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被相続人の住宅ローンがまだ残っている場合、確認してほしいことがあります。

それが、不動産を購入する際に、住宅ローンの他に「団体信用生命保険(団信)」に加入していたかどうか。

団信と呼ばれるこの保険に加入していたのであれば、残った住宅ローンは、身内が肩代わりすることなく完済することができます。

この記事では、団信による完済手続や、完済後に必要な手続についてまとめています。

「団体信用生命保険(団信)」って何のこと?

「団体信用生命保険(団信)」とは、ローンの契約者が死亡した場合等に、生命保険会社が契約者の代わりにローンの残額を支払い完済するという保険制度です。

団信に加入していることで、相続人は住宅ローンを肩代わりすることなく不動産を相続することができます。

団信による住宅ローン完済の手続について

団信によって住宅ローンを完済するには、所定の手続きが必要です。

完済後には金融機関から完済を証明する書類一式を受け取ることができますが、実はその書類を持っているだけでは手続は不十分です。

他に、住宅ローンがなくなったことを証明するための手続が必要なのです。

住宅ローンを組んだ際、通常は住宅ローンで購入した不動産を担保に入れています。

この担保権(抵当権)については不動産の登記がなされますが、住宅ローンを完済しても、自動的に不動産登記に反映されるわけではないため、不動産登記の変更手続も併せて行います。

<団信による住宅ローン完済の手続の流れ>

① 金融機関への連絡
② 金融機関からの書類受取り
③ 不動産の所有権移転登記手続
④ 住宅ローンの抵当権抹消登記手続

具体的に何をすればよいのか、ひとつずつ内容を見ていきましょう。

①金融機関への連絡

まずは、住宅ローンを組んだ金融機関へ被相続人が亡くなった旨の連絡を入れましょう。

連絡がない限り、金融機関は被相続人の死亡を知ることができないため、連絡が遅れると単に住宅ローンの返済が滞っていると思われてしまい、要注意です。

連絡後、金融機関から「団信弁済届」を受け取り、必要事項を記入して提出しましょう。

団信弁済届の提出後に保険金支払いについて審査がなされます。

審査の結果が出るまでには1~2ヵ月程度掛かるのが一般的です。

気になるのは、審査が下りるまでの住宅ローンの支払いですが、この間は返済を続ける必要があります。

ただし、保険金が無事支払われることになれば、相続発生後支払った分は後日補填されます。

②金融機関からの書類受取り

審査の結果、団信によって住宅ローンが完済されたことを金融機関が確認すると、完済を証明する書類一式を受け取ることができます。

この書類の中に、④で行う住宅ローンに関する抵当権抹消登記手続に必要な書類も含まれています。

書類の受取りは金融機関の窓口に行って直接受け取ることもできますし、金融機関によっては郵送での受け渡しも可能な場合があります。

なお、④の抵当権抹消登記申請の手続を司法書士(登記の専門家)に任せて行う場合は、委任状を作成することで書類の授受も司法書士に任せることができます。

③不動産の所有権移転登記手続

住宅ローンに関する抵当権抹消登記手続を行う前に必要な手続が、所有権移転登記の申請手続です。

抵当権抹消登記を申請することができるのは、原則として不動産の所有者として登記されている名義人だけです。

一方、不動産の所有者である被相続人は住宅ローンの完済より以前に亡くなっているため、抵当権抹消登記を申請することができません。

そのため、被相続人から不動産を受け継いだ相続人へと所有権移転登記をする必要があるのです。

相続による所有権移転登記の申請は、新しく不動産の名義人となる者が行います(不動産を複数人で共有している場合には、そのうちの1人が申請することも可能です)。

この所有権移転登記は、住宅ローンの完済による抵当権抹消登記の申請と同時に申請することもできます(その場合、所有権移転登記を1件目、抵当権抹消登記を2件目として申請していきます)。

④住宅ローンの抵当権抹消登記手続

所有権を相続人に移転する登記手続の後は、いよいよ抵当権抹消登記の申請です。

抵当権抹消登記の申請は、不動産の所有者として登記されている名義人(不動産を複数人で共有している場合には、そのうちの1人で十分です)及び、抵当権を設定した者(この場合は住宅ローンの貸し手となった金融機関)との共同で行います。

金融機関と共同で申請といっても、通常は金融機関が完済書類と共に抵当権抹消登記申請に関する委任状を渡してくれるため、実際は不動産の名義人が単独で申請することが可能です。

登記の申請は、「登記申請書」という書面に必要事項を記載し、提出書類と共に不動産の所在地を管轄する法務局に提出することで行います。

申請書のひな型は法務局のホームページでダウンロードすることができます。

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引用元:法務局ホームページ「抵当権抹消登記申請書」 http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001188798.pdf

「原因」には、完済時に金融機関から受け取った解除証書、弁済証書に記載している『〇年〇月〇日〇〇(解除や弁済と記載してあることが多いです)』という文言を書き写します。

「権利者」には、③で新たに名義人になった相続人の住所・氏名を記載します。

「義務者」には、抵当権の名義人である金融機関の商号・本店所在地・代表取締役の氏名(金融機関から受け取る金融機関の委任状等に記載があります)を記載します。

「不動産の表示」には、不動産登記事項証明書に記載してある情報を誤字脱字がないように書き写しましょう。

抵当権抹消登記を申請する際に提出する書類のうち、金融機関から受け取るべきものについて以下に原則的なものを挙げておきます。

・解除証書、弁済証書等(抵当権で担保していた住宅ローンが完済されたことを証明する書面)
・登記済証または登記識別情報
・委任状(金融機関からの委任状)
・会社法人番号が記載してある書面

まとめ

住宅ローンが残っている場合、団信による完済は相続人にとって心強い制度です。

ただし、団信による完済を行うにも時効があるため、いつか手続すればいいや……では手遅れになってしまう可能性があります。

相続が開始した後はすぐに金融機関に連絡をしましょう。

また、完済した後の抵当権抹消登記手続は、完済してすぐの申請が一番手間が少なくて済みます。

担保権を外して相続した不動産の価値を上げるためにも、抵当権抹消登記手続まで後回しにせずしっかり行いましょう。
(提供:相続サポートセンター