株主総会は、会社にとって重要なイベントのひとつ。内容はもちろんだが、実は株主総会では「開催時期」も意識しておきたいポイントだ。株主を納得させ、かつ会社の信用性を高めるためにも、本記事を読みながら株主総会のベストな開催時期を考えてみよう。
目次
そもそも株主総会とは?開催時期を慎重に決めるべき理由
株主総会とは、株主を構成員として開催される意思決定機関のこと。簡単にいえば、各株主が会社に対して自らの権利を行使するための場であり、今後の会社経営を左右するような重要事項が話し合われる。
株主総会と聞くと「年に1度開催される」とイメージするかもしれないが、実は株主総会には大きく以下の2種類があるため注意しておきたい。
株主総会の種類 | 概要 |
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定時株主総会 | 原則として、事業年度の終了後3ヶ月以内に開催される株主総会のこと。決算の報告に加えて、事業内容や剰余金の配当、役員の選任などについて話し合われる。 |
臨時株主総会 | 定款の変更や資本金の増減など、急を要する事情がある場合に開催される株主総会。事業年度ごとの開催は義務付けられておらず、必要性が生じたらいつでも開催できる。 |
上記のうち、経営者が常に意識しておきたいのは「定時株主総会」だ。決算報告や承認が行われる定時株主総会は、会社にとって1年の締めくくりとも言えるほど重要なイベントになる。
そのため、定時株主総会の開催前には万全の準備を整えなくてはならない。また、開催後にいくつかの書類作成が必要になる点も、忘れてはいけないポイントだ。
つまり、定時株主総会の開催時期には、会社全体として業務負担がどうしても増えてしまう。仮に開催時期と繁忙期が重なると、業務を処理しきれなくなる状況に直面するかもしれない。
したがって、毎年開催される定時株主総会については、「開催時期」を慎重に設定することが重要になる。最適なタイミングを見極めるために、本記事に目を通しながら開催時期についてしっかりと考えていこう。
定時株主総会はいつ開催されるケースが多い?特に押さえたい3つの時期
定時株主総会の開催時期には、いくつかの傾向が見受けられる。日本国内に限っていえば、定時株主総会は「6月・5月・3月」の3つの時期に開催されやすい。
では、なぜこれらの時期に開催されるケースが多いのか、その理由を以下で確認していこう。
1.決算・事業年度の関係で多い「6月」
1年の中で、定時株主総会が最も多く開催される時期は「6月下旬」だ。これには、国内企業の事業年度や決算が大きく関係している。
国内の株式会社では決算を3月末日に迎えるケースが多く、この場合は事業年度が「4月~翌年3月」に設定されている。前述の通り、定時株主総会は原則として「事業年度の終了後3ヶ月以内」に開催する必要があるため、3月末日に決算を迎える企業は6月までに株主総会を開催しなければならない。
また、制度上では4月や5月に株主総会を開催することも可能だが、開催までに約3ヶ月の期間を要する点にもきちんと理由がある。中でも決算を迎えた上場企業は、その内容に合わせて「決算短信」や「有価証券報告書」を作成する必要があるので、4月~5月は経理業務に追われやすい。さらに、株主総会に向けた準備も進めなくてはならないため、6月に入るまでは株主総会を開催することが難しいのだ。
株主総会の開催は「6月下旬が多い」点だけではなく、書類作成や株主総会の準備に「数ヶ月かかる」点も合わせて理解しておこう。
2.流通業・小売業や非上場企業に多い「5月」
次に株主総会が多く開催される時期は、「5月下旬」だ。百貨店やコンビニをはじめとする国内の流通業・小売業は、そのほとんどが2月末日に決算を迎えるため、5月下旬にはこれらの企業の株主総会が集中している。
また、3月決算の企業に関しても、非上場企業に該当する場合は株主総会を5月に開催するケースが珍しくない。非上場企業は有価証券報告書の作成義務がなく、規模的にそのほかの手間も抑えられるため、株主総会のスケジュールを前倒ししやすい。
株主総会の準備には必ずしも3ヶ月かける必要はないので、スムーズに準備が整った場合は5月中の開催も検討しておきたいところだろう。
3.年末決算の企業に多い「3月」
事業年度を1月~12月に設定し、年末に決算を迎える企業は「3月下旬」に株主総会を開催するケースが多い。決算と聞くと3月をイメージするかもしれないが、「キリが良い」「世界基準の暦に合わせられる」などの理由から、年末に決算を迎えられるように事業年度を調整する企業も少なくない。
特に海外に進出している企業は、国際会計基準との関連から12月に決算を迎えることが望ましい場合もあるので、グローバル化を目指している経営者はぜひ検討しておきたいポイントだ。
上場企業・非上場企業の開催時期の違い
株主総会の開催時期は、上場企業と非上場企業とで傾向がやや異なる。その大きな要因は、前述でも触れた「準備にかかる時間や手間」だ。
上場企業は決算後に作成をする書類が多く、さらに株主の招集にも手間がかかる。特に経理部門の負担が大きくなるため、意思決定に急を要する場合は臨時株主総会が開催される場合も珍しくない。
その一方で、非上場企業は「経理・招集」の2つの負担が少ないので、早い時期に株主総会を開催しやすいだろう。特に株主がオーナー1人の場合には、書面決議のみで株主総会を済ませるケースも見受けられる。
期限が差し迫ってから開催をすると、急なトラブルなどに対応できなくなる恐れがあるため、可能であれば早めの開催も検討しておきたい。
開催時期を意識しよう!定時株主総会までの流れと必要な準備
定時株主総会は開催時期を決めるだけではなく、「開催までの流れ」を意識することも重要だ。全体の流れを把握しておかないと、準備が不足したり開催が遅れたりなど、思わぬトラブルを招く恐れがある。
そこで以下では、定時株主総会全体のスケジュールを簡単にまとめた。
定時株主総会の準備 | 概要 |
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【STEP1】必要書類の用意 | 決算書や事業報告書など、株主総会で使用する書類を作成する。また、株主に対して新たな提案をする場合や、定款を変更する場合には、それに関するほかの書類や説明資料も用意しておく。 |
【STEP2】監査役への提出と承認 | 決算書や事業報告書に関しては、監査役に一度提出する流れが一般的。監査が終わると監査報告書が作成されるため、その書類を確認しながら取締役会で承認決議を実施する。 |
【STEP3】株主招集通知 | 株主総会の日時や場所、報告事項、決議事項などをまとめた書類を作成し、株主への通知を行う。株主の同意を得ていたり、会社の規模が小さかったりする場合は、メールや口頭での通知も可能。 |
【STEP4】質疑応答の準備 | 多くの株主が参加する場合には、さまざまな質問が飛び交うことも予想される。このようなケースでは、株主を納得させるための回答を用意しておく必要がある。 |
【STEP5】会場の設営 | 会場をおさえ、備品や人員を確保しておく。株主総会の規模が大きい場合には、リハーサルが必要になる点にも要注意。 |
上記の【STEP1】~【STEP2】までには、短くても1ヶ月~1ヶ月半ほどの期間を要する。特に議題が多い場合には、書類・資料の作成に膨大な時間がかかる可能性もあるので、しっかりと計画を立てたうえで準備を進めたいところだ。
また、【STEP3】の株主招集通知の期限については、法令で以下のように定められている。
会社の特性 | 招集通知の発送期限 | |
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公開会社 | 会日の15日前 | |
非公開会社 | 取締役会設置会社 | ・書面投票や電子投票を採用する場合…会日の15日前 ・書面投票や電子投票を採用しない場合…会日の8日前 |
取締役会非設置会社 | ・書面投票や電子投票を採用する場合…会日の15日前 ・書面投票や電子投票を採用しない場合…会日の8日前 |
仮に上記の期限から通知が遅れた場合には、株主から招集手続きの瑕疵を追及されかねない。会社の信用性が下がる恐れもあるので、スケジュールに余裕をもって招集通知に取り組んでおきたい。
その後にも【STEP4】~【STEP5】の準備が必要になることを考えると、定時株主総会の準備にはやはり2ヶ月~3ヶ月程度の時間がかかってしまうだろう。したがって、決算が終わったタイミングですばやく準備に取りかかり、少しでも早く準備を整えておくことが重要になる。
臨時株主総会はいつ開催するべき?考えておきたいポイントとスケジュールの決め方
ここまでは定時株主総会について解説したが、最後に臨時株主総会のスケジュールも確認していこう。臨時株主総会のスケジュールを決める際には、まず以下のポイントを意識しておきたい。
○臨時株主総会で押さえておきたいポイント 【1】決算後の書類作成は不要(議題に関する書類だけで問題ない) 【2】採用通知期限に関しては、定時株主総会のルールと同様 【3】基準日(開催日)の時点で、株主名簿に登録されている株主しか参加できない |
臨時株主総会は時期に関係なく開催できるため、決算書類をそろえる必要はない。議題に関する書類・資料は必要になるものの、定時株主総会でいう【STEP1】~【STEP2】の工程を大きく省ける。つまり、準備にかかる手間が少ないので、定時株主総会よりも短いスケジュールを組むことが可能だ。
ただし、定時株主総会・臨時株主総会で参加者をそろえたい場合には、上記【3】のポイントに注意しておきたい。2つの株主総会の時期が離れると、その間に参加する株主が変わってしまう恐れがある。
臨時株主総会はいつでも開催でき、議題によっては準備期間も1ヶ月以内におさえられるが、特に「議題に関する準備・参加株主」の2点を意識してスケジュールを組むことがベストだ。
万全の準備を整えるために、株主総会の開催時期は慎重に検討を
定時株主総会・臨時株主総会のどちらを開催する場合であっても、「開催時期」は慎重に決めなくてはならない。書類や資料の不備をはじめとした準備不足は、信用性の低下につながってしまう恐れがあるためだ。
株主総会のベストな開催時期は、準備~開催までの全体のスケジュールを把握し、そこから逆算すると見えてくる。万全な準備を整えるために、本記事を参考にしながら慎重に開催時期を設定していこう。
文・THE OWNER編集部