目次
- 中途採用ニーズはコロナ禍前の水準超え
- 新しい時代の働き方に対応した人事・評価制度が急務
- 主要人材コンサルティング会社アンケート「2024年 企業の人材需要と採用の課題」
- アカリク 山田諒 代表取締役
- アクシスコンサルティング 伊藤文隆 常務取締役
- EDGE 佐原資寛 代表取締役
- アサイン 奥井亮 取締役
- エリメントHRC 清水潤次 取締役
- アンテロープキャリアコンサルティング 林徹 ディレクター
- キャリア インキュベーション 荒井裕之 代表取締役社長
- MS-Japan 松林俊 キャリア事業部長
- キャリア・デベロプメント・アソシエイツ 田辺晃 代表取締役社長
- クレドス 田中潤 代表取締役CEO
- キーンバウム ジャパン/K.J.コンサルタンツ 鈴木悦司 代表取締役社長
- 経営者JP 井上和幸 代表取締役社長・CEO
- KMF PARTNERS 吉田亜紀子 Sales&Marketing division Director
- ジェイ エイ シー リクルートメント 田崎ひろみ 代表取締役会長兼社長
- コンコードエグゼクティブグループ 餘茂田一成 ディレクター
- テクノブレーン 北川太 代表取締役
- ヒューマンリソシア 御旅屋(おたや)貢 代表取締役
- パーソルキャリア 加々美祐介 doda編集長
- みらいワークス 岡本祥治 代表取締役社長
- フォルトナ 荒井良介 マーケティングマネージャー
- プライマリー・アシスト 石山知良 代表取締役社長
- プロフェッショナルネットワーク 松島剛 代表取締役社長
- RYZE Consulting ウィリアム・デローム 代表取締役
- リクルート 藤井薫 HR統括編集長
- リネアコンサルティング 大森崇 代表取締役社長
- RUFT 武田友和 取締役
- レックスアドバイザーズ 岡村康男 代表取締役
- ロバート・ウォルターズ・ジャパン ジェレミー・サンプソン 代表取締役
- ワークス・ジャパン 清水信一郎 代表取締役社長
中途採用ニーズはコロナ禍前の水準超え
企業の人材採用を支援する主要コンサルティング会社の事業責任者を対象に本誌が実施したアンケート調査では、2024年の日本の雇用情勢は「良くなる・やや良くなる」との回答が71%となった。
企業の人材採用数は、新卒、中途、アルバイト・パート、派遣のいずれも「増加・やや増加」が大きな割合を占めている。特に中途採用は前年同様「増加」が5割を超えた。リクルート藤井薫HR統括編集長は「営業、販売、企画・マーケティング、IT、生産まで、ほぼ全ての職種でコロナ禍以前の水準を超えて活況」と説明しており、幅広い職種で即戦力人材が求められていることがうかがえる。
さらに「世の中の変化が激しく、即戦力人材を外部から採って事業を成長させたい企業が増えている。中途採用人材には、スキルだけでなく、培ってきた人脈の広さや社内メンバーの育成、ロールモデルとしての役割も期待されている」(ジェイ エイ シー リクルートメント田崎ひろみ会長兼社長)、「事業に直結するような重要ポジションにおいてはより良い人材の獲得に注力している向きがあり、極めて優秀なプロフェッショナル人材へのニーズは一層高まっていく」(キャリア インキュベーション荒井裕之社長)ことから、事業や組織の変革をけん引できる人材を求める動きは昨年以上に活発になりそうだ。
多くの企業が取り組むDXを推進できる人材については「業種を問わず、IT系エンジニアの不足感は高い」(テクノブレーン北川太代表)、「専門的な人材紹介の需要は依然高い」(RYZE Consultingウィリアム・デローム代表)ことから、引き続き需要が継続する見込み。
一方、DX支援事業で急拡大してきたコンサルティング業界では「DX需要が一巡する中、この数年で採用した大量のポテンシャル人材の再教育や再配置が重要な経営課題」(リネアコンサルティング大森崇社長)となり、「若手や未経験のポテンシャル採用が縮小」(フォルトナ荒井良介マネージャー)している。
業種・職種特化型人材紹介会社の事業責任者が強い人材ニーズを予測するのは「ニッチな先端技術の開発経験者」(キャリア・デベロプメント・アソシエイツ田辺晃社長)、「医療×AI、ヘルステック系企業」(エリメントHRC清水潤次取締役)、「日系金融機関」(アンテロープキャリアコンサルティング林徹ディレクター)、「リテール、一般消費財、高級商材の業界」(KMF PARTNERS吉田亜紀子Director)などの分野だ。
●2024年 日本の雇用情勢・人材採用の増減(回答集計)
新しい時代の働き方に対応した人事・評価制度が急務
2024年の採用課題については、「採用難易度が高まり、例年通り前年踏襲の採用では成功しない。採用支援事業者が急増しており、一つの採用課題を取っても、どの事業者のどのサービスを使うことが自社にとって最適なのかを判断することが難しくなっている」(EDGE佐原資寛代表)、「優秀な人材の採用は年々難易度が高まっており、人事部と現場との連携が大事」(RUFT武田友和取締役)など、採用難易度の上昇に言及する事業責任者が増えた。
即戦力人材は争奪戦で、「内定受諾率も下がっていることもあり採用に時間が掛かっている」(アクシスコンサルティング伊藤文隆常務取締役)ため、スピーディーに人材を確保することが困難な状況にある。
こうした採用環境を踏まえ、パーソルキャリア加々美祐介doda編集長は「従来の正社員、経験者採用に加え、特にIT人材においては育成を前提としたポテンシャル採用や、高いスキルを求める場合には副業・フリーランスといった“雇用以外”の受け入れも選択肢にいれる必要性が高まる」と見ている。
これまで以上に人材を柔軟に受け入れていくためには、現在の人事制度のままでは難しい企業が少なくない。プロフェッショナルネットワーク松島剛社長は「ジョブ型雇用やサブワーク等多様な働き方が出現しているが、法律や企業の体制はそれらに対応できるようになっていないことがほとんどだ。まずは採用する企業が新しい時代の働き方に対応した人事・評価制度を作ることが急務」と訴える。
また、みらいワークス岡本祥治社長は「より社会貢献性や存在意義といったパーパスを重視した会社選びをする若者が増えているのに、会社がそれに対応しきれておらず、ミスマッチが生まれる原因」と、次代を担う若手を採用する上での課題を示している。
アサイン奥井亮取締役は「働き手が減少する中で、企業は人材から選ばれる時代になっている。人材が求める機会やキャリア、待遇を提示できるかが大きな分岐点」と指摘。ヒューマンリソシア御旅屋貢代表は「従来の『採用』の枠組みを超え、人事戦略の枠組みの中で新たな問題」の顕在化を予測する。
自社が必要とする人材から選ばれる企業になるためには、賃金水準の見直しはもちろんのこと、職場環境やマネジメントの改善など、人材獲得に向けた持続的な取り組みが欠かせない。
主要人材コンサルティング会社アンケート「2024年 企業の人材需要と採用の課題」
回答1.企業の人材需要
回答2.企業の人材採用の課題
回答3.人材業界の展望、自社の事業・サービス展開
アカリク 山田諒 代表取締役
- 労働人口が縮小する一方で、生成AIなどさまざまな技術革新が進む中、DX関連職や研究職といったポジションで「高度専門人材」の需要が高まっていると感じている。特に、高度な専門性とトランスファラブルスキルを有する「博士人材」の採用については、税優遇をはじめとした政府の活発な動きもあり、民間企業からもさらなる注目を集めると予測している。
- 新卒採用・中途採用どちらにおいても、高度な専門性を有する人材は求人数に対して不足しており、知名度・資金力のある企業が母集団を囲い込む傾向にある。採用競争の激化は今後も続くことが予測されるため、中堅・ベンチャー企業だけでなく、大手企業であってもターゲット人材を明確にした採用戦略、適切な媒体・エージェントの選定、自社にしかない魅力の醸成などがこれまで以上に重要課題に。
- マッチングによる就職・採用支援にとどまらず、利用企業と登録ユーザーのコミュニケーション機会をさまざまな形で創出することが今後重要になると感じている。当社は大学院生・理系学生・ポスドクの採用支援を行っている。今後さらに需要が高まる高度専門人材の採用に向けて、ターゲット人材の母集団形成から、歩留まり改善、採用ブランディングなど、各社の戦略・採用課題に合わせた支援を幅広く展開している。
アクシスコンサルティング 伊藤文隆 常務取締役
- 企業を取り巻く環境の変化への対応や中期経営計画の推進に対応できる即戦力層の採用ニーズが高まっている。コンサルティング業界においてはマネジャークラスが不足しており、各社採用を強化している。事業会社では、業界問わずDX/IT関連のニーズが多い。またサプライチェーンや新規事業の問い合わせも増えている。
- DX・IT・新規事業などの領域は即戦力層のニーズは高いものの、採用企業の現行人事制度では給与が合わないケースが増えている。また当該領域の人材は、各社争奪戦となっており内定受諾率も下がっていることもあり採用に時間が掛かっている。
- 労働市場において人材不足が加速する中、流動性を高めるだけでなく優秀な人材のスキルをシェアリングしていく必要がある。当社ではハイエンド人材にフォーカスした人材紹介事業とスキルシェア事業を展開。正社員紹介、フリーコンサル、スポットコンサルなどの複合的なサービスを提供し、事業・組織の課題解決と価値創造のパートナーとして、マーケットに貢献していく。
EDGE 佐原資寛 代表取締役
- 新卒採用、中途採用ともに採用需要が高止まりしており、サービス提供事業者側が強気に出ているケースも散見される。
- 採用難易度が高まり、例年通り前年踏襲の採用では成功しない。それに合わせて採用支援事業者が急増しており、一つの採用課題を取っても、どの事業者のどのサービスを使うことが自社にとって最適なのかを判断することが難しくなっている。
- 新卒採用・中途採用という既存の枠組みから脱却し、一度在籍したことがある元社員や内定を辞退された内定辞退者を次の採用母集団に変え、効率的に人事担当者の手間を煩わせることなく、かつ採用成功時の費用を抑えるサービスの提供を開始する。
アサイン 奥井亮 取締役
- 近年はコロナ禍で新卒採用をストップしていた企業がポテンシャル層の採用を積極的に行っていたが、採用充足の傾向を見せている。一方で、生成AIの登場により、DX推進やマーケティング高度化は更なる盛り上がりを見せており、経験を積んだミドル層の採用ニーズが高まっている。
- 働き手が減少する中で、企業は人材から選ばれる時代になっている。急速に変化する時代に対応するために企業は優秀な人材を採用する必要があるが、そういった人材が求める機会やキャリア、待遇を提示できるかが大きな分岐点になる。従来の評価/報酬制度の設計のみならず、機会提示や配置ポリシー、リスキリング戦略までも含めた人材開発戦略の設計が求められる。
- 採用活動を取り巻く環境が変化し続ける中、各企業がどのような組織戦略・採用戦略を描くべきかという相談をうける機会が増えている。従来の母集団形成やスクリーニング、意向形成に留まらず、企業とパートナーになりながら採用戦略から伴走することが求められている。だからこそ、従来の人材紹介だけではなく、ダイレクトリクルーティングやタレントマネジメントの高度化をサポートできる事業展開を進めていく。求職者側に目を向ければ、究極的にマッチングを効率化する方向性と、一人一人に寄り添い伴走する方向性のいずれかに進んでいくと考えており、さまざまなサービスや新機能が登場しているように感じる。当社としては、「個性や可能性を発揮するためのサポートを担う」というコンセプトのもと、長期的な視点でキャリア形成を支援することを重視し、オーダーメイドの支援を強化していく。
エリメントHRC 清水潤次 取締役
- 海外情勢(ロシア・ウクライナ/中東等)は注視しつつも、景気回復も緩やかに続いていくと予想。コロナ明け需要の一巡感はあるものの、ビジネスを加速する企業も一定以上あるのも事実。メディカルヘルスケアにおいては、医療×AI、ヘルステック系企業の成長も目覚ましい。優秀人材の取り合いは引き続き加速していく(AIエンジニアは引く手あまた)。コロナ明けのコミュニケーションという観点からでいうと(ITを除き)、当社のクライアントでは、オンライン=フルリモートから、対面に戻す企業が増加傾向。フル出社・ハイブリット勤務に戻しつつあり、今後も続いていくだろう。
- 特に「IT」などのスペシャリスト人材不足は続いていく可能性が高い。当社のクライアントにおいてもデータサイエンティスト/セキュリティエンジニア/プロジェクトマネジャー等の需要も増加傾向。いかに即戦力人材を引っ張っていけるかが課題だ。上記人材の囲い込みという部分では、働き方や待遇面等、候補者のニーズとのマッチ、企業としては着地点をどこに見出すかで、自社の採用数に大きく左右するだろう。
- 24年の人材業界は、HRテック・データドリブン・AIとのシナジーも進んでいくだろう。当社の基本スタンスは変わらない。Corporate philosophyとして掲げる「ENRICH ONE’S MIND」~人の心を豊かに~、Brand statementとして「人だけが、人をつなぐ」~私たちがすべてのステークホルダーに約束する企業としての価値~を全社員が胸に掲げ、業務に邁進していく。当社としては、ヘルスケア事業・IT事業(発足2年目)・ポジナス事業(看護師パーソナルトレーニング)を軸としながら、さらなる飛躍を目指していく。
アンテロープキャリアコンサルティング 林徹 ディレクター
- 日系金融機関においては、非常に強い採用ニーズが続いている状態だと認識している。一方で、外資金融機関における需要は不透明な状況が続いている。日系金融機関では、人事制度改定等を行い、専門的な知見スキルを保有する人材を処遇する等の運用も増えており、採用競争は厳しくなっているものと思われる。
- 専門性の高い人材に対し、外部マーケットに即した報酬提示を行うというカルチャーが醸成されていない企業もあり、他社や他業種から見た場合に、かなり劣後した報酬で採用しようとしているポジションも散見される。処遇制度を柔軟に運用できる企業ほど、上手く採用につながっている傾向にある。
- 当社としては、引き続き、金融業界、コンサルティングファーム向けの転職支援を中心に、「野心と向上心を持ったビジネスパーソンにチャレンジングな機会を提供する」という方針のもと、キャリア支援に従事していきたい。
キャリア インキュベーション 荒井裕之 代表取締役社長
- 世界的なリセッションの流れを受けて、コンサルティングファームを含む主に外資系企業で人材採用の動きが一服している印象を受ける。一方で事業に直結するような重要ポジションにおいてはより良い人材の獲得に注力している向きがあり、極めて優秀なプロフェッショナル人材へのニーズは一層高まっていく。
- 事業の拡大に合わせてリソースとしての人材確保に注力するも、成功しているのは一握りの印象。会社としての成長性や事業戦略/計画、働きやすさに資する制度設計、安定した財務状況、など地力の部分を候補者も見ている。VUCAの時代、大企業においても安心はできない。経営力がまさに問われてきている。
- 経営のプロフェッショナル、いわゆるプロ経営者が活躍し、企業の経営力を高めていくことが求められる。当社は創業以来プロフェッショナルへの支援に注力し、中長期的な関係構築に努めている。昨年はサーチファンド・ジャパンの2号ファンドの設立、プロ経営者・CxOキャリアを目指す人へ向けた書籍の出版などの活動を通じ、経営者を目指す人の”志”に寄り添ってきた。優秀な人材が企業の変革と成長を遂げるものと信じ、当社では引き続き情報の発信とネットワーク構築に尽力する。
MS-Japan 松林俊 キャリア事業部長
- 労働人口の減少に伴う慢性的な人手不足に陥っている企業が多い中で、23年は特に大手企業が採用活動に積極的だった。来期も同様の傾向が予想され、一定レベルの経験やスキルを持った人材を中心に需要の高い状態が続く。
- 大手の採用活動が活発化し、採用競争環境が激化している。そんな中、以前に比べて働き方を重視する求職者が増えたため、リモートワークやフレックスなど柔軟な労働環境を用意できるかどうかが重要となる。またやりがいを重視する人も増えているため、人手で行う必要がない業務を極力システム化し、人がやるべき業務に集中できる環境を用意することも重要だ。
- 企業の採用活動が活況であるため、人材業界自体も成長していくと予想される。求人媒体や人材紹介に加え、ダイレクトリクルーティングを活用する企業も増加しており、採用手法が多様化。当社は管理部門・士業領域に特化し、採用手法も人材紹介・ダイレクトリクルーティングと企業のニーズに合わせたサービス提供が可能なため、多面的に採用活動を支援し、企業の成長に貢献していく。
キャリア・デベロプメント・アソシエイツ 田辺晃 代表取締役社長
- 世界情勢による景気影響のリスクはあるが、業界問わず多くの企業が人手不足で採用しきれていない。引き続きコンサル、AI、IT人材のニーズはとても高い。EV、半導体、家電、医療関連でもニッチな先端技術の開発経験者を求めている。またベンチャーや成長企業でCxOのポジションも増えているため、優秀な人材の争奪戦となっている。
- 「多くの企業が同じポジションで同じようなターゲット人材を求めるため、自社が比較検討で優位になる明確ポイントが求められる。リモートワーク・副業希望など新たな環境準備も他社比較で大きな要因となっている」と1年前にアンケートに回答したが、採用実績で顕著になっていて継続する見込み。さらにグローバル人材は海外の給与条件と比較する機会も出て、人材流出も考えられる。求人スペックをなかなか下げることもできず、人材不足の中で長期的に採用ができていないことから現場の疲弊や、企業成長に影響が出てしまうため、条件面の見直しや育成の強化など経営戦略として重要になっていく。
- テクノロジーの向上により求人企業と求職者のマッチングサービスや、求職者が求人情報に触れやすいサービスがさらに広がっている。人材紹介会社でも多くの情報を扱っている大手企業はテクノロジーを活用しながら売り上げ向上を図っている。また、特化した業界に強みを持つ企業も増えており、変化に対応できない企業では求職者の獲得に苦戦する傾向が加速すると予測できる。当社は設立当初から各業界の技術者や経営者として経験してきたコンサルタントが揃っているため、ハイクラスエンジニアとエグゼクティブの紹介でクライアント企業と日本の成長に貢献し続けていく。
クレドス 田中潤 代表取締役CEO
- 22年のウクライナ侵攻に続き、23年は中東情勢や台湾有事などの懸念が続いたが、米中対立の緊張感も緩和の方向に向かっていると感じる。円安誘導の効果もあってか、インバウンド需要の高まりもあり、景気は回復基調にあるのではないか。そうした中、DX系のプロ人材の需要は高く、24年も「売り手市場」は続くことが予想されると思われる。
- デジタル執行役員(CDO:Chief Digital Officer)のポジションも上場企業を中心に定着しつつあるが、デジタル人材の採用要件も22年は「メタバース」で、23年は「AI」。24年は全く新しい概念が人材採用ニーズを牽引することも予想され、周回遅れの日本にもチャンスの兆しが業界では期待されている。海外の最先端DX動向に敏感になる経営幹部が増え、経営を支える中堅幹部のニーズが今後はさらに高まることが予想される。
- 当社の人材紹介事業の決定実績としては、外資系コンサルティング会社と日系グローバルコンサルティング会社が中心になるが、コンサル事業全体としては、業界全体として10%から20%伸長が今後5年程度続くと思われる。PMIやDXコンサルタントの需要は常に高く、それと同時に デジタル執行役員とCDO補佐のポジションへのプレースメントも増えることが予想される。またトヨタ自動車の例でもある通り、ブランド執行役員(CBO:Chief Branding Officer) の需要も潜在的に高まる気配を感じており、各クライアント企業にマッチした人材ニーズに応えたいと考える。
キーンバウム ジャパン/K.J.コンサルタンツ 鈴木悦司 代表取締役社長
- 現下の企業の人材需要は全体でみればコロナ禍で絞り込んだ人材を取り戻すために採用については積極的との感触を持っている。もちろん、例えばコロナの影響が甚大だった宿泊業や飲食サービス業では急激な人手不足に見舞われ、製造業ではコロナ以前から言われていたDX人材が継続して足りないなど業界で様相は異にするが、全体として今後も継続した人材需要増は期待できる。
ただし、これも糸口が見えたかに思われるデフレからの脱却-継続したインフレと賃金の上昇-を実現できるかに大きく依存する。 - (日本企業の)人材採用の課題として、“伝統的な日本の企業文化”が採用において、特に中途採用で大きなバリヤーになっていると感じる。例えば、日本企業において有為な人材を採用するために社内の給与テーブルから逸脱しても獲得するということが難しいのが現状だろう。
グローバル企業へ脱皮するためにグローバル人事制度のプラットホームをつくっても肝心の日本本社の人事が対応できず、このことが日本本社の一番の人事課題となっているという声を複数の企業から聞いた。採用において、横並び主義から脱皮し、市場原理に従うべきではないだろうか。 - 例えば、DXの進展から社内人材の“リスキリング”で必要な技能を身につけさせる、あるいは、自動車メーカーで内燃機関のエンジニアがEV開発部門に配転となる、といったケースを耳にする。もちろん社内で人材の有効活用のための再教育(リスキリング)も有効な手段であろうが、広く人材市場から有為な人材を求めることが社会としてはより効率的なのではないだろうか。人材の流動性を高めることより、より合理的、効率的な企業、社会の生成に貢献できればと願っている。
経営者JP 井上和幸 代表取締役社長・CEO
- 24年は戦後史上空前の人材難の年となるだろう。あらゆるセグメントで必要な人材を確保し切れない状況となり、新卒、若手〜中堅の中途、アルバイト・パート、エグゼクティブ中途、それぞれで自社が欲しい人材の質・量両面での争奪戦となる。また、こうした状況から採用実施での問題も噴出し(妥協した採用、採用時のすり合わせ不足、動機付け不足)、入社後の早期退職もさらに増加すると見ている。
- 新卒、若手〜中堅の中途採用とアルバイト・パートでは相対的に受け身の若手世代をどう惹きつけるかが課題となり、エグゼクティブ採用においては入社後の活躍確率を担保する本質的なマッチングとフォローを兼ね備えた採用を行えるかが鍵となる。
- 空前の人材難が予想される2024年、当社では経営候補者、管理職候補者についてのアセスメントを強化し(「経営人材度診断」)、マネジメントチームの最適編成の観点、「クライアント各社の経営課題を、志高き経営人材・幹部人材の最適配置で解決する」ことに徹底的にこだわったマッチング、候補者供給を行っていく。
KMF PARTNERS 吉田亜紀子 Sales&Marketing division Director
- 消費財業界に関していえば、人材需要はすでにコロナ前のレベルに戻ってきている。業界で見ると、リテール業界、一般消費財、高級商材などの業界の人材ニーズが特に高くなってきている。IT業界に関しては、拡大と維持の方向によって採用の仕方も二分されてきている。全般には採用需要は高いといえるだろう。
- 業界を問わず、どの企業も採用には苦戦をしている。要因の一つとして人材データベースへの登録が盛んになってきた影響で、候補者に多くの選択肢や、オファーが集まってきたことが挙げられる。採用競争が激しくなってくる中で、企業としては、質の高いエージェントの活用、リファラル採用、ダイレクトスカウトなど、複数の手法を組み合わせる必要が出てきているのではないかと思う。
- ここ数年で、人材紹介事業者は増加傾向となっており、競争環境は激化していると思われる。転職市場がより拡大するということの裏付けになるだろう。当社は基本方針となる、質の高いコンサルタントを擁することによる、業界に精通した知識、マッチングの高い提案、難易度の高い採用の支援などを、高いサービスレベルで提供することを約束する。
ジェイ エイ シー リクルートメント 田崎ひろみ 代表取締役会長兼社長
- 24年4月より残業時間の上限規制が全業種で適用となることもあり、人手不足は一層深刻化する。地球環境問題の深刻化への対応など企業に求められる社会的責任が増すと同時に、デジタル化やグローバル化などによる事業の変革スピードも加速するため、当社が得意とするスペシャリストや管理職の需要はさらに高まることが予想される。世の中の変化が激しく、即戦力人材を外部から採って事業を成長させたい企業が増えている。中途採用人材には、スキルだけでなく、培ってきた人脈の広さや社内メンバーの育成、ロールモデルとしての役割も期待されている。
- 人々の生活スタイルや価値観が多様化し、企業も多様性、柔軟性をもった採用形態が求められるようになっている。人手不足により、AIツールなどを活用して省力化が進む一方、能力が高い、より優れた人材が求められ、このような優秀な人材は取り合いになっている。人材をいかに確保し、維持するかが企業の課題となっている。
- 国内外に展開する当社は、スペシャリストや経営幹部・管理職人材の紹介に特化したコンサルテーション型の人材紹介会社だ。専門性の高いプロフェッショナルな人材を確保する傾向が強まっている中、企業が必要とするスキルと、人材が持つスキルや経験を見極めて適切な人材を発掘できるような業界・専門知識を持ったコンサルタントがいる我々のようなエージェントの真価が今後さらに発揮されていくと考えている。
コンコードエグゼクティブグループ 餘茂田一成 ディレクター
- デジタル対応、新規事業やM&Aなど、企業の大規模な変革が不可欠となる中、採用ニーズの強い状況は継続すると見込まれる。特に組織を牽引するエグゼクティブ層の人材需要は強い。また、SDGsやESGなど、既存社員では対応が難しい課題も増えており、求められる人材も多様化していくことが予想される。
インフレや紛争などによる景気悪化の恐れはあるが、人材不足は日本の構造的な課題であり人材需要は引き続き強い状況が続くことが予想される。 - 人材獲得競争の激化は続いている。高額な給与を提示するだけでは優秀な人材の採用は難しい。例えば、入社前に業務内容を明確にすることと合わせて、組織構成やポジションの役割を丁寧に伝えることで、候補者が入社後に活躍できるイメージを持てるようにすることも効果的だ。
候補者自身が輝ける場所であることが、意思決定に大きな影響を与える。また誠実に候補者に向き合うことで、過去辞退した候補者からの再応募や周囲の優秀な人材を紹介していただける事例も増えている。 - 人材獲得競争の激化やテクノロジーの進化により、人材業界に求められることも変化が出ている。企業に対しては、単なるマッチングサービスではなく、企業自身も気づかない採用ニーズの掘り下げや人材要件の再定義、候補者毎に訴求すべきアピール方法の提案等が、従来よりも求められるようになっている。また候補者には、価値観に寄り添い伴走する姿勢が求められる。情報量が増えて逆に意思決定が難しくなる現代において、候補者の志向を深く理解した上で、適切なリーダーシップを持って関わることも重要だ。
テクノブレーン 北川太 代表取締役
- 業種を問わず、IT系エンジニアの不足感は高く、企業の採用ニーズは高い水準にある。世界情勢の不安、物価高など、経済の先行き不安が採用に及ぼす影響が考えられるものの、研究開発や先端技術の開発者の職種、すなわちAI等の新技術や、半導体をはじめとする国内製造、防衛関連企業などの分野においてはすでに人材獲得競争が激化している。
- 採用を成功させるためには、採用スピードと貪欲さが求められているのは従前のとおりだが、物価高・インフレ傾向においては、求職者はより高い給与・条件を求める傾向が強まっている。そのため、フィーアップによる従業員のつなぎ止めの一方で、新規採用においてはより良い条件を提示するといった企業の体力が必要とされる状況になった。コスト増を利益に転換するため、より優秀な人材を獲得する必要が高まる中で、制度の見直し、キャリアチェンジを行う人材・求職者に向けたジョブディスクリプションの明確化、入社後のキャリアプラン提示など、自らの魅力を強力に発信し実践する採用活動が、労働人口が減少する状況でのスタンダードとなるだろう。
ヒューマンリソシア 御旅屋(おたや)貢 代表取締役
- 企業の採用ニーズは24年も継続して拡大すると予測している。22年に右肩上がりに上昇した有効求人倍率は、23年を通して高止まりしているなど、人材需要は旺盛だ。特に、「2024年問題」といわれる時間外労働の上限規制適用を控えた建設業界、さらにはDXの進展に伴うDX・IT人材ニーズは一層高まると考えている。
- 23年は、「賃上げ」や「リスキリング」といったキーワードが注目を集め、また生成AI活用への期待感が高まった。24年においては、こうした定着や育成への課題、また次々と新たに登場するDXツールを活用していくにあたり、必要となる人材確保への対応も必要となるだろう。特に、DX活用による生産性向上のためには、リスキリングによる社員の育成は避けて通れない。
こうした従来の「採用」の枠組みを超え、人事戦略の枠組みの中で新たな問題が顕在化してくると予測している。 - 当社はこれまで、人材紹介・派遣サービスによる人材採用の支援と、DXツール利活用による自動化支援の両面から、顧客企業の労働力確保を支援してきた。今後企業は、人材採用の強化と、生成AIをはじめ新たなテクノロジー活用によるDX推進および生産性向上への取り組みを加速させるだろう。こうした社会やビジネス環境が大きく変化する中においても、多方面から、顧客企業の労働力確保を担える存在となるべく、新たなサービス展開に取り組んでいく。
パーソルキャリア 加々美祐介 doda編集長
- 採用ニーズは高い水準にあり、今後も転職市場は個人と法人の双方ともに活発になると推測される。新型コロナの影響で採用を一時停止した企業が一定期間採用できていなかった分の人材を確保する動きが見られ、コロナ前の求人数を上回る「リバウンド需要」が顕著になっている。こうした状況を受け、今後も高水準の求人数を維持するだろう。また、24年も引き続き、将来を担う人材を育成するために若手人材の採用と、技術力や知識・経験を持つ即戦力人材の採用が強化され、採用の二極化が進むと考えられる。
- 今後も人口減少が続き、労働力不足のさらなる深刻化が見込まれる中で、採用難易度は高まっていくだろう。企業は従来の正社員、経験者採用に加え、特にIT人材においては育成を前提としたポテンシャル採用や、高いスキルを求める場合には副業・フリーランスといった“雇用以外”の受け入れも選択肢にいれる必要性が高まる。
さらにコロナ禍を経て、個人の価値観はより一層多様化している。生き方を含め、彼らが自分らしい働き方を実現できるよう、人事制度の改定やラーニング等の機会提供も、人材獲得における重要な鍵となるだろう。 - ヒト・企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中で、人材業界に求められるものも「転職・採用支援」から「自身が望むキャリアを叶えるために伴走すること」「自社が抱える“ヒト”にまつわる課題を共に解決すること」へ変化していると感じる。さらに企業存続に向けてハイスキルの人材を求める声や“雇用”という形にとらわれないニーズも高まっていくだろう。当社では、「転職・採用支援サービス」を主軸としながらも「学び(リスキリング)」や選択肢を広げるための「副業・フリーランス」、会社の中核を担う「CXO」などのハイクラス人材紹介事業にもより注力していく。
みらいワークス 岡本祥治 代表取締役社長
- アフターコロナになり、景気がプラスに働いている会社と、世界的な物価高や情勢の不安定さからマイナスとなっている会社とが入り乱れている。全体でいうと、人材需要は伸びている。コロナによるリモートワークの普及、DXの推進等、デジタル人材の必要性がさまざまな企業で増しているが、デジタル人材を新卒だけで補うのは難しいため、この領域における中途採用は最も活発化している。さらに、これからもっと活発化していくだろう。
- デジタル人材が都市部に集中し過ぎていて、都市部と地方の格差がますます広がっている。中途ニーズは高まっているが、未だジョブ型雇用にシフトできていない会社は、中途採用で入社した人を活用しきれていない。新卒採用は“一括採用”という日本古来の採用にこだわりすぎていて、より社会貢献性や存在意義といったパーパスを重視した会社選びをする若者が増えているのに、会社がそれに対応しきれておらず、ミスマッチが生まれる原因となっている。
- フリーランスや副業という働き方が、ますます一般的になってきた。今までフリーランスや副業をやりたい人はいたが、活用する企業が少ないという状況だった。しかし、正社員の確保がますます難しくなることが現実味を帯びてきている中、多様な働き方による人材調達に目を向けている経営者が増えてきている。この状況は、当社のサービスにとって強い追い風となっている。
フォルトナ 荒井良介 マーケティングマネージャー
- コンサルティング業界全体の動向として、DX需要の拡大に伴い引き続き業績好調な企業が多い一方で、人材需要についてはコロナ禍以来の活況は落ち着きはじめている。DXのフェーズが検討段階から実行段階に移行しており、若手や未経験のポテンシャル採用が縮小し、即戦力となるコンサル経験者やテクノロジーの活用経験をもつミドル層の採用をめぐり、熾烈な採用競争が繰り広げられている。
- 採用が過熱する中で、条件面のほかに働き方やキャリアプランを整備することの重要性が高まっている。ダイバーシティを尊重しながら多様なワークスタイルを提供したり、社内での柔軟なキャリアパスを示したりするなど、各社で試行錯誤が進んでいる。さまざまなチャネルを駆使して「自社ならではの魅力づけ」をすることが必要だと推察される。
- キャリアが多様化する中で、相談を受ける転職エージェント自身も、多様な生き方を体現し、より詳細なキャリアニーズに対応できるよう専門性を磨く必要があると考える。当社では、社員幸福度No.1を掲げ、海外移住や起業など社員自身がありたい姿を実現できる制度を強化していくとともに、ベンチャー、エグゼクティブ、ヘルスケアといったより専門性の高い転職支援サービスを展開することで、さまざまな転職ニーズに応える体制を構築する。
プライマリー・アシスト 石山知良 代表取締役社長
- 人流が戻り海外と人の流れも戻ったことにより第3次産業の業績も回復し、人材需要は業界問わず高まりを見せている。出生数が70万人台の予測も出ており、若年労働層の不足はより人材不足に拍車をかけている。企業はDX人材の確保や育成に舵を切っており、環境の変化に対応できることがより重要になってきている。
- 媒体募集を出すも、なかなか応募数が伸びないという声が多く聞こえてきた。募集職種により、媒体、スカウト、エージェントなど使い分けることが必要になり、エージェントも職種に特化したサービス展開もより選ばれるようになった。採用企業にとっては、人手確保の競争がますます激化していくと想定される。
- 少子高齢化に伴う若年人材の不足と、高齢者の雇用促進により人材業界の追い風は続く。当社では、従業員の健康推進を担う医療人材に特化し、また企業内看護職の教育支援に力を入れている。入社がゴールではなく、長く活躍できるためのさまざまな企画を増やしていく。
プロフェッショナルネットワーク 松島剛 代表取締役社長
- 各企業で人不足感は常に高まっており、従来では目を向けていなかったレイヤー(中高年・シニア層)へも目を向ける企業が増えてきている。要求への多少のアンマッチは吞み込んで面接までは受けていただけるケースも増えており、求職者側は職を得やすい時代になって行くと考えられる。
- ジョブ型雇用やサブワーク等多様な働き方が出現しているが、法律や企業の体制はそれらに対応できるようになっていないことがほとんどだ。まずは採用する企業が新しい時代の働き方に対応した人事・評価制度を作ることが急務と考える。
- 採用する企業の人事部が縮小傾向であり、人材の調達については専門の会社に外注をするというケースが今後増えていくと考えられる。大手企業では既に行っているが、これからは会社ごとに人材紹介会社に採用業務自体を委託するというケースが増えていくであろうと考えられ、当社としても事実そういった案件が増加している。ともすれば水物な人材業界では安定的な収益源の確保は重要なことであるので、こういった業務は人材業界の大きな柱へ成長していくと考えている。
RYZE Consulting ウィリアム・デローム 代表取締役
- 外資系、日系を問わず、テクノロジー市場における専門的な人材紹介の需要は依然高く、競争も激しい。最も高需要なのは外資系中小テクノロジー企業だ。大企業では買収や組織再編によるレイオフが発表されているが、経験豊富な人材を必要とする中小企業には優秀人材採用のチャンスとなるだろう。専門技術者や特に営業職の需要は引き続き旺盛で、激しい競争が続いている。企業は採用難を解決するための高度な採用サービスを求めている。
- 特に中小規模のハイテク企業で、すべての職務にハイレベルな英語力を求めている。営業職の採用では、業界の専門知識と実績が重要な焦点となる。技術者にとっては、AIのスキルは非常に価値があり需要が高い。企業は現在、学歴よりもスキルと経験、転職者が即座に企業にもたらす価値を重視している。
- 政府が終身雇用からジョブ型雇用への転換を提言しているものの、日本は全体的に転職でキャリアップするという意識が薄く、必要な人材を探し出し採用するのが非常に難しい市場だと思う。海外とは異なり、日本ではネットでの転職活動が浸透しておらず、転職活動する人の総数や返信率も非常に低いのが現状で、これが日本の労働市場の特徴だ。そういった意味で、日本の人材紹介業界は企業の採用計画において非常に重要な役割を担っていると言えるだろう。当社は、転職サイトなどのオンラインリソースを使用せずに、正確なサーチとターゲティングによりクライアントのために採用を行う。これにより転職市場にいない優秀人材を見つけることができる。各クライアントに特化したサーチを先鋭化することで、多くの企業の採用問題を解決していく。
リクルート 藤井薫 HR統括編集長
- 構造的な人材不足とビジネスモデル転換を背景に、社員領域では、これまで以上にキャリア採用を強化する企業が拡大している。実際、営業、販売、企画・マーケティング、IT、生産まで、ほぼ全ての職種でコロナ禍以前の水準を超えて活況だ。24年も企業によって濃淡があるが、既存事業の拡大・新規事業の推進を担う専門スキルや経験を持った人材をターゲットとした、キャリア採用は活発化すると考えられる。
- 各社のキャリア採用の拡大、人材争奪戦の過熱を背景に、キャリア採用の難易度は上がっている。実際、当社の調査では、前年度と比較して難易度が上昇していると実感している人事は43.3%。採用競合の増加を実感している人事が54.2%にのぼっている。こうした中、各社は、業界未経験者までの採用ターゲットの拡大や、テレワークなどの働き方の柔軟性向上、報酬制度の改定、入社後リスキリングの充実など、さまざまな採用手法を深化させている。また人事任せだった採用体制から、経営・現場・人事が一体になった採用体制を構築することも鍵となる。
- 日本型雇用の転換点にある今、円滑な労働移動と生産性の向上、経営戦略と採用戦略の連動する人的資本経営の実践、そして、働く一人一人のキャリア・オーナーシップの支援は、人材業界の大きな使命だと感じている。
リネアコンサルティング 大森崇 代表取締役社長
- 23年はコロナ禍からの脱却が図られ、世界的に経済が回復、日本においてもインバウンド需要の回復やDXバブルによる攻めの経営が経済を下支えした。一方で円安による歴史的な物価高が続き、物価上昇率に賃金上昇率が追い付かない状況が消費者マインドの冷え込みを招いた。また、政府の総合経済対策や少子化対策は将来の増税に対する懸念もあり、経済の底上げ効果は限定的だと思われる。コンサルティング業界においては、DX需要が一巡する中、この数年で採用した大量のポテンシャル人材の再教育や再配置が重要な経営課題となっている。SDGsなどの社会アジェンダ関連の需要はあるが、専門性が求められる点、短期的な利益には結びつかない点で大きなトレンドにはなりにくい。
一方で新規事業戦略、M&A、グローバル案件、コスト削減などのテーマは引き続きニーズが見込まれるため、24年はポテンシャル採用が激減し、専門性の高い即戦力人材の採用ニーズが増えることが予想される。 - コロナ後の景気回復が緩やかになる中、企業は新たな成長戦略を模索し、より専門性の高い即戦力の採用が進む。また、この数年で採用した人材の適材配置やリスキリングが重要な経営課題となる。人事は企業の戦略を深く理解し、その戦略に合った採用や育成戦略のかじ取りが求められる。
- 人材業界においてはAIやDXによる効率的な転職支援サービスが増え、単なる効率化や数を追うスカウト手法などは通用しなくなる。ただ効率化や自動化ではない人に寄り添った納得感や合理性の醸成のニーズは残り、そのようなサービスも増えていくだろう。
RUFT 武田友和 取締役
- 多くの企業が人手不足に陥っている中で、採用需要は強いと感じている。ただし、採用する人材の要件や希望はより質が高くなっており、DX人材をはじめとする専門分野の即戦力人材の獲得競争はより一層の激しさを増すと考えている。また人材需要においては経済(景気)の流れも大事であり、世界情勢が不安な部分もあるため注視する必要がある。
- 優秀な人材の採用は年々難易度が高まっており、人事部と現場との連携が大事だと感じている。人事制度や評価制度など中期的に改善していくことはもちろんだが、選考のスピードや柔軟性、そしてキャリアイメージの明確化などの魅力付けがより重要になると推察する。加えて自己実現やワークライフバランスの重要度が高まっている求職者ニーズにどのように応えていくのかが重要となっている。
- 当社は、社員のエンゲージメントを高めるコンサルティングを手掛けており、人材紹介においては価値観の一致を重視するマッチングによってミスマッチを防いでいる。企業の採用においてはエージェント以外の手段が増えてきた中で、短期的な目線だけではなく中長期的に企業と求職者がWin-Winとなるよう、定着性も意識した上でサービスを展開していく。
レックスアドバイザーズ 岡村康男 代表取締役
- 社員の高齢化と企業内リスキリングの難しさから、企業の人不足感が増しており、転職しやすい社会環境にもなった影響で、人材の流動性は高まり、必然的に人材需要も旺盛になると予想する。
- 個社それぞれの成長に不可欠な職種や若手人材の採用競争は激しく、採用は経営継続する上での重要課題となっている。人材採用競争に勝てる人員体制作りと、採用パートナーの確保が成長に不可欠と考える。
- 採用難が増すに従い、企業はさまざまな採用手法にトライしている。スキマ時間バイト、スキルシェア・外部専門人材の活用は、今後活発化するだろうと予想。中途正社員採用を担う人材エージェントとしても、従来の枠組みにとらわれない人材支援、ひいては経営課題を解決するサービスを練り上げることが、顧客企業に選ばれ続ける要素となり得ると考え、顧客個社の声を聞き分け、経営パートナーになれるよう一層努力していく。
ロバート・ウォルターズ・ジャパン ジェレミー・サンプソン 代表取締役
- 日本では多くの企業が慢性的な人材不足に陥っており、今後も引き続き人材不足が予想される。また、23年はインフレ等の経済的な影響を受けた企業も多く、優秀な人材確保が難しくなると予想していることから、特に優秀な人材の「採用」と「離職防止」がカギとなることが予測される。特に経験のあるシニア・係長職の人材への需要が非常に高まっている。
- プロフェッショナルは企業に給与だけではなく、柔軟なワークスタイル等のワークライフバランスの改善を求める声が高くなっている。人材需要の高い分野・職務では、より良い「給与」と「待遇」を掲げての人材獲得競争が激化しているが、プロフェショナル自身は、勤務先の福利厚生をきちんと認識できていない場合が多く、企業が福利厚生を人材不足の打開策・離職率改善のための施策として十分に活かしきれていない実態があることが当社の調査から明らかになった。今後企業は、福利厚生等の活発な活用を促す施策が必要となるだろう。また、優秀な人材を獲得し保持するため、「多様性」もキーワードになるだろう。多様性の価値を認め、誰もが活躍・成長、そして働きやすい組織づくりが重要となっていくだろう。
- 当社は、1985年に英国ロンドンで設立されたスペシャリストに特化した人材紹介会社だ。世界31カ国の主要都市にオフィスを構え、日本においては2000年に東京オフィス、2007年に大阪オフィスを設立。主にグローバル人材の転職/採用支援において信頼と実績を築いてきた。日本では正社員、派遣・契約社員の人材紹介を行っており、世界有数のトップ企業から新規参入企業、中小企業に至るまで、多岐に渡る業種・職種と幅広い採用ニーズに応えた人材紹介を行っている。これまで世界に挑戦するアスリート、アーティスト、各種NPO支援など社会貢献にも積極的に取り組んでいる。
ワークス・ジャパン 清水信一郎 代表取締役社長
- 需要は高く推移するとは思うが、現在の「人材不足感」が労働時間の制限からくる相対的な不足なのか、特定職種での不足なのかがつかみづらい。人材の在り方は個々の企業の成長を左右するが、日本経済の持続的成長を支えるには、どの分野の人材不足を解消していくのが先決なのか、グランドデザインを描かないでの場当たり的な対応は無駄な施策を続けることになると懸念している。
- 給与、賃金条件が、求人側、求職側で共通かつ重要なファクターになってきている。相互に正直ベースで評価しようという姿勢は本来のものであるので好ましいと思うが、給与を上げるために転職することが当たり前のことになってしまうと、労使間の信頼を築いてくのは難しくなる。たとえば新卒者が新入社員として企業に入社すると同時に転職サイトに登録することが増えているという。「そういう時代」だからというのでは済まされない兆候だと思う。
- 人材業界でもAIを活用したサービスが多く出てきているが、利便性の追求だけに偏ったAIの活用は、人材、企業にとって必ずしもメリットばかりではない。求職者が自身の職業適性を考えるきっかけとしてAIマッチングを活用するのはありだが、鵜呑みにした行動のリスクは高い。当社では、企業側からの発信によって人材の企業理解が深まるという、シンプルだが根源的な人材マッチング施策を丁寧に展開していく。