IT業界クロスボーダーM&Aの2024年展望
人件費高騰で脱オフショア化
COVID-19によるパンデミックが収束し、世界的には高インフレ率に苦しんだ1年となった2023年ですが、物価の高騰に合わせて人手不足も相まって多くの国では賃金も上昇していきました。その結果、従来はオフショア開発の拠点と目されていた新興国(ベトナム、フィリピン等)でのエンジニアの給料も高騰しています。AIやクラウドを扱う高度人材においては日本のエンジニアより高い条件でオファーを出しているケースもあり、単なる安価な人材供給地のオフショア市場から変化してきています。また昨今の円安の影響もあり円建てで見た際の人件費も高騰しており、新興国への外注メリットも減少してきています。
参考記事:日本のIT開発、ベトナム頼み転機 欧米系年収1000万円も(日本経済新聞、2023年7月25日付) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC193A90Z11C22A2000000/
成長マーケットを求めての海外進出
このような海外人材の所得増や円安の影響もあり、新興国も含めた海外(特に成長著しいASEAN市場)での売上を増やしていくことが重要だと考える企業も増えています。
今までは安価な労働力や開発拠点を求めて新興国に進出してきたIT企業ですが、自社のサービスやシステムを提供する先の消費地としてのマーケットとして注力拠点と位置付けるようになってきています。特に新興国ではスマートフォンや通信インフラの普及や日本に比べて若い平均年齢が後押しとなり、DX化が非常に速いスピードで進んでいます。企業のITインフラ投資も年々増えており日本のIT企業にとっても大きなビジネスチャンスが訪れています。
従来までの最先端技術の内製化を目的とした海外M&Aのトレンドに加え、ASEANや新興国のような成長著しい市場への進出を目的としたIT業界のM&Aが2024年以降は増えていくと予想できます。
為替相場に落ち着きの兆し
2023年は金利差の拡大などにより急激な円安が進行し企業経営にとって大きな影響を及ぼしました。特に海外への投資を検討していた企業にとっては、円建てで見た際の投資額の増加がネックとなり新規案件の検討を一旦見合わせるといったケースも見られました。特にIT業界のM&Aでは対象企業の資産が大きくないことから、実際の会社の純資産に対してのれん金額が高額になることが多く円安による投資金額の増加は大きなインパクトとなっていました。
しかしながら昨年末から米国の利下げ観測や日銀のマイナス金利の修正といったニュースから円安に歯止めがかかり、為替相場は一旦の落ち着きを見せている状況となっています。先行きが不透明だった昨年に比べると海外への投資(M&A含む)についてよりクリアに検討が可能になり、投資件数も増えていくのではないかと考えています。
2024年も引き続き、IT業界含め多くの企業の海外進出に貢献できればと思っております。海外進出や事業承継についてご相談をご希望される方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。