DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)

目次

  1. 2020年2つの信用金庫が合併して誕生 備前焼の里・備前市伊部に本店を構える
  2. 地元出身の現役メジャーリーガーの誕生に本店で懸垂幕を掲げて祝福
  3. 合併を機に、地域応援課と経営コンサルティング室を新設 企業の経営力強化を通じた地域活性化を目指す
  4. 地域の魅力を情報発信する公式YouTubeチャンネルを開設 職員自らが撮影、編集を担当
  5. 動画の制作を通じて合併後の融和が促進する効果も生まれた
  6. 支店長会議のオンライン化で1回あたり約13時間を捻出 導入にはIT補助金を活用 取得ノウハウが融資先IT補助金活用に役立つ
  7. 本支店間の打ち合わせや研修でもWeb会議システムを機動的に活用 オンライン一辺倒ではなく対面会議とのバランスも図る
  8. スマートフォンからアクセスできるアプリバンキングを導入して預金者の利便性を向上
中小企業応援サイト 編集部
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岡山県南東部を中心に、地域に根差した金融機関として活動する備前日生信用金庫が、地域の情報発信、内部の業務効率化、預金者向けサービスの向上などで多角的にICTとデジタル機器を活用している。融資先企業へのDX推奨にも力を入れている。その背景には新しい技術を積極的に活用することで地域経済を活性化したいという熱い思いがある。(TOP写真: Web会議システムを活用することで移動に費やしていた時間を有効活用している)

2020年2つの信用金庫が合併して誕生 備前焼の里・備前市伊部に本店を構える

DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)
備前焼の窯元や店舗が集まる備前市伊部の町並み

備前日生信用金庫は、岡山県南東部の備前焼の里として知られる備前市伊部(いんべ)に本店を置き、同県全域と兵庫県赤穂市、相生市、赤穂郡上郡町を事業区域にしている。2020年2月、備前信用金庫と日生信用金庫が合併して発足した。本店以外に16の支店を構える。

DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)
中川正典事務部長兼マネー・ローンダリング対策室長

「発足してからの2年間は、店舗統廃合やコスト削減を重点課題として取り組んできました。合併することによって財務基盤と営業体制の強化など様々な効果が生まれ、地域の企業に寄り添う姿勢をこれまで以上に打ち出せるようになりました。融資先企業のDX推進に関する支援も積極的に行っていきたいと考えています」。備前焼の窯元や店舗が集まる備前市伊部地区。その中心部に立地する備前日生信用金庫の本店で取材に応じた中川正典事務部長兼マネー・ローンダリング対策室長は信用金庫の取り組みについてこのように話した。

DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)
石井孝総合企画部経営企画課長

石井孝総合企画部経営企画課長は「相談して良かったと思っていただけるように課題解決への提案力を強化していきたい。お役に立つことができれば、これに勝る喜びはありません。地域になくてはならない小さくとも強い信用金庫を目指していきたい」と力強く語った。

地元出身の現役メジャーリーガーの誕生に本店で懸垂幕を掲げて祝福

DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)
備前市伊部の中心部に立地する備前日生信用金庫の本店

備前市はロサンゼルス・ドジャースに入団が決まった元オリックス・バファローズの山本由伸投手の出身地。地元出身の現役メジャーリーガーの誕生に信用金庫本店でも祝福の懸垂幕を掲げるなど地元は盛り上がっている。「山本投手の出身地ということで大きな注目が集まっているのはうれしいですね。雰囲気が明るくなることで経済効果も期待できそうです」と中川部長は柔らかく微笑んだ。

合併を機に、地域応援課と経営コンサルティング室を新設 企業の経営力強化を通じた地域活性化を目指す

備前日生信用金庫は合併を機に、企業の経営力強化を通じた地域活性化を目指して、地域応援課と経営コンサルティング室を新設した。その他にも様々な取り組みを行っている。2021年2月には、瀬戸内市の観光名所で日本のエーゲ海と呼ばれる牛窓地区の活性化を目的にしたファンドを民間都市開発推進機構(MINTO機構)と共同で組成した。人材育成策として中小企業を支援する公的機関、岡山県産業振興財団に職員を出向する取り組みも行っている。

DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)
島本大輝営業統括部営業推進課長代理

島本大輝営業統括部営業推進課長代理は、公益財団法人岡山県産業振興財団で2年間の勤務を通じて、補助金関連の事業計画書の確認、販路開拓、創業支援についてのノウハウを学ぶことができたという。営業推進課では現在、ICTやデジタル機器の活用を融資先に推奨し、専門知識を持った企業を紹介している。DXと親和性が高いSDGsの取り組みについての相談にも応じている。「多くのお客様が人手不足に悩んでいますが、DXを進めてプロセスの効率化を図れば人手不足をカバーすることができます。在庫管理のシステムを導入してデータ分析を行い、利益率の向上を実現したお客様もおられます。多くの実例を通じて経営課題の解決にICTとデジタル機器は効果が高いことを実感しています」と島本課長代理は話した。

地域の魅力を情報発信する公式YouTubeチャンネルを開設 職員自らが撮影、編集を担当

DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)
ホームページから公式YouTubeチャンネルにアクセスできるようにしている

備前日生信用金庫は、地域の企業を支援するためにICTを積極的に活用している。2021年3月には地域応援課が「地域応援プロジェクト」を立ち上げ、地域の魅力を情報発信する公式YouTubeチャンネルを開設した。信用金庫の職員自らが取材、編集を手掛ける全国でも希少なYouTubeチャンネルだ。

地域の飲食店、旅館、民宿などを職員が訪問。それぞれの料理やサービス、瀬戸内海の美しい景色を撮影し、数分の動画に編集した上で配信している。これまでに様々な店舗のほか、毎年10月に開催し、全国から陶芸ファンが訪れる「備前焼まつり」などのイベントも配信した。観光ガイドとしても楽しめる内容に仕上げており、今後の誘客への効果も期待できる。

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公式YouTubeチャンネルでは多彩な動画を配信している

動画の制作を通じて合併後の融和が促進する効果も生まれた

「地域応援プロジェクトは、コロナ禍で打撃を受けた地元の飲食店や宿泊施設を応援したいという思いからスタートしました。構成はお客様と相談しながら考えています。動画の編集は慣れないこともあって最初は大変でしたが、職員たちは積極的に取り組んでくれました。YouTubeは情報発信効果が高いこともあってお客様に喜んでいただけました。取り組んで本当によかったと思っています」と中川部長。これまでに制作したコンテンツは飲食や宿泊業界が中心だが、他の業種の企業の配信など次の展開を考えていきたいという。

YouTube動画の制作を通じて、合併間もない2つの信用金庫の職員同士の融和が促進するという効果も生まれた。それぞれが撮影や編集などの作業を共同で行うことで仲間意識が深まっていったという。

支店長会議のオンライン化で1回あたり約13時間を捻出 導入にはIT補助金を活用 取得ノウハウが融資先IT補助金活用に役立つ

業務運営でもICTを活用している。2022年4月、本店と16支店でWeb会議システムを導入した。導入にあたり、国のIT導入補助金を金融機関として初めて活用したという。申請を実際に行ったことで、融資先がIT導入補助金を申請する時に的確なアドバイスができるという効果が生まれている。

Web会議システム導入の背景には、月に1度、全ての支店長が本店に集まる会議をオンライン化することで、往復の移動に費やす時間を有効活用する狙いがあった。各支店から乗用車で本店への移動に要する時間は、平均して片道20分から40分。最も遠い支店からは1時間以上かかるという。

「会議で本店に行く時は、途中で渋滞などに巻き込まれることも想定して余裕を持って出発するので更にプラスアルファの時間を費やしていました。Web会議システムを使えば、始まる直前に自席のパソコンからアクセスするだけで参加できるので、本当にありがたかったです。新たに生まれた時間を使って営業活動を強化することができました」と石井課長は支店長時代を振り返った。

支店長会議をオンライン化することで生まれる時間は1回あたり計約13時間になるという。1年間に開催するすべての支店長会議をオンライン化すればその効果は計約156時間になる。金融マンとして一線級の能力を持った12人の支店長が、融資先とのコミュニケーションなどに使える新たな時間を確保できたことは信用金庫全体に数字以上の効果をもたらしている。

本支店間の打ち合わせや研修でもWeb会議システムを機動的に活用 オンライン一辺倒ではなく対面会議とのバランスも図る

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Web会議システムを機動的に活用している

本支店間の日々の打ち合わせでもWeb会議システムを機動的に活用している。監査部では、各支店で行った監査結果の報告を、訪問からオンラインに切り替えたことで移動の時間を有効活用できるようになった。本店で各支店の職員を集めて行っていた勉強会や研修会もオンラインで行う回数を増やしている。

「Web会議は、電話のように手軽であると同時に対面の会議に近い感覚で話すことができるのでありがたいですね。おかげで信用金庫全体のコミュニケーションがこれまで以上に細かく取れるようになりました。画面で資料の共有もできるので、会議や研修の際に資料を印刷して配布する必要もないので、コスト節減にもつながっています」と中川部長。

コロナが5類に移行した2023年5月以降は、本店での会議を対面で開催する機会が増えている。その中で、支店からはWeb会議の回数を増やしてほしいとの要望が出ているという。「より深い議論をする上では対面会議の方が、高い効果が見込めるのも事実です。対面とのバランスを考えながら、効果が最大化できるようにWeb会議システムを活用していきたい」と中川部長は話した。

預金者向けの相続や融資の相談、個別の年金相談会にもWeb会議システムを活用している。これまでは社労士や専門知識を持つ職員を支店に派遣して対応していたがオンラインに切り替えることで支店まで出向く必要がなくなったという。

スマートフォンからアクセスできるアプリバンキングを導入して預金者の利便性を向上

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本店で掲示しているアプリバンキングのお知らせ

預金者の利便性向上を目的に2022年9月からスマートフォンにインストールすれば無料で利用できるアプリバンキングを開始した。残高照会、取引内容の確認、新規口座開設や住所変更、インターネットバンキングへのログインなどをいつでもどこでも行うことができる。利用者数は2023年12月末時点で約1,900件にのぼる。「通帳レス」のサービスも同時に始めている。通帳を減らしていくことで、コストの削減につながることが可能だ。

DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)
松井佑樹事務部事務統括課主任

松井佑樹事務部事務統括課主任は「オンラインサービスを利用するお客様は若い方が多いので、アプリバンキングは新規口座を獲得する上でもプラス効果を生み出しています。プッシュ通知の機能を活用した、これまでになかった働きかけも可能です。今後もアプリバンキングの活用を積極的にアピールしていきたい」と話した。石井課長は「これからも営業力の強化、人材育成、意識改革に取り組んでいきます。地域でDXが加速していくように頑張りたい」とこれからの抱負を語った。

DXを通じた地域活性化への熱い思い 業務効率化や地域の情報発信にICTを積極活用 備前日生信用金庫(岡山県)
備前日生信用金庫の本店の様子

融資先企業へのDX推奨、地域の情報発信、信用金庫内での業務効率化、預金者向けのサービス向上など、多面的にICTとデジタル機器に関わっている備前日生信用金庫。地域のDX推進に地元に根差した金融機関が大きな役割を果たしていることを強く実感した。

企業概要

会社名備前日生信用金庫
本社岡山県備前市伊部1660-7
HPhttps://www.shinkin.co.jp/bizenhinase/
電話0869-64-4111
設立1970年10月
従業員数203人 (令和6年1月末時点)
事業内容預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国為替業務、附帯業務