クラウドファンディング
(画像=Miriam Doerr Martin Frommherz/Shutterstock.com)

THE OWNERの読者なら「クラウドファンディング」という語を一度は耳にしたことがあるだろう。なかには、すでに活用した経験がある人もいるかもしれない。この特集では、クラウドファンディングの基本的な紹介から、金融市場の構造を大きく変える可能性などについて述べていく。

小規模事業者にとって新たな資金調達の手段に

たとえば、自分が中小企業で新商品の開発と販売の担当者だとする。いま手元にはある新しいアイディアを抱えている。しかし、いかんせん開発費がネックとなってなかなか前に進めない。その一方で、上司からのプレッシャーは日に日に高まるばかりだ。

こんな時、あなたならどうするだろうか。

これと似たような状況に置かれていたのが、食品や雑貨等の輸入販売を手掛けるセブンシーズ・パスタの中西さんである。上司からのプレッシャーがあったかどうかはさておき、仕入れの担当者から「YASHICA」という老舗カメラブランドの復刻版を販売するプロジェクトを聞きつけ、同カメラの日本販売の代理店候補に手を挙げた。

そこで活用したのがクラウドファンディングである。仮に手元に十分な資金があれば、プロジェクトを主導する香港の会社から商品を一定数取り寄せて消費者に販売するという「従来の小売の手法」を取ったはずだ。だが、カメラの価格は1台あたり3~4万円と決して安い金額ではなく、ある程度まとまった数を輸入しようと思えばそれなりの資金が必要となる。さらに大きな在庫を抱えるのは、中小企業にとってはハイリスクだ。中西さんはクラウドファンディングを活用することでそのリスクを減らし、日本での販売にこぎつけたのだ。

これはあくまで一例に過ぎないが、クラウドファンディングは中小企業や個人事業主にとって、従来の銀行融資などにとって代わる可能性を秘める「新たな資金調達」の手段なのである。

クラウドファンディングの仕組みとは?

話が前後したが、クラウドファンディングの基本的な仕組みについて説明しよう。クラウドファンディングは「crowd(群衆)」と「funding(資金調達)」が組み合わさってできた造語である。つまり、インターネットを通して不特定多数から少しずつ資金を調達する手段のことだ。

現在ならSNSを活用することで、個人での資金調達も不可能ではないだろう。とはいえアナウンスの能力が不足していたり、支援者に対する見返りのことであったり、個人でやりとりするシステムを作り上げるのは難しいだろう。したがって、現実的にはクラウドファンディングの事業社を活用するのが一般的と言えるだろう。

目的や内容によって6つのタイプに分けられる

クラウドファンディングは2000年代に米国でサービスが始まり、日本ではMANEO(マネオ)が2008年より開始した「融資型クラウドファンディング」が実質的な国内第一号とされる。東日本大震災が発生した2011年以降、復興支援の1つの手段として寄付型のクラウドファンディングが社会に浸透しはじめた。

その当時の印象から、「クラウドファンディング=寄付」のイメージが先行するかもしれない。しかし、サービスが普及するにつれて利用者やサービスの内容も多様化しており、現状では以下の6タイプに分けられる。

・寄付型
・購入型
・融資型
・株式型
・ファンド型
・ふるさと納税型

寄付型

まずは、クラウドファンディングの認知度の向上に大きく寄与した「寄付型」である。起案者からのプロジェクトに対して、そのプロジェクトを支援したいと感じた人が資金を寄付するタイプだ。投じた資金に対して、商品やサービスなどのリターンは基本的にない。実際には支援された側が感謝の気持ちとして手紙や返礼品などを送るケースもあるが、それは義務ではなく支援側の“感謝の気持ち”としての行為だ。1件あたりの資金の規模は購入型やその他のタイプより小さいものの、件数ベースでは圧倒的に多い。

購入型

文字通り、クラウドファンディングを通して商品やサービスなどを“購入する”タイプである。もともとは、個人や中小企業の新商品や、クリエイターたちの作品購入の手段として活用されていたが、いまでは企業が新商品やサービスを大きな市場に展開する前段階として、試験的に購入型のクラウドファンディングを活用するケースも増えているようだ。

融資型

クラウドファンディングを介して投資家から資金の融資を受けるタイプで、「ソーシャルレンディング」とも呼ばれる。融資をした投資家には、利息がリターンとして分配される。いわゆるファンドなどの金融商品と似たような性質を持つため、取引には貸金業法や金融商品取引法などの法律が適用される。

株式型

企業が発効した株式に対して、クラウドファンディングを通じて投資を行う。投資家にとっては、未公開株への投資を行うための手段となる。第一種少額電子募集取扱業の資格取得や仕組みの整備といったクラウドファンディング事業者側のハードルがあるほか、まだ株式発行の手段としての認知度が低いため、まだ実施された件数は少ない。

ファンド型

融資型が個人や企業全体を融資の対象としているのに対し、ファンド型は企業のある特定の事業に対して投資家が出資を行う。出資した投資家には、その事業の売上に応じた分配金のほか、商品そのものや割引券といった特典が送られるケースもある。

ふるさと納税型

地方自治体が起案したプロジェクトに対し、ふるさと納税の枠組みを活用して寄付を行うのがふるさと納税型だ。プロジェクトの内容にもよるが、支援者は特産品などを受け取れることに加えて、寄付金控除を受けられるメリットがある。

ここまで、クラウドファンディングの基本的な仕組みや種類について説明してきた。次回は、クラウドファンディングが金融市場に大きな変革をもたらす可能性などについて話を進めていきたい。

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