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身内の方が亡くなった後、葬儀にかかった費用の一部の支給を受けたり、故人にかかった医療費の一部の払い戻しを受けたりすることができる制度があります。

葬儀費用の一部の支給を受ける制度は、故人が加入していた保険の種類によって名称が異なります。

国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は「葬祭費」として、会社員等で健康保険や協会けんぽに加入していた場合は「埋葬料」として一定の金額が支給されます。

故人にかかった医療費が一定の金額を超えていた場合は、国民健康保険に加入していた場合でも会社の健康保険に加入していた場合でも、同様に医療費の一部の払い戻しを受けることができます。

この制度のことを「高額医療費支給制度」といいます。

以上の3つの制度について、詳しくみていきましょう。

葬祭費とは

葬祭費は、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた人が亡くなった場合に、その方の葬祭を行った人(喪主など)に支給されるお金です。

支給金額は自治体によって異なっており、1~7万円と幅があります。

支給を受けるためには、葬祭行った人から申請することが必要です。

自動的に支給されるものではありません。

なお、葬祭費は葬祭にかかった費用の一部を自治体が負担するための支給金であるため、実際に葬儀を行っていない場合は支給されませんので注意してください。

葬祭費の申請方法

葬祭費の申請は、葬祭が行われた日の翌日から2年以内にする必要があります。

この期間を過ぎると時効になりますので注意してください。

国民健康保険に加入していた人が亡くなったら、市区町村役場で資格喪失手続をして健康保険証を返却しなければなりません。

その際に葬祭費の申請も併せて行っておくと良いでしょう。

申請する際に必要となるものは自治体によって少し違いますが、標準的なところをまとめておきます。

申請先 故人が住んでいた市区町村の役場の担当窓口(国保年金課など)
申請できる人 葬祭を行った人(喪主など)
提出書類 申請書
必要なもの 葬祭の領収書、申請者の印鑑、振込口座の分かるものなど
手数料 不要

埋葬料とは

埋葬料の支給を受けることができるのは、故人に生計を維持されていた家族で、埋葬を行った人です。

被保険者本人ではなく、扶養家族が亡くなった場合は家族埋葬料が被保険者に支給されます。

支給金額は埋葬料・家族埋葬料ともに一律5万円です。

埋葬料も葬祭費と同じように、申請しなければ支給されませんので、忘れずに申請しましょう。

埋葬料も、埋葬にかかった費用の一部を自治体が負担するための支給金であるため、実際に埋葬していない場合は支給されませんので注意してください。

埋葬料の申請方法

埋葬料の申請は、故人が亡くなった日の翌日から2年以内にする必要があります。

2年で時効になるのは葬祭費の場合と同じですが、葬祭費が「葬祭が行われた日の翌日から2年」で時効になるのとは違い、埋葬料の方が少し早く時効になってしまうので注意してください。

健康保険証を年金事務所や健康保険組合に返却する際に埋葬料の申請も併せて行っておくと良いでしょう。

申請する際に必要となるものは健康保険組合ごとに違う場合もありますが、標準的なところをまとめておきます。

申請先 故人が勤務していた会社の健康保険組合もしくは勤務先会社を管轄する年金事務所
申請できる人 故人に生計を維持されていて埋葬を行った人
提出書類 申請書
必要なもの 住民票、埋葬許可証のコピー、埋葬の領収書、申請者の印鑑、振込口座の分かるものなど
手数料 不要

埋葬料の申請書の書き方

埋葬料を申請するためには、「健康保険被保険者(家族)埋葬料(費)支給申請書」という書類に記入して提出することが必要です。

協会けんぽに加入している場合の書式を掲げておきますので、参考にしてください。

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引用元:全国健康保険協会 「健康保険埋葬料(費)支給申請書」

被保険者証の記号・番号は健康保険証に記載されているものを、生年月日は被保険者のものを記入してください。

被保険者が亡くなって埋葬料を申請する場合は、氏名・住所・銀行口座は申請者のものを記入します。

2ページ目の下段には事業主証明欄がありますので、可能であれば事業主の証明を受けてください。

事業主の証明を受けられない場合は、死亡したことが分かる書類を添付して提出します。

埋葬料を受け取る人がいない場合

埋葬料を受け取るためには、故人に生計を維持されていたことという要件がありますが、生計を一にする家族がいない人が亡くなった場合にも、埋葬料の一部が支給されることになっています。

この場合には、家族でなくても埋葬を行った人が「埋葬費」という名目で支給を受けることができます。

支給金額は、埋葬料(5万円)の範囲内で実際にかかった費用が支給されます。

費用として認められるのは霊柩車代、火葬代、葬檀一式代、僧侶への謝礼などです。

高額医療費支給制度とは

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国民健康保険、後期高齢者医療制度、健康保険のいずれに加入している人でも、医療機関でひと月(同じ月の1日~末日)に支払った医療費が一定の自己負担限度額を超えた場合は、超えた分の払い戻しを受けることができます

ただし、払い戻しを受けることができるのは健康保険が適用される医療費に限ります

入院中の食事代や差額ベッド代、自由診療、先進医療などは払い戻しの対象外ですので注意してください。

この制度は被保険者が亡くなった場合だけに適用されるものではなく、私たちが高額医療費を負担したときにはその都度利用できるものです。

身内の方が高額医療費を負担して、払い戻しを受ける前に亡くなった場合は、遺族が請求することもできます

故人が亡くなる前に高額の医療費がかかっていた場合は払い戻しを請求できる可能性があるので、その場合は忘れずに請求しましょう。

高額医療費払い戻しの請求方法

高額医療費の払い戻しを受けるためには請求することが必要です

自動的に払い戻されるものではありません。

必要な添付書類は自治体や健康保険組合によって異なる場合もありますが、標準的なところでは請求方法は以下のようになります。

国民健康保険・後期高齢者医療制度 健康保険・協会けんぽ
請求先 住所地の市区町村役場の担当窓口 健康組合もしくは協会けんぽ
提出書類 申請書
添付書類 医療機関に支払った領収書、故人との続柄がわかる戸籍謄本等

自己負担限度額の計算方法

高額医療費がいくら戻ってくるかは、支払った医療費と自己負担限度額との差額になります。

ひと月ごとに計算します。

自己負担限度額は年齢や所得によって異なります。

年齢が69歳以下の方と70歳以上の方とで計算方法が異なりますので、それぞれご説明します。

69歳以下の方の自己負担限度額

平成30年8月現在

適用区分 ひと月の自己負担限度額(世帯ごと)
年収約1,160万円~
健保:標準報酬83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770~約1,160万円
健保:標準報酬53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円
167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370~約770万円
健保:標準報酬28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(医療費-267,000)×1%
~年収約370万円
健保:標準報酬26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
住民税非課税者 35,400円

例えば、40歳で年収400万円の人がひと月に医療機関の窓口で15万円の医療費(3割負担)を支払った場合で計算してみましょう。

適用区分は「ウ」になります。

総医療費は50万円です。

計算式に当てはめると、自己負担限度額は82,430円となり、67,500円の払い戻しを受けることができます。

80,100円+(50万円-267,000円)×1%=82,430円(自己負担限度額) 15万円-82,430円=67,500円(払戻額)

70歳以上の方の自己負担限度額

平成30年8月現在

適用区分 外来(故人ごと) ひと月の上限額(世帯ごと)
現役並み 年収約1,160万円~
標準報酬83万円以上
課税所得690万円以上
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770万円~約1,160万円
標準報酬53万円以上
課税所得380万円以上
167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370万円~約770万円
標準報酬28万円以上
課税所得145万円以上
80,100円+(医療費-267,000)×1%
一般 年収156万~約370万円
標準報酬26万円以下
課税所得145万円未満等
18,000円
(年14万4千円)
57,600円
住民税非課税等 Ⅱ 住民税非課税世帯 8,000円 24,600円
Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
8,000円 15,000円

例えば、75歳で年収200万円の人が世帯単位でひと月に医療機関の窓口で15万円の医療費を支払った場合で計算してみましょう。

適用区分は「一般」になります。

「一般」の人の自己負担上限額は57,600円です。

したがって、15万円と57,600円との差額92,400円の払い戻しを受けることができます。

自己負担限度額がさらに軽減される場合

自己負担額がさらに軽減される場合が2つあります。

世帯合算

同じ人の複数回の受診だけでなく、同じ世帯で同じ医療保険に加入している家族の受診について、窓口での負担額を1ヵ月単位で合算した金額が自己負担限度額を超えた場合は、超えた分の払い戻しを受けることができます。

ただし、69歳以下の方の受診については、21,000円以上の自己負担のみを合算することができます。

多数回該当

同世帯で過去12か月以内に3回以上自己負担限度額に達した場合は、4回目からは自己負担限度額が下がります。

ただし、70歳以上で住民税非課税の区分の方には、この「多数回該当」の適用はありません。

まとめ

身内の方が亡くなると、何かと支出が多くなるものですが、葬祭費、埋葬料(費)、高額医療費のように申請すれば支給を受けることができるお金もあります。

いずれも申請して初めて受け取ることができるものなので、知らなければ受け取ることができません。

申請できるものは忘れずに申請して、適正に支給を受けるようにしましょう。
(提供:相続サポートセンター