経営者の就任は「内部昇格」が「同族承継」を上回る
過去5年で行われた事業承継のうち、経営者の就任経緯別でみると、2023年(速報値)の事業承継は、血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」が35.3%と、これまで最も多かった「同族承継(33.1%)」を上回りました。
このほか、買収や出向を中心にした「M&Aほか(20.3%)」、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘(7.2%)」など、親族外承継の占める割合が、コロナ禍以降上昇傾向が続いています。
このように事業承継は親族間承継の急激な低下を背景に「脱ファミリー」の動きが加速している、と帝国データバンクは分析しています。
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後継者候補の属性は「非同族」がトップ
後継候補が判明した全国約12万社の後継者属性は、前年に続き「非同族(37.5%)」が最も多い結果になりました。
一方「子ども」の割合は33.1%で、「配偶者」と合わせて引き続き3社に1社以上は身内への事業承継を予定しているものの、割合はいずれも前年から低下しています 。
「内部昇格」や「外部招聘」によって社長に就任した企業では、後継候補を「非同族」とした割合が8割超と高く、特に外部招聘では非同族の割合が9割を占めるなど、社外の第三者を経営に招き入れる傾向が強まっています。
「同族承継」でも後継候補を身内以外の第三者となる「非同族」に定めた割合が大きく、ファミリー企業でも親族外への事業承継化の傾向が増えていると言えます。
今後は、後継者が決定した後のフォロー・サポート体制も重要に
一方で、帝国データバンクが集計している『後継者難倒産』動向調査(2023年12月8日公表)によると2023年1-11月で509件発生しており、12月を残して年間の最多件数を更新しています。
代表者の病気や死亡により事業継続がままならないケースのほか、「後継者育成」に頓挫し、承継完了が間に合わずに自社単独での事業継続を断念するリスクが高まっています。
今後は事業承継中のアクシデントやトラブルの発生による事業承継の中止・とりやめを回避する取り組みが重要になるとみられ、後継者決定後のフォロー・サポート体制の充実が求められると帝国データバンクは分析しています。