堀江貴文さん著書の映画化を手がけた映画監督の流儀「まずやってみることが大事」

有名作品を手掛ける映画監督として活躍されているハシテツヤさん。学生時代に打ち込んでいたバンド活動から音楽制作を経て、地下アイドルプロデューサー、そして映像製作の世界へと活躍の場を広げています。映画監督として有名作品を手掛けるようになった経緯や仕事でのこだわり、今後作ってみたい映像作品について伺いました。

ゲーム音楽クリエイターから映画監督に転身

堀江貴文さん著書の映画化を手がけた映画監督の流儀「まずやってみることが大事」

学生時代は、バンドブームに乗っかって私もバンド活動をして、PCで音楽を制作していました。同時期にゲーム人気が高騰して、ゲーム音楽を制作する仕事が世の中にたくさんありました。私のような音楽好きの学生に仕事が回って来ることが多かったんです。

ゲーム会社側も社内にグラフィック担当やプログラマーはいても、音楽制作は外注するということが主流でした。私も学生時代にゲーム音楽である程度稼げるようになったので、大学を中退してゲーム音楽クリエイターとして活動をしていました。大手レコード会社のレーベルでメジャーCDを発売したこともあり、全国のショップに自分のCDが並んでいるのを見るのは嬉しかったですね。

その後、ゲームバブルが弾けたことによって音楽制作の仕事が激減。ホームページ制作の仕事を細々と請け負っていました。そしてプログラミングのスキルをさらに磨くために、職業訓練校でスマートフォンのゲームアプリを制作する勉強を始め、卒業と同時にゲーム制作を始めました。

ゲーム制作を続けるなかで、とある芸能事務所の方に声をかけていただきました。事務所に所属する女性を何人かで組ませてアイドルグループをつくって、楽曲を提供して欲しいという内容でした。それが地下アイドルプロデューサーとしてのはじまりです。

プロデュースをするうえで楽曲だけではなく、ミュージックビデオを撮ろうということになり、映像を勉強することになります。ミュージックビデオを見よう見真似でつくっていたところ、AKB48グループのひとつ『MNL48』のプロデューサーとたまたまつながり、『MNL48』のミュージックビデオ制作の仕事が舞い込んで来ました。

これが私のミュージックビデオ監督デビュー作となります。映像をつくるのはとても楽しいと思っていたので、自主映画を撮ったりもしていました。

当時、堀江貴文さんのオンラインサロンに入っていて、サロン仲間に「映画をつくりたいんだけど興味がある人がいたら一緒にやりましょう」という話をしていたところ、堀江さん自身から、著書『多動力』の映画化の話がありました。やったこともないのに即OKをして、初めて本格的に映画制作を始めることになります。

「まずやってみよう」という姿勢が大切

堀江貴文さん著書の映画化を手がけた映画監督の流儀「まずやってみることが大事」

考える前に「まずはやってみよう」というのが私の仕事の姿勢です。映画制作については教えてもらったことがないので、すべて独学でした。何が正しいのかもわからない状況なので、とにかく制作回数を重ねて経験を積むしかないのです。

『多動力』の制作も学生やサラリーマンなどの集まりで、映像のプロは一人もいません。私も原作を元に初めて監督・脚本を手掛けました。素人がつくるので大したものはできないだろうけど、「ホリエモンの映画制作に携わった」と話したら、周りからすごいと言われるから頑張ろうと思っていました。

いま観たら自主製作映画レベルの仕上がりですが、Amazonプライムで観ることができたり、出演者も著名な方だったりと案外すごいんですよ。私にとってとても貴重な経験でした。

MNL48、ホリエモンと著名な方との仕事が続いた後に、資金調達力のある方から映画制作の依頼がありました。それがワニブックス発行のアニメ『セイキマツブルー』の映画化の話です。

その制作現場では、カメラマンや音響の方もみんなプロの方々。カメラマンには自分が映画のド素人であることを事前に伝えて、撮影現場でもたくさん質問をして本当にいろいろと勉強させていただきました。プロの方とチームを組んで映画を作り込むと、多大な費用がかかることを知りましたね。前作がお金のかからない映画だったので、その差がすごかったです(笑)

映画監督の一番の仕事は撮影現場の良い空気づくり

堀江貴文さん著書の映画化を手がけた映画監督の流儀「まずやってみることが大事」

映画制作の際に最もこだわっているのは、現場の空気感です。たとえば私が絵描きだとしたら、出演者は絵の具です。絵の具を粗末に扱うと良い色は出ません。出演者もスタッフも丁寧に接して、良い空気の中で良い作品が出来あがります。もし、誰かに怒らなくてはいけないことが起こっても、その場ではなく別で話をします。その場で怒ると当然空気が悪くなりますよね。

初めて映画に出演する俳優がいたとしたら、最高のパフォーマンスを発揮してもらうために、その人の良いところを褒めて自信をつけさせます。映画制作に関わる人全員が良い気持ちで仕事ができるようにするのが、監督の一番の仕事だと思います。

私は教育分野にも興味があります。映像はエンターテイメントですが、ただ観て楽しいだけではなく、観た人に何かプラスになるようなものをつくりたいですね。日本人に対して、日本人だからこその美徳を思い出して欲しいという気持ちが強いです。映画観賞後に協調性や品格について、改めて考え直す機会になったらうれしいと思います。

私が嫌いな言葉は「悪名は無名に勝る」です。迷惑行為や炎上行為で知名度を上げてお金を稼ごうとするのは日本人の美徳に恥じると思います。そんな恥ずべき行為に鉄槌を下すような映画をつくっていきたいです。