亡くなった方が世帯主だった場合、ケースによってはさまざまな手続きが必要となります。
ここでは、どのようなケースにどの手続きが必要なのか、くわしく解説します。
世帯主を変更する手続き
世帯主が亡くなり、その世帯の人が2人以上いる場合は、世帯主に変更が生じた日から14日以内に世帯主変更届(住民異動届)を提出して、住民票の世帯主を変更しなければなりません。
世帯主変更届(住民異動届)の提出に関する注意事項
世帯主変更届の提出に関しては、以下のような点に注意する必要があります。
世帯主変更届の提出先
亡くなった人が住んでいた市区町村役場に提出します。
世帯主変更届の提出者
新たに世帯主となった人あるいはその世帯の人が提出することとされています。
ただし、新世帯主またはその世帯の人による委任状を保有する代理人によって手続きを行うこともできます。
世帯主変更届提出時の必要書類
①届出書
市区町村の窓口に備え付けられているため、その場で記入することとなります。
⓶本人確認書類
世帯主変更届の提出を行う人の本人確認書類が必要となります。
具体的には運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、障害者手帳などを用いることができます。
③印鑑
印鑑登録されている実印である必要はありません。
ただし、シャチハタを利用することは認められないこともあるため、シャチハタのようなスタンプではない認印を準備しましょう。
④世帯員全員分の国民健康保険被保険者証
国民健康保険被保険者証には世帯主の氏名が記載されています。
世帯主が変更になると、その記載事項が変わるため差し替えの必要があります。
なお、サラリーマンが加入する厚生年金加入者の場合は関係ありません。
⑤委任状(代理人選任届)
届出書を提出するのが新世帯主あるいはその世帯の人以外の場合には必要となります。
世帯主変更届の提出期限
変更があった日、つまり前の世帯主が亡くなった日から14日以内に届出をしなければなりません。
なお、この期限を守らなかった場合には、過料というペナルティが課される場合もあります。
世帯主変更届(住民異動届)の提出が必要な場合と不要な場合
世帯主変更届(住民異動届)の提出が必要なケースと不要なケースは以下のようになっています。
届け出が必要な例
世帯主死亡前 | 世帯主死亡後 | ||
世帯主 | 父 | 世帯主 | 兄 |
世帯員 | 子(兄) | 世帯員 | 弟 |
子(弟) |
世帯主死亡前 | 世帯主死亡後 | ||
世帯主 | 父 | 世帯主 | 子(40歳) |
世帯員 | 母 | 世帯員 | 母 |
子(40歳) |
届け出が不要な例
世帯主死亡前 | 世帯主死亡後 | ||
世帯主 | 夫 | 世帯主 | 妻 |
世帯員 | 妻 | 世帯員 | なし |
残された世帯の人が1人の場合や、残された世帯の人が妻と幼い子供というように、次に新しい世帯主になる人が明白な場合や、亡くなった人が世帯主でない場合は、世帯主変更届の提出の必要はありません。
健康保険の資格喪失の手続き
健康保険の被保険者が亡くなった場合、被保険者としての資格を失うこととなります。
したがって、亡くなった日の翌日から健康保険証は使えなくなります。
この時、亡くなった人の資格喪失手続きを行い、健康保険証を返却しなければならないのです。
健康保険の資格喪失手続き⑴国民健康保険または後期高齢者医療制度の加入者
亡くなった人が自営業者などの場合は国民健康保険に加入していたため、国民健康保険資格喪失届を提出することとなります。
また、亡くなった人が75歳以上あるいは65歳~74歳の障害者である場合は後期高齢者医療保険制度の加入者であるため、後期高齢者医療資格喪失届を提出する必要があります。
いずれの保険加入者であった場合も、世帯主等が喪失届を提出し、同時に健康保険証を返却しなければなりません。
国民健康保険被保険者証などの返却に関する注意点
①返却先
国民健康保険被保険者証・後期高齢者医療被保険者証のいずれも、亡くなった人が住んでいた市区町村役場に返却します。
②提出書類
国民健康保険資格喪失届または後期高齢者医療資格喪失届のいずれかを提出します。
どちらも市区町村役場の窓口で入手できるため、その場で記載して提出します。
③返却物
亡くなった人が国民健康保険被保険者証を保有していた場合は、その被保険者証を提出します。
この時、世帯主が亡くなった場合は全員の被保険者証の記載事項が変更となるため、その世帯全員分の被保険者証を提出する必要があります。
また、亡くなった人が国民健康保険高齢受給者証や後期高齢者医療被保険者証を保有していた場合は、その受給者証や被保険者証を返却しなければなりません。
④その他必要なもの
死亡を証明する戸籍謄本等、世帯主の印鑑(認印で構いませんがシャチハタは受理されない場合があります)、本人確認資料(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、障害者手帳など)が必要となります。
また、後期高齢者医療保険の加入者であった場合は、相続人の印鑑・預金通帳(高額療養費がある場合)、限度額適用・標準負担額減額認定証、特定疾病療養受領証といった書類も必要とされます。
健康保険の資格喪失手続き⑵協会けんぽや健康保険組合の加入者
亡くなった人が会社員など国民健康保険や後期高齢者医療保険制度以外の加入者であった場合は、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を年金事務所に提出しなければなりません。
この場合、基本的に亡くなるまで勤務していた会社が健康保険喪失に関する処理を行います。
会社がさまざまな退職に関する手続きと一緒に行うため、残された家族は会社の担当者と連絡を取りながら手続きを進めていきましょう。
また、健康保険証は会社を通して返却することとなります。
ただし、やむを得ない理由により直接返却しなければならない場合もあります。
この場合、協会けんぽや健康保険組合に直接返却することとなります。
扶養に入っていた人の手続き
亡くなった人の健康保険の扶養に入っていた人は、被保険者であった人が亡くなった日の翌日に健康保険と厚生年金保険の資格を喪失します。
この場合、健康保険証は亡くなった人が勤務していた会社等に返却するとともに、自分で国民健康保険及び国民年金に加入するか、会社員である他の家族の被扶養者になる手続きが必要です。
まとめ
世帯主の方が亡くなったことで世帯主の変更を行う手続きや、亡くなった人が加入していた健康保険の資格喪失の手続きは非常に重要です。
それは、亡くなった人だけでなく残された家族の今後の生活にも大きくかかわるためです。
大切な家族を亡くして大きな悲しみに包まれている時期であり、また多忙な時期ではありますが、忘れずに手続きを行うようにしましょう。
(提供:相続サポートセンター)