げるものは、相続財産とはみなされません。
・墓地・仏壇など
墓地、墓石・仏壇、仏具、神棚などは、一般的な相続財産とは区別して承継され、日常的に礼拝の対象となるものですから、相続財産とはみなされません。
・相続人が取得した保険金のうち一定額
相続によって取得した生命保険金、損害保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」の金額は、相続財産とはみなされません。
・相続人が取得した死亡退職金のうち一定額
相続によって取得した死亡退職金のうち、「500万円×法定相続人の数」の金額は、相続財産とはみなされません。
・公益事業用財産
宗教、慈善、学術など、公益を目的とする事業を行う人が取得した財産で、その公益事業に使用することが確実なものは、相続財産とはみなされません。
・国などに寄附した財産
相続税の期限までに、相続財産を国、地方自治体、特定の公益法人などに寄附した場合、あるいは特定の公益信託の信託財産として支出した場合には、相続財産とはみなされません。
まとめ
被相続人が会社員だった場合、相続人が退職金を「引き継ぐ」ことになります。
慣れない手続きですから、相続人は会社の総務部、人事部に相談しながら、進めていくようにしましょう。
(提供:相続サポートセンター)