おとうふ工房いしかわ・石川諒取締役
(画像=おとうふ工房いしかわ・石川諒取締役)

全国豆腐連合会が主催したニッポン豆腐屋サミットでは、「環境を考えるとうふプロジェクト事例紹介」で、おとうふ工房いしかわの石川諒取締役が「豆腐容器のLIMEX化と環境問題への取り組み」について講演した。

講演では、廃棄物や食品ロスなど環境問題に対する同社の取り組みとして、産業廃棄物として捨てられがちなおからを菓子やスプーン、食品用トレーに有効活用している事例が紹介された。

2023年からは、おから入りの大豆ミートを小売用「おからクランチ」で販売開始している。さらに、食育活動やリサイクルの普及活動、コージェネレーション、廃油活用、食品残渣のバイオガス発電に取り組んでいる。

プラスチック削減では、「究極のきぬ」、「至高のもめん」という商品で、プラスチック使用量の削減に貢献する素材「LIMEX」を豆腐容器に使用している。プライベートブランドにも一部採用されている。

LIMEXは、石灰石を使った環境に配慮した素材だ。石灰石は日本で採れるため、安定的な供給を受けながら生産・利用できるという。プラスチック使用量を年間11.9t、CO2排出量を年間37t削減できる。「LIMEX」を製造している会社・TBMの、「LIMEX」を作るだけでなく、さらにリサイクルするという信念におとうふ工房いしかわが共鳴したのが採用の理由だ。

現状、分別されたプラスチックは、一部リサイクルされるほかは、不燃ゴミとして処理されたり、可燃ゴミの燃料として活用されたりしているという。「豆腐の容器を、どうやって真の意味でリサイクルし、再び消費者に届けるか考えないとならない。回収プログラムから考えているところだ」と述べる。「生協では、組合員教育も含めてリサイクルの体系を構築しているところだ。回収した豆腐容器をペレット化して、再資源化するプログラムを構想している」と話す。

また啓発活動として、環境と福祉を組み合わせた「環福(かんぷく)教育活動」を行い、消費者に理解を促す。ここでの福祉は障害者支援や弱者支援を指している。例えば、回収した豆腐容器から定規を作り、ペーパーカバーと共に学校機関などに還元する活動をしていく。ペーパーカバーのデザインについては、愛知県立安城特別支援学校の生徒がイラストを描き、活動で得た費用の一部を生徒に還元する。

〈豆腐屋サミットは多様性の象徴、それぞれが抱えている悩みを解決していくことが大事〉

「環境と福祉は密接に関わっている。身近だがあまり接点がない。またどちらもあまり考える機会がない。環境や福祉について考えるきっかけにしてほしい」と話す。

「『LIMEX』の採用など取り組みを始めて約1年になるが、新規の購入者の増加や、購買件数が増えている体感がある。商品を選ぶ上で付加価値も大事な要素になっていると改めて感じる」と反響もあるようだ。

最後に石川取締役は、ニッポン豆腐屋サミットについて「豆腐屋サミットは、多様性の象徴だ。今回、こんなに多くのユニークな企業があり、豆腐の種類もこんなに存在するのかと思った。過去5万件あった豆腐屋は、今や5,000件だ。されど5,000件だ。1件につき1種の豆腐を作っているとして、5,000種の豆腐があるということだ」と話した。

続けて、「豆腐は、無くてもいい食品ではなく、あって嬉しい食品だ。あって嬉しい食品であるためには、安い豆腐や高い豆腐、輸入大豆や国産・在来大豆、特別な日向けや日常使いなど多様性があってこそだ。安い豆腐を必要とし、嬉しい人もいる。それぞれが抱えている悩みを解決していくことが大事だ。豆腐屋こそ社会課題解決の実践者たれ、と思う。皆様と少しずつ社会課題を解決していきたい」と締めくくった。

〈大豆油糧日報2023年12月18日付〉