問題提起
(画像=Cookie Studio/Shutterstock.com)

これまで多くの大手企業 ・中堅企業のM&Aの支援をする中で、経営企画部のM&A担当者からM&A実行に関する悩みを聞いてきた。その悩みは千差万別であるが、おおよそ3つの要因からくることに気付く。なぜM&A戦略が進まないのか?本稿では、これらの要因を紹介し、大手企業の経営計画、M&A実行における課題提起の機会としたい。

要因1:M&A戦略における責任と権限が不明確

中期経営計画立案時からM&A戦略自体を消極的にとらえ、「内部資源活用のみでの成長ありき」という戦略スタンスがある。外部からM&A情報が入らず、情報面で孤立化し機会損失をしている可能性がある。そのような企業の経営企画担当者は、M&A戦略に責任がないため、積極的にM&A機会を見出そうとしないのである。

一方、中期経営計画の立案段階からM&Aを積極的に捉え、チャンスがあれば外部資源も取り込み、成長を目指す企業群がある。この場合、M&A担当者に正式にM&Aのノルマ、責任及び権限が与えられているケースが多く、M&A担当者は、社内で権限が明記されているおかげで、社内外で動きやすい。中期経営計画にM&A戦略を明記することがM&Aを成功させる第1歩であると考える。

要因2:M&Aのターゲットが不明確

M&Aのターゲット先について聞かれた時、最低限(1)ターゲットとすべき業種、(2)エリア、(3)1件あたりの投資限度額、の3項目については即答したいものだ。そのための出発点は、自社にあったM&A戦略に菅捨仮説を持ち、「こういう案件は積極的に進めたい」というアイデアを持っておくことだ。M&A戦略の種類を理解してもらうために、図1を参照いただきたい。それぞれの戦略の概要について述べる。

M&A戦略の概要
(画像=Futureより)

要因3 : 売り案件の希少性

当社のようなM&A支援会社から、なかなか案件を紹介してもらえないと嘆いている企業がある。譲渡案件は希少である。下記4つの分析を確認して頂きたい。どれか1つでもゼロに近ければ、掛算の結果M&Aの実行可能性は難しくなる。

図2
(画像=Futureより)
図3
(画像=Futureより)

以上は数多くのM&Aを支援する当社の経験則により抽出された問題点であり、各社が直面する壁である。M&Aを実行されている企業の経営計画 ・M&A担当の方々には、戦略に沿ったM&A実現のため、ぜひ参考にしていたきだたい。

皆己秀樹(企業戦略部上席課長 株式会社日本M&Aセンター)

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