株式会社 ワンプラネット・カフェは、2012年に設立。サステナビリティやSDGsについての理解を広める講演活動を行いながら、バナナの茎から紙を製造する事業も手掛けています。今回は、ワンプラネット・カフェ代表であるエクベリ聡子さんに、立ち上げのいきさつや、今後のビジョンについて伺いました。
貧困と環境破壊に直面しワンプラネット・カフェを設立
『ワンプラネット・カフェ』のきっかけは、CSR(企業の社会的責任)と環境関連のコンサルティング会社でのキャリアから生まれました。日本で初めて環境・CSRに特化した会社で私は働いていましたが、社会全体がまだCSRや環境保護に十分な関心を持っていないことに気付きました。
2006年、夫とアフリカのザンビアに野生動物を見に行く旅行に出発したことが、ワンプラネット・カフェの始まりでした。帰国前の最終日に電気も通っていない村を訪れ、生活条件や森林伐採などの環境破壊によって命を落とす人がいることに直面しました。その経験から「地元のコミュニティに貢献したい」という思いが強くなりました。
翌年、地元の人たちにパソコンスキルを教え、雇用の機会を提供するプロジェクトを開始しました。しかし、このプロジェクトは続けられないことが後に明らかになりました。何か新たな仕事を創出できないかと考え、バナナペーパーの製造と販売を始めました。これにより、地元の雇用を創出することができました。
バナナの繊維から紙を製造し、地元の雇用を提供するために、2012年にワンプラネット・カフェを設立しました。立ち上げ後も苦労が絶えず、現地の方々の信頼を得るのが難しかったです。
私たちが持続可能性を追求しても、現地の人々にとっては目の前の給料が最も重要であるという価値観の違いがありました。それでも、素晴らしい野生動物や環境を守りたいという強い思いが私たちを前進させてくれました。
ワンプラネット・カフェを支える3つの柱
ワンプラネット・カフェの事業は、3つの柱から成り立っています。
まず、1つ目の柱は企業向けの講演や研修です。これは主に企業を対象とし、サステナビリティに関する教育とコンサルティングを提供しています。企業が持続可能なビジネス実践を理解し、実行できるようにサポートしています。
2つ目の柱は視察ツアーです。これは持続可能な実践を見学し、学ぶ機会を提供します。サステナビリティ先進国と言われるスウェーデンや生物多様性が豊かなザンビアで、持続可能な取り組みを体験するプログラムを提供しています。
そして、3つ目の柱はバナナペーパーに関する事業です。バナナペーパーは、バナナの茎の繊維からつくる特別な紙です。バナナの茎は通常捨てられてしまう部分であり、それを買い取り、地元の農家に新たな収入源を提供しています。また、バナナペーパーの製造工場では地元の雇用を生み出しており、現地のコミュニティに貢献しています。
バナナペーパーは、5〜6mになったバナナの茎から取り出された繊維を原料として使用し、日本とイギリスの工場で紙に加工されています。バナナの茎は蛇や象が群がるために村では燃やしているので、再利用できるのは環境にとって良く、農家にとって新たな収入も生み出しています。
この紙は日本初のフェアトレード認証の紙で、名刺やショッピングバッグなどの製品に使われ、各種業界で支持されています。ワンプラネット・カフェはさまざまな企業と提携し、バナナペーパーを活用した製品の開発と販売を行っています。
サステナビリティを広げていく
持続可能な社会への貢献とイノベーションは、今後さらに重要性を増していくでしょう。バナナ繊維を有効活用したいという思いはありましたが、具体的な活用方法については当初は素人同然でした。そこで、紙製品メーカーや印刷会社に協力を求め、2013年に『ワンプラネット・ペーパー協議会』を設立しました。現在、31社が参加しています。
私たちは、パートナーシップを重視しています。自社だけでは事業を進めることができなかったため、専門家の協力を得ながら取り組んできました。共にサステナブルな社会を築いていくことが、私たちのビジョンです。共通の目標に向かってそれぞれの強みを活かして、努力することの重要性を強く感じています。
サステナビリティへの取り組みは、経営状況が厳しいため難しいという声も耳に入ります。しかし決してそうではなく、ビジネスにとっても社会にとっても成長の機会であると考えます。これまで化石燃料に依存してきたこともありますが、便利だけれども限界が見える資源に頼るのではなく、バナナペーパーのような新たな資源の活用を考えるべきです。
まだまだ認識されていない、活用されていない資源は数多く存在します。集中豪雨や洪水、干ばつや砂漠化などが深刻化するなか、気候変動の対策を加速・拡大する必要があります。サステナビリティに真剣に取り組むことで、幅広いパートナーシップを築き、日本が強みを活かしてより魅力的な国へと発展することが可能だと考えています。