ECサイトのメリットを理解し、自社に合ったECサイトを導入したいと考えている店舗オーナーは増加傾向にあります。しかし、ECサイトには自社型とモール型の2種類があり、どちらが自社に適しているか迷っている方も多いでしょう。実は、自社の目的や規模、リソースによって最適な選択は異なります。
この記事では、ECサイトで得られる6つのメリットを解説します。さらに、自社型とモール型のメリット・デメリットを比較し、どちらが自社に合っているのかまで紹介します。
この記事を読めば、自社に最適なECサイトを構築するための知識が身につき、ECビジネスの成功への一歩を踏み出せるでしょう。是非最後までご一読ください。
目次
ECサイトは2種類
ECサイトを立ち上げる方法には、大きく分けて2つの種類があります。一つは自社でECサイトを構築する「独自ドメイン型ECサイト自社型ECサイト」、もう一つは楽天市場やAmazonなどのECモールに出店する「モール型ECサイト」です。
それぞれの特徴を理解したうえで、自社のビジネスに適した選択が成功の鍵を握ります。
独自ドメイン型自社型ECサイト
独自ドメイン自社型ECサイトは、サーバーやドメインを自社で取得し、ECサイトを一から構築する方法です。最大のメリットは、サイトのデザインや機能を自由にカスタマイズできる点です。
自社のブランドイメージに合わせたオリジナリティのあるサイトが作れるため、ブランディングに適しています。また、顧客データを自社で管理できるため、マーケティングに活用しやすいメリットもあります。
一方で、独自ドメイン型自社型ECサイトは、集客の難易度が高い点がデメリットです。サイトの認知度を高めるためには、SEOや広告運用など、集客のための施策に注力する必要があります。
また、サイトの構築や運用、セキュリティ対策など、対応すべき範囲が広いため、社内にWebエンジニアやデザイナー、マーケターなどの人材を確保しなければデメリットの克服は難しいでしょう。
モール型ECサイト
モール型ECサイトは、楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonなどの大手ECモールに出店する方法です。ECモールは、すでに多くの顧客を抱えているため、出店することで、そのモールの集客力を活用できるのが最大のメリットです。
特に、ECビジネス初心者にとっては、集客の手間を省けるため、参入のしやすさは自社ECサイトにない利点といえます。
ただし、モール型ECサイトは、デザインの自由度の低さがデメリットです。出店者は、モールのガイドラインに沿ったデザインを採用する必要があるため、自社のブランドイメージを十分に反映できない可能性があります。
また、出店料や販売手数料など、月額で一定の使用料がかかるため、コスト面での負担も大きくなります。予算と実態の差が生じないように、モニタリングは欠かせません。
以上のように、自社型ECサイトとモール型ECサイトには、それぞれ一長一短があります。自社のビジネス規模やターゲット顧客、商品の特性などを総合的に考慮したうえで、適切な方式を選択することが求められます。
自社ECサイトの立ち上げで得られる6つのメリット
自社ECサイトの立ち上げにより、実店舗とは異なるさまざまメリットがもたらされます。ここでは、具体的な6つのメリットについて詳しく解説していきます。
実店舗では難しい顧客層へのリーチができる
自社ECサイトを立ち上げることで、地理的な制約を超えて幅広い顧客層へのアプローチが可能となります。インターネットを通じて、国内はもちろん、世界中の潜在的な顧客にリーチできるのが大きな利点です。
たとえば、地方の小さな店舗では集客に限界がありますが、ECサイトであれば全国各地の顧客を獲得できる可能性が広がります。また、実店舗では来店が難しい高齢者や子育て中の主婦、遠方に住む人々なども、ECサイトなら簡単にアクセスできます。
このように、ECサイトを通じて実店舗だけでは獲得が難しかった顧客層を取り込むことで、ビジネスの成長を加速させられます。
時間・曜日の制限がない
ECサイトは、時間や曜日に関わらず24時間365日いつでも利用可能であることが大きなメリットです。顧客は自身の都合に合わせて、好きなタイミングでショッピングを楽しめます。平日は仕事で忙しく、休日も家族との時間を優先したい人にとって、ECサイトの利便性は非常に高いといえます。
また、実店舗の営業時間内に来店できない顧客も、ECサイトなら時間を気にせず購入できるため、売上機会の拡大につながります。
さらに、海外の顧客を獲得する際にも、時差の影響を受けずに対応できるのがECサイトならではの強みです。このように、時間と曜日の制限がないことで、ビジネスの可能性が大きく広がります。
最適なマーケティング施策ができる
ECサイトでは、顧客の購買履歴や行動データの収集・分析が容易に行えるため、マーケティング施策の最適化に役立てられます。
たとえば、顧客がどのような商品を閲覧・購入したのか、どのページで離脱したのかなどを詳細に分析することで、顧客のニーズや嗜好を深く理解できます。
そして、そのデータを基にパーソナライズされたおすすめ商品の提示やメールマガジンの配信、適切なタイミングでのクーポン発行など、一人ひとりに合わせたアプローチが可能となります。
さらに、データから得られた気づきを商品開発や品揃えの改善に活かすことで、顧客満足度の向上とビジネスの成長を実現できます。
低コストで運用できる
自社ECサイトは、実店舗と比べて運営コストを大幅に抑えられることが大きなメリットです。店舗の家賃や人件費、光熱費などの固定費が発生しないため、初期投資を最小限に抑えられます。また、在庫管理の効率化も図れます。
さらに、受注処理や顧客対応の自動化によって人的コストも抑えられるため、総合的にみてECサイトは低コストでの運用が実現可能です。コスト面での優位性を活かし、ビジネスを効率的に展開していけるでしょう。
Webならではのサービスが提供できる
ECサイトから、Webならではの多彩なサービスを顧客に提供できます。たとえば、サイトやメールマガジンを活用したキャンペーンの告知や、期間限定のクーポン発行など、さまざまな販促施策を自由に展開できます。
また、AIを活用したレコメンデーション機能により、顧客一人ひとりの好みに合わせておすすめ商品を提示することで、購買意欲を高められます。
加えて、商品のバーチャル試着や、AR(拡張現実)を用いた商品体験など、実店舗では実現が難しい没入感のあるサービスも提供可能です。こうしたWebならではの工夫を凝らすことで、顧客エンゲージメントを高め、ビジネスの差別化が図れます。
ブランドイメージを効果的に発信できる
自社ECサイトは、ブランドイメージを効果的に発信するための有力なツールとなります。サイトのデザインやコンテンツ、写真や動画などを通じて、自社の世界観や価値観を存分にアピールできます。
たとえば、ブランドストーリーを動画で紹介したり、商品の魅力を引き立てる美しい写真を掲載したりすることで、ブランドへの共感を呼び起こせます。
また、ブログやSNSの連携で、より多くの人々にブランドメッセージを届けることも可能です。こうした取り組みを通じて、ブランド認知度の向上と顧客からの信頼獲得を実現できるでしょう。
自社の強みや個性を存分に発揮できるECサイトは、ブランディングに欠かせない存在といえます。
ECモールへの出店で得られる3つのメリット
ECモール出店は、自社ECサイトとは異なる魅力があります。ここでは、ECモール出店で得られる3つの主要なメリットについて解説します。
一定の集客が見込める
自社ECサイトを立ち上げたばかりの場合、特に開設当初は集客に苦戦することが少なくありません。一方、楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングといった大手ECモールは、それ自体の知名度が非常に高く、Web上での集客力も抜群です。
これらのECモールに出店することで、自社の商品を多くの潜在的な顧客にアピールできます。ECモールの集客力を活かすことで、自社ECサイトよりも早期に一定の売上が見込めるでしょう。
また、ECモールの販促施策やセールイベントに参加することで、さらなる集客効果も期待できます。
初心者でも始めやすい
自社ECサイトの構築には、多岐にわたる準備が必要です。具体的には、サイトの設計・開発をはじめ、ブランディング、決済システムの導入、物流網の確保など、すべて自前で調達しなければなりません。
こうした作業には専門的な知識とスキルが求められるため、ECビジネス初心者にとってはハードルが高いと感じるかもしれません。
一方、ECモールの場合は、出店に必要な機能がプラットフォーム上ですでに用意されています。そのため、専門知識が乏しい初心者の方でも比較的容易に着手できます。ECモールが提供するテンプレートを活用することで、商品ページの作成も簡単に進められるでしょう。
運営に際してサポートを利用できる
ECモールには、出店や出品した企業をサポートするための様々なサービスが用意されている場合があります。
たとえば、広告の出稿や販促企画の立案、商品ページの最適化などに関するコンサルティングサービスの利用が可能です。また、受注処理や在庫管理、配送手配といったEC運営業務を効率化するためのオプションも提供されているため、業務の負担を大幅に軽減できます。
さらに、ECモール主催のセミナーやワークショップに参加すれば、商品の販促施策の実施方法や集客力向上のノウハウを学べます。利用できるサポートを上手に活用して、ECビジネスの運営を円滑に進めましょう。
自社ECサイトの立ち上げ前に知っておくべき3つのデメリット
自社ECサイトの立ち上げには、さまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在します。ECサイトを運営する前に、これからお伝えするデメリットを十分に理解し、自社のビジネスにとって許容できる内容かどうかの見極めが必要です。
ここでは、自社ECサイトの立ち上げ前に知っておくべき3つの主要なデメリットについて解説します。
集客が難しい
自社ECサイトの最大の課題の一つが、集客の難しさです。特に開設当初は、サイトの知名度が低いため、多くのユーザーを獲得するのは容易ではありません。
課題を解決するためには、SEO(検索エンジン最適化)や広告運用など、集客に力を入れたマーケティング活動が必要です。
具体的には、キーワードの最適化やコンテンツマーケティング、SNS広告の活用などが有効です。また、インフルエンサーとのタイアップや、ブログやメディアへの記事広告の掲載なども検討すべきでしょう。
こうした地道な取り組みの継続により、徐々に集客力は高められます。ただし、これらのマーケティング活動には一定のコストと時間が必要であることを認識しておく必要があります。
商品の説明や品質の伝達が難しい
ECサイトでは、顧客が実際に商品を手に取って確認ができないため、商品の質感や使用感を伝えるのが難しい点がデメリットです。
デメリットを克服するためには、詳細な商品説明や高品質な画像、動画などを用いて、商品の魅力を効果的に伝える工夫が求められます。
たとえば、商品の素材や仕様、サイズ感などを分かりやすく説明したり、様々な角度からの画像を掲載したりすることで、顧客の理解を深められるでしょう。
また、商品の使用シーンを想定した動画を用意すれば、商品の価値をより具体的に伝えられます。加えて、レビューの積極的な収集・掲載により、実際の使用感についての情報を提供するのも効果的です。
こうした工夫を重ねることで、ECサイト上での商品の説明や品質の伝達力向上が重要です。
なお、商品画像について詳しくは、以下の記事で解説しているためあわせてご覧ください。
Webの知識が必要
自社ECサイトを運営するためには、ある程度のWeb関連の知識が必要となります。サイトの構築や管理、セキュリティ対策など、技術的な側面への対応が求められるためです。
また、商品ページの作成において、魅力的な写真や動画の編集スキルも必要でしょう。こうした知識やスキルが社内に十分にない場合は、外部のWeb制作会社やフリーランスのデザイナーに依頼して補填しなければなりません。
ただし、その際はコストを念頭に置いて予算の確保が必要です。さらに、ECサイトの運営には、UI/UXやオムニチャネル戦略など、Webならではの考え方も求められます。
このように、自社ECサイトの運営には、Webに関する知識と経験が不可欠な点の事前認識が大切です。
ECモールへの出店で気をつけたい3つのデメリット
ECモールは利便性が高く、多くの企業にとって魅力的な販売チャネルですが、デメリットも存在します。ECモールへの出店や運用を検討する際は、これからお伝えするデメリットを把握したうえで、適切な対策が必要です。
ここでは、ECモールへの出店で気をつけたい3つの主要なデメリットについて解説します。
ランニングコストが高い
ECモールへの出店には、さまざまなコストがかかります。特に出店料や月額のシステム利用料、販売手数料などが設定されているため、これらのランニングコストが高くなる傾向にあります。
販売手数料は売上の数%から10%以上に設定されているケースもあり、利益率への影響の大きさは見過ごせるものではありません。
将来的には、自社ECサイトの運営への切り替えや、ECモールとの併用などを検討し、コスト構造の最適化を図ることが重要です。
ブランディングがしにくい
ECモールでは、出店者はモールのガイドラインやデザインに準拠しなければならないため、自社のブランドイメージを自由に演出するのは難しいものがあります。
また、ユーザーはECモール自体のブランドを強く認識する傾向にあり、個々の出店者のブランドは認識しにくいデメリットもあります。
デメリットを克服するには、商品ページやショップページの内容を工夫し、自社のブランドイメージの効果的な訴求が重要です。
具体的には、ブランドストーリーを伝えるコンテンツを充実させたり、ブランドロゴやカラーを適切に配置したりするなどの取り組みが有効でしょう。
また、商品パッケージやお客様とのコミュニケーションにおいても、ブランドイメージを一貫して発信する工夫が求められます。
競合他社との価格競争に巻き込まれる可能性が高い
ECモールでは、同じカテゴリーの商品を販売する競合他社が多数存在するため、価格比較が容易です。そのため、価格競争に巻き込まれやすいデメリットへの対応が求められます。
対策案として、仕入れ価格の見直しや、商品の差別化、付加価値の提供などが挙げられます。ただし、過度な価格競争は利益率の低下を招くため、短期と中長期での視点での十分な検討が必要です。
難しいなかでもブランディングを通じて商品の差別化を図り、コモディティ化を避ける運用が重要になるでしょう。また、実店舗と異なり、ECモールではエリアを選べないため、地域特性を活かしたマーケティングが難しい点にも留意が必要です。
自社に合ったECサイトの判断方法
ECサイトを立ち上げる際、自社型を選ぶべきか、モール型を選ぶべきかは、単純に二者択一で決められる問題ではありません。自社がECサイトで何を目指すのかを明確にしたうえで、それぞれの方式のメリットとデメリットを踏まえ、自社のビジネスに合った方法の選択が重要です。
それぞれのメリットとデメリットを整理すると、下表のようになります。
種類 | メリット | デメリット |
自社ECサイト | ・デザインの自由度が高い ・ブランディングに適している ・顧客データを自社で管理できるため、マーケティングに活用しやすい |
・集客の難易度が高い ・社内リソースの確保が必要 |
ECモール | ・集客力が高い ・初期の顧客獲得が比較的容易 ・ECビジネス初心者や小規模企業が参入しやすい |
・デザインの自由度が低い ・ブランディングがしにくい ・ランニングコストの負担が大きい ・価格競争に巻き込まれやすい |
自社に合ったECサイトを判断するには、以下の要因を総合的に検討する必要があります。
・自社の規模やリソース
・ブランド戦略
・商品の特性
・物流やカスタマーサポートなどの対応能力
また、自社型とモール型は必ずしも二者択一ではなく、併用によってそれぞれのメリットを活かしつつ、デメリットの補填も可能です。
ECサイトの選択には正解がないため、自社の状況に合わせて柔軟に判断することが重要です。詳しい選択基準については、以下の記事を参考にしてください。
ECサイトの立ち上げ方法
ECサイトを立ち上げるには、複数のステップを踏む必要があります。ここでは、ECサイトの立ち上げ方法について事前準備とシステムの選び方に分けて解説します。
まず事前準備として以下の手順が必要です。
手順 | 内容 |
事前計画の策定 | 商品、ターゲット、価格設定などの基本方針を定める |
販売商品の調達・在庫管理方法の検討 | 商品の仕入先、在庫管理の方法を決める |
配送方法の検討 | 配送業者の選定、配送料の設定など |
サイトの構築 | ・自社ECサイトの場合は、デザインや機能を決めて制作会社に依頼または自社で開発 ・ECモールの場合は出店手順にそって必要情報を登録 |
テスト | 実際に商品を購入して、決済、配送、カスタマーサポートなどの機能に問題がないかを確認 |
オープン | テスト内容に問題がなければ、正式にオープン 継続的な集客施策と改善までのサイクルが必要 |
続いてシステムの選び方として、以下4つの観点が重要です。
観点 | 内容 |
コスト | ・初期費用とランニングコストの両面から検討 ・自社ECサイトは初期費用が高くランニングコストは低い傾向 ・ECモールは逆に初期費用が低くランニングコストは高い傾向 |
機能 | ・自社のビジネスに必要な機能が備わっているかを確認 ・商品検索、レビュー、クーポンなどのユーザー向け機能と、受注処理、在庫管理、会員管理などの運営向け機能の確認が重要 |
セキュリティ | ・SSL暗号化などの個人情報保護対策 ・不正アクセスやDDos攻撃などのサイバー攻撃対策が必要 |
カスタマーサポート | ・システムの不具合やトラブル発生時に迅速に対応してくれるサポート体制が重要 ・自社ECサイトの場合は自社での対応が必要 |
より詳しいECサイトの構築方法については、以下の記事で解説しているため、あわせてご覧ください。
まとめ
ECサイトの種類には自社型とモール型の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。自社型は自由度が高くブランディングに適していますが、集客が難しく社内リソースが必要です。
一方、モール型は集客が容易ですが、デザインの自由度が低くコストがかかります。自社に合ったECサイトを選ぶには、自社の目的や規模、リソースなどを総合的に検討する必要があります。
ECサイトの立ち上げには、事業計画の策定、サイトの構築、テストなどの手順が必要です。また、システム選びではコスト、機能、セキュリティ、サポートの観点が重要となります。
適切な準備と判断で、自社に最適なECサイトを構築し、ビジネスの成長につなげましょう。