矢野経済研究所
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2024年1月
コンシューマー・マーケティングユニット
主席研究員 松井和之

経済産業省は2023年1月に「繊維製品における資源循環システム検討会」を立ち上げ、約1年間で7回の検討会を開催した。国内における衣料品の回収方法、回収した衣料品の分別と、繊維から繊維へのリサイクル・再生技術、製造時の環境配慮設計、販売時における消費者への理解促進等について議論を行い、課題解決の方向性をまとめている。具体的には資源循環のための4つのプロセス、①回収→②分別・繊維再生→③設計・製造→④販売の課題と取組みの方向性がまとめられている。
本格的な繊維リサイクルが推奨されるようになり、今後はグローバルなメガトレンドである資源循環の潮流を無視して、業界企業は事業を継続することはできなくなる。
繊維製品の資源循環のためには入口と出口の課題を解決しなければならない。入口とは古着、古布の効率的かつ量的な回収、出口とはリサイクル繊維を用いた最終製品の販路を指す。①回収と④販売である。
資源循環の入口のリサイクル原料である古着、古布を大量に回収しても、再生した後の販路が確保できなければ循環しない。リサイクル最終製品が売れなければ、資源循環とはいえないのだ。古着や古布を自動車用内装材などに再生するB2Bリサイクルであれば安定した需要があるようだが、B2C向けの繊維から繊維の水平リサイクルで、作ったはいいが売れ残りばかりでは、一次流通の課題を二次流通において再び繰り返すことになる。
B2C向けではリサイクルすることが目的ではなく、生活者、消費者が魅力を感じるリサイクル製品の商品を企画し販売するという、さらにレベルの高い課題に取り組まなければならない。誰が買ってくれるかわからないが、とりあえずリサイクル製品を作った、ではもうだめである。
もちろん繊維製品の資源循環を行うには克服すべき課題があり、一気に課題が解決することはなく、段階的に発展していくだろう。現在、国が注力しているのは①回収~②分別・繊維再生~③設計・製造が焦点になっているように思える。しかし①~③生産の上流工程の課題がクリアになってから、生活者、消費者が魅力を感じる商品の企画をするのでは遅い。生産からゴールである販売に向かう一方通行ではなく、エンドユーザーのニーズや需要に対応する商品企画を行うバックキャストからのものづくりの発想が求められる。販路の獲得、需要拡大を同時進行で進めるべきだ。
同時に進める最大の利点は、販路が確保できていれば、大量生産によるコストダウンが図れる点である。リサイクル製品はリサイクルにかかるコストが乗るため、最終価格が従来品よりも高くなる。しかし大量にリサイクルを行えば、規模(大量生産)のメリットが働く。大量生産というとサステナブルの視点から禁忌すべきワードのようなイメージがあるが、経済原則は一次流通、二次流通に関係なく働く。
入口と同時に出口の確保を進める。これが繊維・アパレルにおいて資源循環を促進させる重要なポイントである。