ECサイトを構築・運営する際に気になるのが、費用の相場ではないでしょうか。構築費用は方法によって大きく異なり、運営には送料、広告費、運用費用、保守費用、運営代行費用などのランニングコストがかかります。
本記事では、ECサイトの構築・運営・売却における相場を詳しく解説します。相場感を把握し、戦略的な投資ができれば、ECビジネスの成功に近づけるでしょう。
目次
相場①ECサイトの構築相場
ECサイトの構築相場は、構築方法によって大きく異なります。具体的な相場は以下のとおりです。
・フルスクラッチ:数千万円
・パッケージ:1,500万円〜数億円
・オープンソース:100万〜500万円
・SaaS/ASP:0〜100万円(制作会社に依頼する場合は200〜300万円ほど)
・ECモール(出店):10万円以下
それぞれの特徴として、フルスクラッチは自由度が最も高い代わりに、費用も時間もかかります。パッケージは高機能ですが、導入費用が高額です。オープンソースは自由度が高いものの、カスタマイズに費用がかかります。SaaS/ASPは初期費用が安く、すぐに始められるのが利点です。ECモールは手軽に始められる反面、機能に制限があります。
各構築方法の詳細は、以下の記事で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
相場②ECサイト運営で必要なランニングコストの相場
ECサイトを運営するには、構築費用だけでなくランニングコストも必要です。主なランニングコストは、送料、広告費、運用費用、保守費用、運営代行費用の5つです。送料から順に解説します。
送料の相場
送料の相場は、自社ECサイトとECモールで異なります。自社ECサイトの場合は自由に設定できる一方、ECモールではモールごとに一定のルールが設けられています。
自社ECサイト
自社ECサイトの送料は、以下の3つの基準をもとに設定するのが一般的です。
・競合サイトの送料を参考にする:競合他社の送料設定を調査し、自社の送料を決める際の参考にします。あまりに高い送料設定は購入の障壁となり、逆に安すぎる設定は採算が取れなくなるリスクがあります。
・商品の利益率を考慮する:送料を無料にすると、商品の利益率が下がります。利益率を維持するためには、送料の適切な設定が不可欠です。たとえば、利益率の高い商品は送料を安く設定し、利益率の低い商品は送料を高く設定するなどの工夫が考えられます。
・配送業者の料金体系に合わせる:配送業者の料金体系を把握し、それに合わせて送料を設定します。配送業者の料金が変更された場合は、速やかに送料の見直しが必要です。
送料の設定は、顧客の購買意欲に直結するため、慎重に検討する必要があります。また、2024年問題に代表される物流コストの上昇にも注意が必要です。物流コストの上昇は送料に反映されるため、売上や利益率に大きな影響を与える可能性があります。
詳しくは、以下の記事で解説しているため、ぜひご覧ください。
ECモール
大手ECモールの送料相場は以下のとおりです。
・楽天市場:店舗ごとに送料を設定するため、店舗によって異なります。たとえば、39ショップに申し込んでいる店舗は一律の送料無料ライン(同一注文の購入合計金額が3,980円(税込)以上の場合に、送料が無料になる)など、パターンはさまざまです。
・Amazon.co.jp:出品者のタイプによって配送料や配送条件が異なります。大口出品者は、従量課金制・商品個数制・購入金額制、小口出品者は商品のカテゴリーで配送料が定められています。
・ZOZOTOWN:ZOZOTOWNから購入者に発送するため、自社からZOZOWONへの輸送費が該当します。
このように、ECモールごとに送料体系が異なるため、出店する際は各モールの規定を確認しましょう。送料設定によっては、商品の利益率が大きく変わる可能性があります。自社の利益率を維持しつつ、顧客にとって魅力的な送料設定を考えることをおすすめします。
広告費の相場
次に、ECサイト運営に欠かせない広告費の相場について解説します。広告の種類によって費用相場が異なるため、自社の予算や目的に合わせた選択が重要です。また、広告のROI(投資収益率)を考慮した予算設定も欠かせません。
費用相場
広告種類ごとの費用相場は以下のとおりです。
・リスティング広告:1クリック当たり1円~3000円以下
・ディスプレイ広告:1,000回Imp当たり10円~1000円以下
・Googleショッピング広告:1クリック当たり1円~2000円以下
・リマーケティング広告:1,000回Imp当たり50円~2000円以下
・SNS広告:1クリック当たり1円~3000円以下
・アフィリエイト広告:成果報酬×手数料20~30%
・メルマガ広告:1件当たり10円~100円
各広告の費用は、業種や商材、ターゲット、時期などによって上記の相場から大きく離れることもあります。。自社の商品やサービスに合った広告を選択し、適切な予算を設定する必要があります。費用対効果を見極めながら、コスト効率のよい運用方法やプラットフォームを特定しましょう。
広告費の考え方
広告予算の算出には、売上目標や利益、広告のROIに基づいたアプローチが有効です。
売上目標に基づく予算設定では、目標とする売上に対して一定の割合を広告費として割り当てます。たとえば、月間売上目標が1,000万円で、広告費を売上の5%に設定する場合、広告予算は50万円になります。ただし、この方法では、広告の効果が考慮されていないため、注意が必要です。
LTV(ライフタイムバリュー)を考慮した予算設定では、顧客1人あたりが生涯にわたってもたらす利益を基に算出します。たとえば、1人の顧客が平均3回購入し、1回あたりの利益が2,000円の場合、顧客1人あたりのLTVは6,000円になります。このとき、新規顧客の獲得に必要なコストが1,000円以下であれば、十分なROIが見込めると判断できます。
なお、広告費に対する売上を意味するROASも重要なポイントです。広告による売上÷広告費×100%の計算式で算出し、数値が高ければ高いほど広告の成果が高いと判断できます。
そのほか、広告のCTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)などの指標を考慮することも重要です。自社に適した指標を選び、継続的にデータを分析しながら、広告運用の改善が求められます。
広告の選び方については以下の記事が参考になるため、ぜひご覧ください。
運用費用の相場
ECサイトを運営するには、構築費用や広告費以外にも、運用に必要な費用がかかります。主な運用費用の相場と内訳は以下のとおりです。
・ドメイン代:年間1,000円~10,000円程度
・サーバー費用:月額1,000円~50,000円程度
・SSL証明書:年間数千円~数万円程度
・決済手数料:売上の2%~5%程度
・カートシステム利用料:月額5,000円~100,000円程度
これらの運用費用は、ECサイトの規模や利用するサービスによって大きく変わります。また、運用費用を抑えつつ、セキュリティ対策や機能アップデートなどの保守業務も怠らないよう注意が必要です。
保守費用の相場
ECサイトの保守費用は、サイトの規模や機能の多さによって、月額数万円から数十万円の幅があります。含まれる内容は、セキュリティ対策、バグ修正、機能追加、デザイン変更などです。
自社でECサイトを構築する場合は、保守費用を予算に組み込む必要がありますが、ECモールやASPを利用する場合は、運営会社がメンテナンスするため費用を抑えられます。ただし、出店料や手数料などの費用がかかる点には注意が必要です。
運営代行の相場
ECサイトの運営代行を依頼する場合の料金体系は、大きく分けて月額固定型、成果報酬型、複合型の3つがあります。それぞれの特徴と相場は以下のとおりです。
月額固定型
月額固定型の運営代行は、以下のような相場が一般的です。
・ECサイト運営全体を委託する場合:最低でも月額30万円〜50万円程度
・ページ制作や商品撮影などの実務作業を部分的に委託する場合:月額5万円〜20万円程度
・コンサルティング業務を中心に依頼する場合は:月額5万円〜10万円程度
月額固定型は、予算を固定できるメリットがありますが、売上に関わらず一定の費用がかかるため、売上規模が小さい場合は負担が大きくなるデメリットがあります。
成果報酬型
成果報酬型の運営代行では、以下のような相場が一般的です。
・運営全体を委託する場合:売上の10%〜30%程度
・実務作業を委託する場合:売上の5%〜15%程度
・コンサルティングの費用:売上の5%〜10%程度
成果報酬型は、売上に応じて費用が変動するため、売上が少ない場合は費用を抑えられるメリットがあります。一方で、売上拡大に伴って支払う報酬も増加するため、売上規模によってはコストが膨らむリスクがあります。
複合型
複合型の運営代行は、月額固定型と成果報酬型を組み合わせたもので、以下のような相場が一般的です。
・ECサイト運営全体を委託する場合:月額20万円〜30万円程度の固定費用に加え、売上の5%〜15%を成果報酬を支払うケースが多い
・実務作業を委託する場合:月額5万円〜10万円程度の固定費用に加え、売上の5%〜10%程度の成果報酬を支払うケースが多い
・コンサルティングを受ける場合:月額5万円〜10万円程度の固定費用に加え、売上の3%〜5%程度の成果報酬を支払うケースが多い
複合型は、固定費用で安定した運営と、売上に応じたインセンティブを与えられるため、コストと売上拡大のバランスが取れた契約形態といえます。ただし、固定費用と成果報酬割合の適切な設定が重要です。
運営代行を検討する際は、自社の予算や売上規模、委託内容を踏まえて、最適な契約形態を選択しましょう。また、代行会社の実績や専門性、コミュニケーションの質なども重要な判断基準になります。
相場③ECサイト売却の相場
ECサイトを売却する際の相場は、一般的にサイトの年間営業利益の2〜3倍程度とされています。つまり、年間営業利益が1,000万円のECサイトであれば、売却価格は2,000万円〜3,000万円程度です。ただし、実際の売却価格は、以下のような要因によって大きく変動します。
・サイトの収益性や成長性
・市場の競合状況や将来性
・売却先との交渉力
特に、ECサイトの収益性と成長性は、売却価格を大きく左右する重要な要素です。安定した収益を上げ、今後も成長が見込めるサイトは、高い価格で売却できる可能性があります。
ECサイトの売却価格を算出する代表的な方法は、以下の3つです。
種類 | 内容 |
インカムアプローチ(収益還元法) | ・ECサイトの将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて算出する方法 ・収益力が高く、安定した成長が見込めるサイトの評価に適している |
マーケットアプローチ(類似業種比準法) | ・類似するECサイトの売却事例と比較して価値を評価する方法 ・同業他社のM&A事例や、類似サイトの売却価格を参考にする ・ただし、ECサイトの個別性が高いため、適切な比較対象を見つけるのが難しい場合がある |
コストアプローチ(純資産価値法) | ・ECサイトの資産価値をもとに評価する方法 ・資産の時価から負債を差し引いて算出する ・資産価値が高いサイトの評価に適しているが、収益性を反映しにくいデメリットがある |
ECサイトの売却を検討する際は、自社の事業戦略や目的を明確にし、適切なタイミングで行動することが求められます。売却によって得られるメリットとデメリットを十分に検討し、慎重な意思決定が大切です。
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まとめ
ECサイトの相場は、構築方法によって大きく異なります。運営では、送料、広告費、運用費用、保守費用、運営代行費用などのランニングコストが必要です。
広告費は、売上目標やROIを基に予算を設定し、運営代行は月額固定型、成果報酬型、複合型の3つの契約形態があります。ECサイトの売却相場は、年間営業利益の2〜3倍が目安です。
ECビジネスの成功に向けて、適切な相場感を把握し、戦略的にECサイトを構築・運営しましょう。もし進めるなかで悩みが生じた際は、futureshopにご相談ください。