パワー半導体世界市場は年平均成長率6.7%で推移し、2025年には299億ドルに達すると予測
~2017年は情報通信、民生、産業、自動車の4分野全ての需要が伸長~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、パワー半導体の世界市場の調査を実施し、市場概況や採用動向、個別メーカの事業戦略を明らかにし、2025年までの世界市場規模を予測した。
パワー半導体の世界市場規模予測
1.市場概況
2017年におけるパワー半導体の世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は、前年比12.2%増となる177億4,500万ドルであった。2017年はリーマンショック前を大きく超える市場規模に達している。2016年後半から「情報通信」「民生」「産業」「自動車」の4分野全ての需要が伸長し、パワー半導体メーカの生産ラインはフル稼働状態が続いている。2018年についても主要パワー半導体メーカの受注は堅調に推移していることから、2018年の同市場規模は前年比9.2%増の193億7,100万ドルを予測する。
デバイス別に市場をみると、産業機器向けを中心にパワーモジュールの出荷が拡大し、なかでも産業用ロボットや工作機械、半導体製造装置などで使われているサーボモータ向けパワーモジュールの需要が好調であった。MOSFETは情報通信分野と自動車分野向けの需要が伸びている。特にモータ制御の適用箇所が拡大している自動車は、車両一台あたりに搭載されるMOSFETの数が増加しており、2019年以降も高い成長が見込めるものと考える。
2.注目トピック
SiCパワー半導体の2025年の世界市場規模は25億4,000万ドルと予測
2017年におけるSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は、前年比35.4%増となる3億1,000万ドルとなった。コストダウンが進んだSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)が需要の中心であり、情報通信分野(サーバの力率改善回路)、産業分野(太陽光発電用パワーコンディショナー、産業機器用電源、EV[電気自動車]用充電ステーション)、自動車分野ではEVのオンボードチャージャー(OBC)などで使われている。2018年については、EVのメインインバータ、OBCにSiC-MOSFETが採用されたために、自動車分野向けの市場規模が増加する見込みである。
2020年以降についてはSiCパワー半導体の自動車分野向け需要が本格的に立ち上がり、HV(ハイブリッド車)/EVのメインインバータへの採用が段階的に進む。6インチSiCウエハによる量産効果が2021年以降に出始めるために、Si(シリコン)パワー半導体とのコスト差が小さくなることでSiCパワー半導体の搭載用途が広がり、2025年には25億4,000万ドルに成長すると予測する。
3.将来展望
2025年におけるパワー半導体の世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は299億2,000万ドルになると予測する。2017年から2025年までの年平均成長率(CAGR)は6.7%で推移し、2025年の市場規模は2017年の約1.7倍に相当する。
2018年から2020年にかけては需給が逼迫する市場環境が続くために、前年比7-9%台の増加で伸長し、2020年のパワー半導体世界市場規模は225億3,000万ドルに達すると予測する。2021年以降については、2019年から2020年において各社が計画している設備投資の効果が順次出始め、供給数量も安定していくために、前年比5-6%台で推移する見通しである。
この背景にはIoTの世界的な広がりによる大規模データセンターの増加、白物家電や産業機器、新エネルギー分野(主に太陽光発電・風力発電)向けの安定した成長、HVやEV、また欧州、中国を中心とした車載用48V電源システムの普及拡大などがあり、こうした需要がパワー半導体世界市場全体の成長要因として挙げられる。