現役のプロラグビー選手である傍ら、ラグビーを通して人との交流ができるおとなラグビーコミュニティーの運営をしている喜連航平(きれこうへい)さん。今回のコラムでは、コミュニティーを立ち上げるきっかけや一般社団法人設立にかける思い、今後の展望を伺いました。
プロのラグビー選手として挑戦
小さい頃からプロラグビー選手を志望していましたが、大学在学中にはプロ契約に至りませんでした。その後、NTTコミュニケーションズ株式会社への入社が決まり、同社のラグビー部に入部。それまではずっとラグビーに打ち込んでいたため、ラグビー選手としか関わりがありませんでした。
新卒の同期と共に研修を受けるなかで、ラグビー以外にもさまざまな人々とのつながりを持ち、幅広い経験を積むことの重要性に気づきました。ここでの会社員としての経験が、その後の一般社団法人の立ち上げに役立っています。
ドコモグループの組織再編成により、NTTドコモとNTTコミュニケーションズが一部サービスで統合する話が持ち上がり、両社のラグビー部も合併することになりました。その時期、私は怪我のため試合に出場できず、自分の立ち位置を見つめ直した結果、ラグビーを一旦辞める決断をしました。
スタンドオフという私のポジションは海外選手が多く、競争が激しいので、選手人生もそんなに長くありません。そこで、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEの中で最もレベルが高いDIVISION1のチームに移籍できるのであればプロとして勝負しようと考えました。もし移籍できるチームが決まらなかったら、NTTコミュニケーションズで会社員として働きながら起業する準備をすることにしました。
ラグビーを一度辞めてから2ヶ月後、横浜キヤノンイーグルスからお声が掛かり、加入しました。そして横浜キヤノンイーグルス入団と同時に『おとなラグビーコミュニティー(通称:おとラグ)』を立ち上げました。2023年2月には、一般社団法人Joynt設立。私が代表理事に就任しました。
チームメンバーに恵まれなかったり、怪我や体格の差で試合に出られなかったり、挫折をたくさんしましたが、その経験により何事にも動じない強さを得ることができました。チャレンジして成功を収めた経験が、私の原動力となっています。
ラグビーを通して交流が生まれる『おとなラグビーコミュニティー』
2019年のラグビーワールドカップ日本大会以前から、私はラグビーの魅力が日本で十分に伝わっていないと感じていました。ラグビーはコアなファン層が多く、観戦だけを楽しむ人々が多いのが実情です。
しかし、観戦する人たちにもラグビーの本当の魅力が伝わっていないように思えました。私は観戦からラグビーを始めたのではなく、実際にプレーをしてきた人間です。だからこそ、皆さんにもラグビーを実際に体験してもらいたいと思っています。
ラグビーの『ノーサイド』『One for all, All for one』といった精神は、実際に体験してみないと理解できないものです。しかし、ラグビー自体がそのハードルを高めてしまっているのも実情です。多くの人がラグビーを危ないスポーツと捉え、気軽にプレーできないという印象を持っています。
それでも2019年のワールドカップに時に、ラグビーを観たこともやったこともない人たちが、こんなに熱狂できるのだと驚いたんです。これだけ盛り上がれるなら、ラグビーをやったことがない人に体験してもらう場をつくったら、もっとラグビーを好きになってくれるはずだと確信しました。
私がラグビーで最も楽しいと感じるのは、人と人とのつながりです。試合後には対戦チームと握手を交わしてビールを飲んだり、相手チームと一緒に食事をしたりして、多くの人との関係を築くことができます。
熱いパッションを持っていて、人を助けてくれる人が多いのもラグビーをやっていた人の特徴です。特に、元々ラグビーをやっていた経営者などは、ラグビーをしている人を支援してくれることが多いですね。ラグビーを通して人との交流を生み出したいと思って立ち上げたのが『おとなラグビーコミュニティー』す。
アスリートのセカンドキャリアにおけるロールモデルに
『おとなラグビーコミュニティー』は、私の人生における重要な一部です。多くの人がそうであるように、きっかけがなければ行動に移せないことがあります。そのようなきっかけをつくり出す目的で、一般社団法人Joyntを設立しました。規模を大きくするというよりは研ぎ澄ましていくイメージで、さらに強固なつながりをつくっていきたいです。
選手としての目標としては、現在所属している横浜キヤノンイーグルスで優勝することです。ラグビー人生を長期的に考えた場合、選手引退後のセカンドキャリアが一般社団法人や『おとなラグビーコミュニティー』だと思われがちですが、私は自分の好きなことでお金を稼ぎたいとは思っていません。
まだ具体的な計画は定まっていませんが、人のためになる仕事でしっかりとベースをつくって、一般社団法人やコミュニティを続けていきたいです。これがアスリートのセカンドキャリアにおけるロールモデルになると信じています。
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