「時代にフィットした電気工事」エネルギー価格高騰の今は、EV急速充電設備、LED化、自家消費型太陽光発電設備 親子二代で事業継続危機を回避 三和電設(群馬県)

目次

  1. 営業スローガンは「時代にフィットした電気工事」
  2. 創業以来のチャレンジ精神で業績伸ばす
  3. 新卒採用から中途採用強化、教育への投資強化で「やめない会社に」
  4. 自社のICT化は、ホームページの新設、業務連絡のためのチャット導入、情報漏洩対策のためUTM導入
  5. ドローンによる太陽光発電施設のパネル状況のチェック等を進め、空き時間で新たな工夫による現場力の強化を目指す
中小企業応援サイト 編集部
全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報は中小企業応援サイトてお知らせいたします。

株式会社三和電設(群馬県桐生市)は、高草木茂代表取締役(76歳)が1974年に設立した地元密着企業だ。一時は事業継続の危機に陥ったものの、息子の久也専務(44歳)とともに「時代にフィットした電気工事」を合言葉にコンピュータ-の制術化、インターネット関連工事などで業績を拡大し、苦難を乗り切ってきた。(TOP写真:創業50周年を迎える三和電設本社)

営業スローガンは「時代にフィットした電気工事」

「我が社の営業スローガンは、時代にフィットした電気工事なんです」。社屋の外観は地方のありふれた電気設備会社にしか見えない。だが、陣頭指揮を執る高草木社長には目まぐるしく変わる技術革新、世界情勢に合わせ、新事業に次々に取り組む気概にあふれていた。

日本経済は急速な円安の進行、エネルギー価格の高騰が直撃している。このような状況で、高草木社長は「電気使用量、電気料金の削減がお客さまのニーズだ」と分析し、3つの事業で積極的な提案営業を展開している。①EV(電気自動車)の急速充電設備工事②水銀灯、および蛍光灯のLED照明化③自家消費型の太陽光発電設備工事だ。

急速充電設備工事では、大手外資自動車メーカーから受注を獲得しており、国内メーカーからも引き合いがある。一般住宅における充電器設置工事の指定店にもなっており、脱炭素化社会を見据え、ニーズ拡大が期待されている。高草木社長は「三菱自動車が国内で最初にEVを発売した頃から注目し、必要な技術を修得してきた」と将来を見据える。

水銀灯・蛍光灯と比べて消費電力が4分の1程度と省エネ効果のあるLED照明への取替工事にも力を入れている。最近では、桐生市の青果市場内のLED取替工事を行った。2023年11月、水銀を包括的に規制する「水銀に関する水俣条約」の締約国会議で、直管蛍光灯の製造と輸出入を2027年末までに禁止することなどで合意。2025年末での製造・輸出入禁止が決まっている電球形蛍光灯と合わせ、全ての一般照明用蛍光灯の製造が終わる。LED照明への取替需要が高まることは必至だ。

電気代高騰への対策では、発電した電気を自社内で優先的に使用する方式「自家消費型」の太陽光発電設備を提案する。

「時代にフィットした電気工事」エネルギー価格高騰の今は、EV急速充電設備、LED化、自家消費型太陽光発電設備 親子二代で事業継続危機を回避 三和電設(群馬県)
時代にフィットした営業スローガンについて語る高草木茂社長

創業以来のチャレンジ精神で業績伸ばす

本業の電気設備工事から派生する新規分野に挑戦するスタイルは、創業の時からの高草木社長の持ち味だ。創業時、高草木社長は電気設備工事のほか、自動制御技術関連の工事にも乗り出した。当時、工場の製造工程において計器類のデジタル化が進み、工作機械もコンピューターと接続されて稼働する時代に突入していた。

新規参入が順調なのは、久也専務の力によるところも大きい。大学卒業後、東京都内の通信関連企業に勤めた後、地元に戻ってきた。当時、約8,000万円の負債を抱えており、「会社をたたもうかとも考えた。その時、息子から『一緒にやろう』と励まされた」(高草木社長)。久也さんはサラリーマン時代の縁を生かし、NECやNTT関連企業など大手の取引先を増やしていった。一時控えていた公共事業の入札にも再び参加し、今では地元自治体発注工事の入札でAクラスに復帰した。

「時代にフィットした電気工事」エネルギー価格高騰の今は、EV急速充電設備、LED化、自家消費型太陽光発電設備 親子二代で事業継続危機を回避 三和電設(群馬県)
事務所内には優良工事などの表彰が飾られている

新卒採用から中途採用強化、教育への投資強化で「やめない会社に」

ポストコロナで民間企業の多くは人手不足が深刻だが、三和電設は無縁だ。2017年頃から中途採用に切り替えた結果、10人の新規採用に対し、退職者は1、2人だからだ。社員が会社に残り続ける理由の一つは、教育への投資。

とくに資格取得への支援は充実しており、講習会受講料、テキスト代、受験手数料などを3回の受験まで全額負担している社員30人の多くが、電気工事を行う上で必須の資格である第二種電気工事士のほか、難易度の高い第一種電気工事士や1級電気工事施工管理技士を取得する者もいる。社員の向上心や企業イメージがアップする効果があったようだ。

「時代にフィットした電気工事」エネルギー価格高騰の今は、EV急速充電設備、LED化、自家消費型太陽光発電設備 親子二代で事業継続危機を回避 三和電設(群馬県)
社員の資格取得への支援は惜しまない

ただ、社員の平均年齢は46歳と高くなっており、近いうちに若年層の採用を強化するつもりだ。高草木社長は「エキスパートな技術者が若手社員へ技術を伝承する。これが『会社の永続と発展』につながる」と話す。

永続と言えば、2022年9月に国連が提唱する持続可能な開発宣言に賛同する「SDGs宣言」を行った。再生可能エネルギーの採用や廃棄物のリサイクルを促進してCO2排出量削減に取り組んだり、ライフスタイルに応じた勤務形態の導入を進めたりしている。高草木社長は、持続可能な取り組みを続けることが会社の発展につながると信じている。

「時代にフィットした電気工事」エネルギー価格高騰の今は、EV急速充電設備、LED化、自家消費型太陽光発電設備 親子二代で事業継続危機を回避 三和電設(群馬県)
2022年から取り組んでいるSDGs宣言

自社のICT化は、ホームページの新設、業務連絡のためのチャット導入、情報漏洩対策のためUTM導入

「時代にフィットした電気工事」エネルギー価格高騰の今は、EV急速充電設備、LED化、自家消費型太陽光発電設備 親子二代で事業継続危機を回避 三和電設(群馬県)
二人で会社を盛り立てる高草木茂社長と久也専務

自社のICT化にも余念がない。ホームページを新設したほか、業務日報などの事務連絡や外注先への作業の手配などについて、スマートフォンやパソコンを使ってメール、チャットで行う業務改革を進めてきた。

社員が社外でデバイスを使用する機会が増えてきたことで、「情報漏洩(ろうえい)などセキュリティ対策を考えざるを得なくなった」(高草木社長)ことをきっかけに、2023年10月下旬、ネットワーク上のセキュリティ対策で近年注目されているUTM(統合脅威管理)の導入に踏み切った。ウイルス対策のほか不正侵入への防御・検知ができることから、パソコンだけでなくプリンタや複合機などの機器も安心して使えるようになった。

久也専務は「有害なウイルスが侵入するのを防御し、社員が有害なサイトにアクセスできないようにして、個人情報が漏洩しないように対策できた」と説明する。高草木社長は「公共工事の中には、最初から最後までペーパーを使わない仕事もある。UTMのおかげで安心して仕事ができる」と話す。

ドローンによる太陽光発電施設のパネル状況のチェック等を進め、空き時間で新たな工夫による現場力の強化を目指す

2022年からは、自社で管理する太陽光発電施設でドローンを空に飛ばして映像を撮影し、パネルの状況などをチェック。今後は建築現場にWebカメラを導入して社内からでも映像で作業状況を確認するという。デジタルツールを使って浮いた時間を作れば、仕事を工夫しようと考える時間が生まれ、それが現場力の強化につながる。

2024年、創業50周年を迎えるが、久也専務は「技術が発達した今だからこそ、人間味のある経営を変えず、新しいものを導入したい」と話す。これからも、三和電設は地元・群馬で時代にフィットした挑戦を続けていく。

企業概要

会社名株式会社三和電設
住所群馬県桐生市相生町5-501-8
HPhttps://sanwadensetsu.co.jp/
電話0277-52-7988
創業1974年5月
従業員数30人
事業内容電気工事、電気通信工事