ポッカサッポロのレモン園地(左から)高寺リーダー、大崎上島町の坂田課長、土屋グループリーダー
(画像=ポッカサッポロのレモン園地(左から)高寺リーダー、大崎上島町の坂田課長、土屋グループリーダー)

ポッカサッポロフード&ビバレッジは、自社レモン園地を展開する大崎上島町(広島県)で3度目の収穫を11月下旬から行っている。2019年に苗木を植えて栽培を開始した同町中野地区のレモン園地では、面積50a(アール)に180本の木にたくさんの実がついた。

契約農園は日当たりが良く、瀬戸内海がのぞめる
(画像=契約農園は日当たりが良く、瀬戸内海がのぞめる)

大崎上島は、全国の約30%を生産するという一大レモン産地だ。同社は町との取り組みの中で、耕作放棄地を整備するなどして、同町でレモン園地を少しずつ増やしている。家庭用レモン果汁でトップシェアなど、レモン市場の代表格である同社だが、実際に地域に入り込んで栽培から取り組むことが重要としている。国産レモンは需要が高まっているものの、高齢化などにより生産者が減り、供給量が足りていない状況にある。持続可能な事業展開に向けて、ポッカサッポロは、レモンの価値向上と国産レモンの生産振興を目指し、地域に寄り添った事業活動を進めていく考えだ。

ポッカサッポロ社マーケティング本部産地形成グループの土屋淳一グループリーダーは11月24日、レモンが数多く実った中野地区の自社園地で、次のように語った。「土も何もないところから、自分たちでレモン園地を立ち上げ、ようやくここまで来たという思いで感慨深いです。ただ、課題はまだたくさんあり、現在の課題は風対策です。レモンは、味や酸味でなく外観で評価されるので、風が強く吹いて傷つくと価値が下がってしまいます。そこで防風ネットなどを自分たちで張って対策しています」。また、行政や地域住民との連携が深まったことが大きな成果だとした。

大島上島町地域経営課の坂田誠課長は、同園地にほど近いレモンの集積園地を紹介し、移住してレモン栽培を新たに始める人が、集積園地だからこそ困りごとや悩み事がある時に隣の園地の人とコミュニケーションがとりやすくなっているとした。また、同集積園地は雨が降っても水が溜まらないようにポンプで排水する仕組みになっていることも紹介し、次のように話した。

「レモン農家になりたいという方が、研修を通してレモン農家になられて家族で住み、その方たちが大崎上島町の農業の代表になってもらえたら。そういう方がモデルになることにより、大崎上島町に移住者を増やし、高齢化率と人口減少に歯どめをかけたい。ポッカサッポロさんが大崎上島をさまざまな場面でPRしてくださっているので、私たちの町の知名度が上がっていくことに感謝している」。

ポッカサッポロは、国内最大のレモン生産地である広島県と2013年にパートナーシップ協定を締結。JA広島ゆたかとの業務提携、大崎上島町との包括協定を結んで、2019年4月から同町でレモンの栽培を開始した。同年10月にはサテライトオフィスを構え、同地に常駐スタッフを置いている。

そして、後継者不在の耕作放棄地を整備するなどして園地を増やし、現在では自社レモン園地2カ所と契約園地1カ所を展開する。中野地区では、園地面積は50a(アール)、180本のレモンを栽培。後継者不在の園地を引き受けた本郷地区の園地は、面積18aで70本を栽培する。また、沖浦地区では契約園地16a、80本を栽培。もともと同社が研究園地として使用した場所で、現在は契約農家が管理しているという。

今後、ポッカサッポロと大崎上島町は、耕作放棄地の再生、新産地開発を行う「産地振興」、契約農家の拡大、地域活性化の「雇用創出」、機能研究・食育活動、商品開発の「価値向上」に取り組み、地域の活性化とレモンの総需要拡大に向けた取り組みを行うという。

同社産地形成グループの髙寺恒慈リーダーは、「われわれはこれから4つめの耕作放棄地の整備に取り組む。新しくレモンの栽培を始めようと思った個人の方が、いきなり荒れた場所ではスタートできないと思うので、われわれのような企業が協力することにより、スムーズに引き渡せたらと思っている。レモンの生産振興に貢献したい」と語る。「レモンの島」企業と地域がレモンでつながり、共創が始めている。

今後整備する予定の耕作放棄地を紹介する高寺リーダー
(画像=今後整備する予定の耕作放棄地を紹介する高寺リーダー)