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(画像=相続サポートセンター)

故人の手許にどのくらいの現金が残っているのかを知るには、通帳などの記録をひとつずつ確認して計算するしかありません。

現金の相続に関する確認書類のチェックリストを見ながら、正確な現金の額を把握しましょう。

理論上は、故人が生前に出金した額から生前に使った額を引けば相続開始時点での現金の額になるはずです。

もし通帳の残高と手許に残っている現金との額に大きな差異がある場合、どこかにタンス預金やへそくりが隠されているかもしれません。

タンス預金も見逃さない、現金の把握の仕方をご紹介します。

現金の相続に関する確認書類のチェックリスト

故人がどのくらいの現金を持っていたのかは、次のような確認書類と照らし合わせて確認します。

書類名取得できる場所取得できる人費用備考
故人の通帳
または
取引履歴
・故人の自宅や貸金庫など。
・通帳がない場合や見つからない場合は取引履歴を用意します。
・相続人
・遺言執行者など
・通帳の場合は0円。
・取引履歴の発行手数料は金融機関ごとに異なります。
相続開始日前後に記帳しておくと便利です。
手許にある現金の金額・故人のお財布
・故人の金庫
など
・相続人
・遺言執行者など
保管場所ごとに金額の一覧表を作ります。通帳の入出金記録と照らし合わせます。
病院や薬局の領収書・故人のお財布
・故人の保険証や診察カード入れの中など
・相続人
・遺言執行者など
・基本的には0円。病院や薬局で支払い時にもらえます。
・再発行には手数料がかかる場合もあります。
・領収書の再発行しない病院等もあります。
・支払日と支払額を確認し、現金や入出金記録と照らし合わせます。
・領収書はあとで医療費控除の申告に使うため、大切に保管しましょう。
葬式やお別れの会などの領収書 ・葬儀会社に支払いをしたときにもらえるため、喪主を務めた人が受け取っていることが多い。(金額を書いたメモでもOK)・喪主
・相続人
・遺言執行者など
・0円。
・失くした場合は葬儀会社に連絡すると、金額を教えてくれます。領収書や明細書などを再発行してくれる場合もあります。
お布施などは領収書をもらえないため、忘れずに金額をメモしておきましょう。
貸金庫内のリスト・貸金庫を借りている金融機関・相続人
・遺言執行者など
・貸金庫内の写真を撮り、物品リストを作ります。
・相続人が複数いる場合は、複数人で立ち会って行うと後々の争いを防ぐことができます。
貸金庫内が空っぽの場合も、写真を撮るなどして相続財産のないことを明らかにしておきます。

貸金庫内が空っぽの場合も、写真を撮るなどして相続財産のないことを明らかにしておく。

「どうせ家の中にある現金なんて10万足らずだろうに、こんなにもたくさんの書類を確認しなくてはいけないのか!」と思ったかもしれません。

たしかに面倒な作業ですが、世の中には金融機関を信用せず、多額の現金を自宅に保管している人もいます。

おこづかい程度の額であれば相続税申告に計上し忘れていても大きな問題にはなりません。

しかし多額の現金が自宅にあるのにそれに気づかずにいた場合、それがタンス預金やへそくりであっても脱税を疑われるおそれがあります。

手間はかかりますが、現金の確認は相続税の申告の準備にもなります。

相続人同士で協力して、正確な現金の額を把握しましょう。

現金の把握の仕方

故人の残した現金を把握する際には、気を付けるべきポイントがあります。

少額の場合と多額の場合にわけて、現金の把握の仕方を詳しくみていきましょう。

少額の場合

一般的な家庭の場合、故人が手許に残した現金は少額かと思います。

防犯上の観点から、多くの人は銀行などに預貯金をし、現金は必要な分だけ自宅に保管します。

そのため、一般的な家庭であれば、故人のお財布の中の現金を確認すればそれでよいでしょう。

ただ、死期が迫ったことに気付いた故人が葬式や医療費の支払いのため、生前に多額の現金を通帳から下ろしているケースがあります。

なかには、故人ではなくて家族が支払いに備えて現金を引き出していることもあります。

どのような理由であれ、生前に引き出した金額すべてを使い切っていれば相続対象の現金にはなりません。

しかし残った現金は相続開始時に手許にあったわけですから、現金残高に含める必要があります。

多額の場合

金融機関が信用できない、あるいはマイナンバー制度の導入を背景として、多額の現金を自宅や貸金庫に保管している人が増えています。

どこで現金を保管するにしても、もとは通帳から引き出したお金のはずです。

故人の入出金記録を確認すれば、現金がどのくらい残されているかがわかります。

過去6年分程度の入出金記録をチェックすれば安心です。

故人が貸金庫を借りていた場合は、必ず貸金庫内を確認しましょう。

中身がないとわかっていても、写真を撮るなどして金庫内に財産がないことを明らかにしておくべきです。

現金の把握の仕方の例

具体例で現金の把握の仕方をみておきましょう。

下記は令和元年9月15日に亡くなったAさんの通帳です。

この通帳から、Aさんの出金状況を確認していきましょう。

日付金額備考
R1.5~820万円×4カ月=80万円毎月の生活費として20万円ずつ引き出し。
2019/09/0110万円Aさん、急な容態の悪化により入院。入院の費用として引き出し。
2019/09/1020万円Aさん、さらに容態が悪化。かさむ医療費に備え、娘さんに現金の引き出しを依頼。
2019/09/11100万円Aさん、さらに容態が悪化。葬式代の足しにと、娘さんに現金の引き出しを依頼。

生前の引き出し額は合計で130万円です。

次に、現金の使用状況を整理しましょう。

日付金額備考
R1.5~820万円×4カ月=80万円毎月の生活費として20万円ずつ使用。
2019/09/16100万円葬儀会社に葬式代として支払い。
2019/09/1710万円病院に医療費として支払い。

Aさんが亡くなった令和元年9月15日時点では、手許に130万円ありました。

死後に合計110万円を支払っていますが、相続開始時点である15日にあった130万円万円は現金残高に含めなくてはいけません。

まとめ

故人の現金も相続税の対象になる財産です。

通帳などの入出金記録と照らし合わせて、故人がどのくらいの現金を手許に残しているのかを確認しましょう。

故人が生前に出金した額-生前に使った額=相続開始時点での現金の額になるはずです。

多額のタンス預金やへそくりを見逃してしまうと脱税の疑いをかけられるおそれがあります。
(提供:相続サポートセンター