全2回にわたり、東京都中小企業振興公社の「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」について解説していきます。
本事業は、事業再構築補助金と同等の補助(公社では「助成」と表現しますが、ここではあえて「補助」と記載します)上限額、現在公募が待たれている事業再構築補助金よりも長い補助事業実施期間が設定されています。
東京都内の事業者様で、大きな設備投資を検討されている事業者様は必見の事業となります。
1.事業目的
本事業は、変化・変革に正面から向き合い、先端技術を活用して持続的発展を目指す中小企業者等が、更なる発展に向けた競争力の強化、デジタルトランスフォーメーションの推進、都市課題の解決に貢献し、国内外において市場の拡大が期待される産業分野におけるイノベーションの推進、後継者による新たな取組みに必要となる機械設備等を新たに導入するための経費の一部を助成します。
これにより、都内中小企業の自ら稼ぐ力を強化し、新たな事業展開やイノベーションの創出を促し、「稼ぐ東京」を実現することを目的としています。
つまりは、もっと成長を目指す中小企業者へ、設備投資の後押しを行うことで、東京都の経済の発展に貢献してもらいたい、といった目的があります。
どの補助金にも共通するところですが、補助金を活用するにあたって、その補助金の目的を確認することは必要不可欠です。
今回の事業でいえば、「稼ぐ東京」、これがキーワードになります。
2.申請資格の要件
東京都内に登記簿上の本店または支店があり、都内で2年以上事業を継続している中小企業者等
※ただし、設備を都外設置の場合は東京都内に本店があること
提出書類として「工場設置認可書」が求められますので、法規上の書類の整備をしておくことをおすすめします。
また、本社が都内、工場が都外で、都外にある工場に設備を設置する場合にも、本事業の対象となるところは注目です。
3.申請枠
全部で4つの枠(事業区分)があり、それぞれの補助率や補助上限額等は以下のとおりです。
①競争力・ゼロエミッション強化/賃上げ促進
最も申請しやすい枠です。他の枠の方が申請しやすい時は他の枠で申請しますが、基本的にはこちらの枠での申請を検討をおすすめします。
量産体制の構築、安定供給体制の確立、一貫加工の実現、短納期への対応、コストダウンなど、非常に幅が広いのが特徴です。もの補助のように革新的な製品開発や生産プロセスの開発、事業再構築補助金のような新規事業の立ち上げといったことも求められず、もう少し緩い要件で申請の土俵に乗せることができます。
ただ単に新しい設備を導入したい、なんてことはないと思います。設備投資をするにあたって、短納期への対応、加工精度の向上、コストダウンといった、何かしらの目的があるはずで、設備投資を考えている事業者様、特に製造業の方はほとんどこの枠で申請することが叶うでしょう。
基本の競争力強化にオプションで、ゼロエミッション強化、または賃上げ促進のどちらか一つを付けることができます。
このオプションを付けることで、補助率と補助上限額が変化します。
例えば、中小企業(常用従業員数が21人以上)の場合ですと、オプションを付けないと補助率1/2ですが、ゼロエミ強化を付与することで一気に3/4まで上がります。賃上げの場合も同じく3/4まで引き上がります。
ゼロエミ強化は、省エネや資源リサイクルといった環境への配慮を企業としてどこまで取り組むのか、その取り組み度合いによって、ゼロエミ強化として認められるか否かが決まってきます。
例えば、工場の照明をLEDに変えた、営業車をハイブリッド車にしている、電力デマンドで電気量を管理している、などです。
もちろん、今回の設備導入でどのように省エネにつながるのかも審査されます。
ゼロエミ要件を満たせば3/4、満たさない場合は2/3に補助率が変わります。
一方で賃上げ促進については、以下2つの要件を満たす必要があります。
1:直近決算期と比較して、1年間給与支給総額を1.5%以上増加させること
2:事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を1年間地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
これらを満たすことで、補助率が3/4となります。
以上のように、ゼロエミ、賃上げのいずれかのオプションを付けることで、補助率や補助上限額が変わります。ゼロエミ要件が審査の結果否認されたとしても、補助率は中小企業も小規模事業者も2/3となるため、基本的にはオプションを付けることをおすすめします。
②DX推進
IoTやAI、ロボット等のデジタル技術を活用した事業であれば、こちらの枠の検討を行います。
申請にあたっては、以下の3つの中から1つ選ぶ必要があります。
1:IoT・AI活用
2:ロボット
3:その他
事業例としては、機械制御の自動化・省力化、生産設備の稼働状況把握、受発注の効率化、生産ラインの最適化などがあります。
第7回から、ゼロエミ要件・賃上げ要件をDX推進にも付加することができるようになりました。
③イノベーション
あらかじめ掲げられている9つの産業分野に関する製品について、新事業活動を行うために必要となる機械設備を新たに導入する事業の場合に使える枠です。
新事業活動は以下4つの取組みに該当する必要があります。
1:新商品の生産
2:新役務の提供
3:商品の新たな生産又は販売の方式の導入
4:役務の新たな提供の方式の導入、その他の新たな事業活動
第7回から、ゼロエミ要件・賃上げ要件をイノベーションにも付加することができるようになりました。
④後継者チャレンジ
事業承継を行った事業者、又は行う予定の事業者が対象者となります。
後継者が中心となって、事業多角化や新たな経営課題への取組みに必要となる機械設備を新たに導入する事業であれば、こちらの枠を使うことができます。
例えば、事業転換に向けた新商品の生産、新事業分野への参入等が挙げられます。
第7回から、ゼロエミ要件・賃上げ要件を後継者チャレンジにも付加することができるようになりました。
4.補助事業実施期間
交付決定日の翌月1日から1年6ヶ月
これまでのものづくり補助金は交付決定日から10か月(第17回、第18回は交付決定日から2024年12月10日まで)、これまでの事業再構築補助金であれば交付決定日から14か月でした。これを考えると、本事業の実施期間の長さがわかります。
第1回はここまでで、次回は対象経費や審査項目などについて解説します。
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