中小企業,戦略
(画像=PIXTA)

グローバル化が進んだ現代では、国内企業に加えて海外企業もライバルとなり得る。そんな状況下で中小企業が生き残るには、トレンドをとり入れた経営手法を学ばなくてはならない。実際の成功事例をチェックしながら、最新のマーケティング手法を学んでいこう。

目次

  1. ソーシャルメディアマーケティングの成功事例
    1. 1.ユーザーの印象に残すための宣伝/Relux(リラックス)
    2. 2.「中の人」のキャラクターでフォロワー激増/SHARP(シャープ)
    3. 3.お得なキャンペーンの実施/星野リゾート
  2. O2O施策の成功事例
    1. 1.デジタルチラシの配信/ユニクロ
    2. 2.実店舗での受け取りサービス/無印良品
    3. 3.Wi-Fiを活用したユニークな来店促進/マクドナルド(スペイン)
  3. オウンドメディアを活用した成功事例
    1. 1.生活に役立つ情報やファッショントレンドの発信/クラシコム
    2. 2.SNSを活用したオウンドメディア運営/サイボウズ
    3. 3.ユーザーに役立つ情報発信の徹底/ニッポンハムグループ
  4. ブランディングで成功した事例
    1. 1.本来の強みを活かしたブランディング/今治タオル
    2. 2.顧客のニーズを掘り下げたブランディング/鈴ノ屋
  5. 単なる思いつきはNG!目的を明確にしたうえで、費用対効果の高いマーケティングを

ソーシャルメディアマーケティングの成功事例

ソーシャルメディアマーケティング(以下、SNSマーケティング)とは、広告宣伝媒体としてSNSを活用する手法のことだ。TwitterやFacebookをはじめ、現代では世界中のユーザーがSNSを利用しているため、今やSNSマーケティングは多くの企業から活用されている。
ただし、SNSを使って自社を効果的に宣伝するには、以下のポイントを押さえなくてはならない。

○SNSマーケティングのポイント
・中長期的な視点で計画を立てる(すぐには効果が出ない)
・ターゲット層を明確にする
・インパクトを意識して、自社の魅力を伝える

では、実際にSNSマーケティングが成功につながった事例を紹介していこう。

1.ユーザーの印象に残すための宣伝/Relux(リラックス)

宿泊予約サイトのReluxは、Facebookの活用によってSNSマーケティングを成功させている。文字数を極力減らし、かつ一流旅館の画像を複数掲載する書き込みを続けることで、2020年1月現在までに115万以上の「いいね!」を集めた。

また、「どちらがお好みですか?」のようにSNSユーザーに対する問いかけが多い点も、参考にしたいポイントだ。単に商品・サービスをアピールするだけではなく、ユーザーの印象に残る情報を発信することがSNSマーケティングの成功につながる。

2.「中の人」のキャラクターでフォロワー激増/SHARP(シャープ)

大手電機メーカーであるシャープ株式会社は、Twitter上で自由奔放な書き込みをしている珍しい例だ。もちろん自社製品の紹介もしているが、苦手分野では他社製品をすすめるなど、ユーモアがあふれるツイートで注目を浴びている。

2020年1月現在でのフォロワー数は60万人を超えており、同アカウントのツイートに対して反応するユーザーも多い。同社のように、いわゆるSNSの「中の人」のキャラクターで印象づける方法も、立派なSNSマーケティングのひとつだ。

3.お得なキャンペーンの実施/星野リゾート

SNSのシンプルな活用方法としては、「キャンペーン情報の発信」が挙げられる。リゾート会社の星野リゾートは、2017年にInstagram上で独特なキャンペーンを実施したことで、ネット上での注目度が一気に上昇した。

その内容は、自宅で作った料理の写真をユーザーがアップすると、ホテルの宿泊券が当たるというもの。ほかにも細かい条件は設けられていたが、ユーザー側にもメリットが生じる内容の書き込みは、SNSマーケティングのわかりやすい活用例だろう。

O2O施策の成功事例

O2O(Online to Offline)とは、インターネットを活用して顧客を実店舗へ誘導するマーケティング手法のことだ。ネットやデバイスの普及によって、オンライン上でモノを購入する消費者が増えた現代では、ますますO2Oの重要性が高まっている。

クーポン型やECサイト連携型など、細かく見ればO2Oにもさまざまな施策があるが、どの手段を選ぶ場合でも以下のポイントはきちんと押さえなくてはならない。

○O2O施策のポイント
・オンラインとオフライン(実店舗)の特性を、それぞれ活かす
・実店舗への誘導だけではなく、可能であれば「実店舗からネット」への誘導も意識する
・「誰に対する施策なのか?(ターゲット層)」を明確にする

O2O施策に関しては特に大企業が積極的に取り組んでいるため、以下では大企業の成功事例を3つ紹介しよう。

1.デジタルチラシの配信/ユニクロ

ファッション大手のユニクロは、同社が提供する「ユニクロアプリ」でデジタルチラシを配信している。このチラシには商品の宣伝だけではなく、お得なクーポンなども掲載されており、興味を持った多くのユーザーが実店舗へ足を運んでいる。

さらに同社では、実店舗の商品のバーコードをスキャンすると、その商品の情報がアプリ上で表示されるシステムも導入。「ネットから実店舗」に加えて、「実店舗からネット」への誘導もきちんと行っている点は、ぜひ参考にしておきたいポイントだろう。

2.実店舗での受け取りサービス/無印良品

現代ではネットストアを運営する企業は数多く見られるが、ユーザーにとって痛い出費となるものが「配送料」だ。無印良品はその点を解決するために、ネットストアで購入したものを実店舗で受け取れるサービスを実施している。

目的が商品の受け取りであっても、実店舗へいったん誘導できれば、店頭に並んでいる別の商品を購入してもらえる可能性があるだろう。

3.Wi-Fiを活用したユニークな来店促進/マクドナルド(スペイン)

スペインのマクドナルドでは、無料Wi-Fiを活用したユニークなO2O施策に取り組んでいる。Wi-Fiはネットワーク名を自由に設定できるが、同店舗はその内容を「消費者へのメッセージ」に変えることで、周辺の人を実店舗へ誘導した。

本来、店外で無料Wi-Fiを使われてしまうことは、店舗にとって軽視できないデメリットのはずだ。しかし、このようにユニークな施策を実施することで、そのデメリットを見事にメリットに変えている。

オウンドメディアを活用した成功事例

オウンドメディア(Owned Media)とは、ウェブマガジンやブログなどのネットメディアを、企業が自身で運営するマーケティング手法だ。SNSの普及とともに注目度が一気に上昇したため、今やオウンドメディアを運営している中小企業は国内にも数多く存在する。

ただし、SNSやO2Oを使ったマーケティングと同じように、オウンドメディアも以下のようなポイントを押さえないと、大きな宣伝効果は期待できない。

○オウンドメディアを活用したマーケティングのポイント
・コンセプトに一貫性がある
・自社の強みを活かしたテーマやコンセプトを設定する
・長く継続するために、自社でしっかりと運営体制を整える

では、世の中の企業がどのようにオウンドメディアを活用しているのかについて、以下の成功事例から学んでいこう。

1.生活に役立つ情報やファッショントレンドの発信/クラシコム

インテリア製品を中心に展開する株式会社クラシコムは、自社メディア「北欧、暮らしの道具店」を運営している。このオウンドメディアの特徴は、単に自社製品を紹介するのではなく、消費者の「課題・悩み」にアプローチした情報発信を行っている点だ。

たとえば、便利なインテリアを紹介する際には、日常生活を助けるアイテムとしてその魅力が紹介されている。同社のイメージを損なわないように、各記事の写真に強いこだわりが見られる点も、ぜひ参考にしたいポイントだろう。

2.SNSを活用したオウンドメディア運営/サイボウズ

ソフトウェアを取り扱うサイボウズ株式会社は、「新しい価値を生み出すチームのメディア」をコンセプトに自社メディアを運営している。このメディアでは、幅広い層が興味を示すようなコラムが多数掲載されており、ビジネスからプライベートまであらゆるテーマが取り扱われている。

そんな同メディアの最大の特徴は、SNS経由で読者を集めている点だ。テーマや内容はもちろん、各記事のタイトルや見出しにも工夫を施すことで、いわゆる「バズる」記事を量産している。

3.ユーザーに役立つ情報発信の徹底/ニッポンハムグループ

最後に紹介するのは、国内最大級のバーベキューサイトである「BBQ CO!」だ。ニッポンハムグループが運営する同メディアでは、宿泊施設やレシピをはじめとしたアウトドアに役立つ情報が発信されている。

もちろん、最終的には会社や製品のアピールを目的としているが、実はこのメディアのメインページには自社製品に関する情報が一切掲載されていない。あくまでも「ユーザーに役立つ情報」を発信するメディアとして、その姿勢をしっかりと貫いている。

ブランディングで成功した事例

ブランディングによってブランド力を確立できれば、多数ある競合の中でも埋もれずに経営を続けていける。ただし、中小企業は資金力や人材力に限りがあるため、大企業とは別の視点でブランディングに取り組むことが重要だ。

中小企業が特に押さえておきたいブランディングのポイントとしては、主に以下の点が挙げられる。

○中小企業のブランディングのポイント
・身の丈に合ったブランディングに取り組む
・統一感や一貫性を意識する
・全社一丸となってブランディングに臨む
・経営理念に立ち返って考えるなど、自社の良さを最大限に引き出す努力をする

では、実際に中小企業がブランディングを成功させた事例を、以下で2つ紹介していこう。

1.本来の強みを活かしたブランディング/今治タオル

愛媛県のタオルメーカーである今治タオルは、輸入品の安価なタオルに対抗するために、「白いタオル=今治タオル」というブランディングに取り組んだ。この取り組みが見事に功を奏し、窮地に立たされていた経営は大きく改善。

今治タオルはもともと、量産ではなく高品質に力を入れていたメーカーだ。輸入品に無理に対抗せず、自社の本来の良さを引き出した結果が成功につながった例だろう。

2.顧客のニーズを掘り下げたブランディング/鈴ノ屋

鈴ノ屋は、平成23年に駄菓子屋として設立された東京の企業だ。同社は駄菓子屋文化を復活させるために、子どもを持つ主婦などに対してヒアリングを重ね、徹底的に3C分析を行った。

その結果、同社は「カラダに優しい駄菓子」という新たなブランドを確立し、見事に業績は向上。自社の理念に加えて、顧客のニーズを深く掘り下げた結果が成功につながった事例だろう。

単なる思いつきはNG!目的を明確にしたうえで、費用対効果の高いマーケティングを

本記事で紹介したように、成功を収める企業はさまざまな工夫を凝らしたうえで、積極的に行動を起こしている。ただし、施策を進めるには労力やコストが必要になるため、単なる思いつきで行動することは控えたい。

特に斬新な施策に取り組む場合は、事前にしっかりと調査・分析を行うことが重要だ。自社が「何を目指しているのか?」を明確にしたうえで、その目的を達成できる施策を計画しなくてはならない。

本記事で解説したポイントも抑えながら、より高い費用対効果を実現できる施策を考えていこう。

文・THE OWNER編集部

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