企業買収,身近
(画像=PIXTA)
内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
税理士・公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

M&Aの専門会社が増え、プラットフォームも充実してきたが、昨今はネット上でも会社が売買されるようになった。これまでも会社や事業の売買は行われてきたが、今は中小企業だけでなく、個人でも会社を買える時代になのだ。

目次

  1. 個人が会社を買える時代に
  2. 会社を買う流れは?3ステップで解説
    1. STEP1.予算を決める
    2. STEP2. 購入する会社の業種を決める
    3. STEP3.実際に買収する会社を探す
  3. 会社を買うメリット
  4. 会社を買う際に注意すべきこと
  5. 魅力的な会社買収だが実際の行動は慎重に

個人が会社を買える時代に

これまで企業買収と言えば億を超える取引が多かったが、今では数百万円で成立する案件も増えており、サラリーマンが購入するケースも多い。もちろん、他の事業を経営している会社による買収が多い。

昨今のM&A市場の活況には、事業承継問題が深く関係している。強みがあるにもかかわらず、後継者がいないため廃業する中小企業は後を絶たない。

収益を上げられない会社や借金で首が回らない会社が廃業するのは仕方ないとしても、そうでない会社が廃業してしまうのは非常にもったいない。このような状況の中、これまで親族や従業員に承継させる方法が主流だった事業承継において、第三者に売却する方法が脚光を浴びるようになった。

会社を買う流れは?3ステップで解説

ここらはそんな第三者に売却したいと思っている企業を買うためにどうすればよいのかを見ていこう。

STEP1.予算を決める

会社を買うためには、まずどのくらいの予算を使えるかを把握しておかなければならない。会社を買うことは前向きで素晴らしいことだが、それによって自分の本業や生活に支障をきたしては本末転倒だ。予算を決めるには、ある程度のM&Aの知識と相場観が必要だ。

STEP2. 購入する会社の業種を決める

予算が決まったら、購入する会社の業種を決める。ネットのマッチングサイトで検索すれば、予算の条件で絞ってもまだ多くの会社が売りに出されていることがわかるだろう。ただし、割安だからというだけで購入する会社を決めてしまうと非常に危険だ。

事業経営をしている人はその事業と関連のある会社を、サラリーマンは自分の会社と関連のある業種を選ぶのが無難だ。また、自分がこれからどのようにビジネスを行っていきたいのかを明確にすることも、購入した会社の事業を成功させるための近道になる。

STEP3.実際に買収する会社を探す

予算と業種が決定したら、具体的に買収する会社を探していくことになる。会社を探す方法はいくつかあるが、「インターネット」「公的機関」「専門業者」に大別される。最も手軽なのは、インターネットで探す方法だろう。

昨今はM&Aのマッチングを支援するサイトが増えており、登録をすることで簡単に会社の売却情報を確認できる。マッチングサイトであれば、予算や業種などで絞込検索を行い、条件に当てはまる会社をスピーディーに探すことができる。

M&Aの仲介から契約書作成、アフターフォローまでしてくれるサイトもある。インターネットの場合は、サイトの運営コストが少なくて済むため、300万円程度で購入できる会社も掲載されている。マッチングサイトでは、会社だけでなくアフィリエイトサイトやECサイトも購入できる。

購入できる会社は、経済産業者や各地の商工会議所・商工会が運営している事業引継の募集から探すこともできる。これは、中小企業経営者の高齢化・少子化による後継者不足で事業継承が困難になっている会社を第三者に引き継ぐ事業だ。

現在は全国47都道府県すべてに事業引継ぎ支援センターが設置されており、無料でM&Aに関する相談ができ、条件が合えばマッチングもしてもらえる。

M&Aを専門に扱っている仲介業者に依頼する方法もある。専門業者のサポートは手厚く、売買のマッチングからアフターフォローまでしっかりサポートしてくれる。ただし、売買金額の相場は数千万円から数億円であり手数料も高額なので、中小事業者や個人には手が届かないかもしれない。

会社を買うメリット

会社を買える時代になったのはいいが、会社を買うことにはどんなメリットがあるのだろうか。

購入した会社を上手く経営して利益を伸ばし、付加価値をつけて会社を売却すれば、キャピタルゲインを得られる。会社の売却価格は単年度利益の数年分と言われており、短期間で収益性を改善すれば、短期間で大きな利益を上げることができる。

すでに事業として成立している会社を買うことになるので、自分でゼロから創業する場合と異なり、経営者としての仕事に専念することができる。上手くいけば、不労所得を得ることができるかもしれない。

自分がやっているビジネス以外のビジネスに触れることで、新たなノウハウが得られる。購入した会社に自分のビジネスのノウハウを注入することで、シナジー効果が得られることもあるだろう。

最大のメリットは、新規事業を立ち上げる必要がなくなることだろう。新しい事業を立ち上げる際は、「事業が軌道に乗るまでどのくらいの期間がかかるか」「初期投資をどのくらいの期間で回収できるか」がポイントになるが、会社を買収すればそれを考える必要がなくなるのだ。

事業を始めるには、調査研究やノウハウの習得、軌道に乗るまでの人件費など、多額の費用がかかる。最終的な初期投資額がいくらになるか、読みにくいことも少なくない。事業は軌道に乗るまで時間がかかり、軌道に乗ったとしてもすでに市場が飽和している可能性もある。

会社を買うということは、「新規事業を立ち上げて軌道に乗せるまでの時間をお金で買う」ということなのだ。

会社を買う際に注意すべきこと

M&Aでは、会社を売る側は自社のネガティブな要素を明らかにしないことが多い。明らかにすれば、売却価格が下がる可能性があるからだ。したがって、会社を買う側は自分でリサーチをしなければならない。ここでは、会社を買う際に注意しなければならないことを確認していこう。

まず、会社を売る側が提示する売却希望価格が、相場と乖離しすぎていないかどうかを確認したい。相場を知らないまま、売り手の話を鵜呑みにしてしまうと高値で買うことになるだろう。

特に小規模な案件の場合は直接交渉になることが多いので、「あまり知識がない人」と思われてしまうと、会社・事業の内容や業績に関して虚偽の報告をされてしまうおそれがある。よって、自分で相手の会社情報をしっかり確認しなければならない。

購入する会社には、従業員やその家族、顧客が存在する。従業員や顧客の中には経営者の人柄や人脈によって関わっている人もいるので、会社のオーナーが変わることを良く思わない従業員・顧客がいることを想定した上で関係構築を図る必要がある。

簿外債務の有無に関しても、目を光らせておかなければならない。簿外債務とは、決算書の貸借対照表に計上されていない債務のことだ。中小企業は大企業と同じ会計基準ではなく、簡易的な会計基準を採用している会社が多い。

そのため、未払給与や賞与引当金、退職給付引当金、資産除去債務など、大企業の決算書には載るものが簿外となる。賞与引当金や退職給付引当金については交渉の過程で気づくことが多いが、訴訟が関連する偶発債務や不正が絡んでいる簿外債務については、判明しないまま引き継がれてしまうと非常に危険だ。

棚卸資産や固定資産についても、その実在や評価方法を詳しく確認しておきたい。中小企業では減損会計が適用されていないことが多く、多額の含み損を抱えた不動産や有価証券が、取得時の価格のまま計上されていることがあるのだ。

銀行向けに粉飾を行っている可能性もある。回収の見込みのない債権や架空の在庫を計上していたり、減価償却を正しく計上していなかったりする可能性も考慮しておくべきだ。

魅力的な会社買収だが実際の行動は慎重に

その他にも連帯保証にも注意してほしい。小さな会社の場合、会社のオーナーが連帯保証人になって銀行から借り入れを行っているケースが多い。会社を買った場合は、その連帯保証も引き継ぐことになる。自分の信用力が低かったり資金力が乏しかったりすると、連帯保証を引き継ぐことができない場合がある。そうなると、M&A自体が頓挫してしまう可能性もある。

建設業など許認可が絡む業種の会社を買収する場合は、引継いだ後もその許認可の要件を満たせるかどうかも確認しておこう。引き継いだ時点で満たせない場合は、満たす目途はあるのかどうかをチェックしよう。

まだ発覚していない違法行為、たとえば脱税や贈収賄などがないかどうかについても、目を光らせる必要がある。

気をつけたい点は多いが、中小企業の経営者でも企業を買収できるのは魅力的だ。企業が買いやすくなっている今、検討してみるのもよいかもしれない。

文・内山瑛(公認会計士)

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