終わりに

売り手、買い手それぞれのポイントを端的にまとめると以下の通りです。

譲渡側(売り手)にとってのポイント

  • 株式譲渡は譲渡対象企業の法人格が維持され、会社自体がそのままの状態で残るため、 対象企業への影響が比較的少ない 手法である。

  • 譲渡対象企業の株主が個人の場合は、所得税(復興特別所得税を含む)、住民税合わせて20.315%の固定税率で分離課税となるため、 株主の手取りを最大化できる ケースが多い。

譲受け側(買い手)にとってのポイント
  • 株式譲渡では、基本的に従業員との雇用関係や、取引先との契約関係など社内外の利害関係者との法的な関係や、取得している許認可に影響が及ぶことがなく 比較的スムーズなM&A実行が可能 である。(ただし、チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項が付与された契約の場合は、譲渡企業が第三者と締結している契約内容に一定の制限がかかる場合があるので注意が必要になる。)

  • 譲渡企業の保有資産のうち不要なもの(非事業用資産)があったとしても、事前に整理などを行わない限りはそのまま引き継ぐこととなる。その他、 簿外債務などのリスクも引き継ぐ ことになる点も留意が必要である。
  • 以上、中堅・中小企業の株式譲渡について解説しました。株式譲渡は、M&Aの中でも比較的簡単かつ短期間でできる手法です。しかし、企業価値評価の方法や必要書類、手続きのプロセス、税金など、事前に押さえておくべき情報は多岐にわたります。加えて中小企業の多くは、株式譲渡制限会社(非公開会社)でもあるため、株式譲渡の承認請求など注意点も少なくありません。

    十分な準備を行ったうえで株式譲渡を滞りなく進めるためには、経験豊富なM&A仲介会社・税理士などの専門家に協力を求めることが大切です。

    日本M&Aセンターは株式譲渡をはじめ、様々なスキームのM&Aを経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお尋ねください。

    監修者

    谷本 信之 谷本たにもと 信之のぶゆき

    日本M&Aセンター 品質本部/コーポレートアドバイザー1部 /税理士

    KPMG税理士法人、掛川会計事務所を経て、日本M&Aセンターに入社。法人・個人を問わない幅広い税務の経験を活かし、事業譲渡や組織再編など様々なスキーム構築で成約に貢献している。M&A実務の研修活動を社内外でも実施。