遺産における「債権」とは、相続することができるプラスの遺産のうち、人に対して一定の行為を要求しなければ相続人が手にすることのできないものを指します。
一番身近な債権は銀行預金ですが、他に株券や、被相続人が知り合いに貸していたお金なども含まれます。
それぞれの債権を回収するために必要な請求手続きについて説明します。
預貯金債権の請求
何が必要か?
被相続人が口座を持つ銀行預金をはじめとする金融機関への債権への請求は、必要な書類さえ揃っていれば問題なく認められます。
金融機関が求める書類は以下の2点です。
①被相続人が死亡したことを証明するもの
②請求者が相続人であることを証明するもの
このうち①は被相続人の除籍謄本の提出で済みます。
②については、相続人が何人いるかで変わってきます。
相続人が一人の場合
例えば母が亡くなり、父も既に亡くなっていて子が一人だけという場合だと、自分と母が親子であることを証明する自分の戸籍謄本に加え、母の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍(除籍)謄本が必要となります。
もし、母が父との婚姻前に別の男性と結婚していて子を産んでいた場合、その子も相続人となるので、相続人が本当に請求者一人だけであることを確認するためです。
相続人が複数いる場合
請求手続きは少し複雑になります。
請求者は上記の書類に加え、他の相続人の戸籍謄本と、さらに自分が請求権を持つことを証明するものの提出が求められます。
遺言書や遺産分割協議書、または他の相続人の支払同意書などがこれにあたります。
遺産分割協議書や支払同意書は相続人全員が署名し実印を捺印しなければならないため、相続人が多かったり遠方にいたりすると時間がかかります。
また、全員の同意が得られなければ金融機関は債権請求を認めてくれません。
たとえ債権の一部、請求者の法定相続割合分だけの支払いであってもです。
支払った後にトラブルが起き、金融機関が巻き込まれることを防ぐためです。
一部払い戻しができるように
なお、民法が改正され、令和元年7月1日から、分割協議書や同意書がなくとも相続人が個別に一定額を限度として預金の払い戻しを受けられるようになりました。
遺産分割協議に時間がかかりそうだが当座の葬儀費用や税金などが必要、という時に役立てられる制度となっています。
株式債権の請求
証券会社への請求
証券会社や信託銀行に運用管理を任せている株式などの有価証券債権であれば、回収請求手続きは金融資産の場合とほぼ変わりありません。
ただし、預貯金と違い、株式は価格が日々流動しているので、まずは管理会社に被相続人が持っていた全ての株式の評価証明書を発行してもらう必要があります。
請求が認められれば、相続人が管理会社に開設した自分名義の口座に株式の名義が書き換えられます。
払い戻し手続きなどはその後に行います。
個人保有の株式の請求
中小企業など、非上場の株式債権がある場合は、直接株式発行会社に連絡し、請求手続きについて問い合わせます。
個人に対する貸金債権への請求
契約書どおり定期的に支払いが行われている回収可能債権であれば、相手に「相続が発生したため今後の振込み先(または支払い先)が変更になること」を伝えれば済むこともありますが、もし、相手方が相続を証明する書類を要求してきた場合には応じる必要があります。
一方、支払いが滞っているなど、債権の回収が難しそうな場合は、最終的に訴訟となる可能性も考えておいた方がよいでしょう。
訴訟となれば、裁判所に自分が正当な債権の相続人であることを証明するため、「預貯金債権の請求」の項で説明した①②の書類が必要になります。
まとめ
被相続人の遺産債権の種類は、上記で説明したものの他にもありますが、いずれの場合であっても債権の存在、被相続人の死亡、請求人が当該債権を相続したことの3点が証明できるように準備しましょう。
また、金融機関によってはさらに他の書類が求められることもありますので、各機関での問い合わせ時にしっかりと確認しましょう。
相続トラブル解決への糸口17 遺産の各種債権における請求手続きについて
遺産における「債権」とは、相続することができるプラスの遺産のうち、人に対して一定の行為を要求しなければ相続人が手にすることのできないものを指します。
一番身近な債権は銀行預金ですが、他に株券や、被相続人が知り合いに貸していたお金なども含まれます。
それぞれの債権を回収するために必要な請求手続きについて説明します。
預貯金債権の請求
何が必要か?
被相続人が口座を持つ銀行預金をはじめとする金融機関への債権への請求は、必要な書類さえ揃っていれば問題なく認められます。
金融機関が求める書類は以下の2点です。
①被相続人が死亡したことを証明するもの
②請求者が相続人であることを証明するもの
このうち①は被相続人の除籍謄本の提出で済みます。
②については、相続人が何人いるかで変わってきます。
相続人が一人の場合
例えば母が亡くなり、父も既に亡くなっていて子が一人だけという場合だと、自分と母が親子であることを証明する自分の戸籍謄本に加え、母の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍(除籍)謄本が必要となります。
もし、母が父との婚姻前に別の男性と結婚していて子を産んでいた場合、その子も相続人となるので、相続人が本当に請求者一人だけであることを確認するためです。
相続人が複数いる場合
請求手続きは少し複雑になります。
請求者は上記の書類に加え、他の相続人の戸籍謄本と、さらに自分が請求権を持つことを証明するものの提出が求められます。
遺言書や遺産分割協議書、または他の相続人の支払同意書などがこれにあたります。
遺産分割協議書や支払同意書は相続人全員が署名し実印を捺印しなければならないため、相続人が多かったり遠方にいたりすると時間がかかります。
また、全員の同意が得られなければ金融機関は債権請求を認めてくれません。
たとえ債権の一部、請求者の法定相続割合分だけの支払いであってもです。
支払った後にトラブルが起き、金融機関が巻き込まれることを防ぐためです。
一部払い戻しができるように
なお、民法が改正され、令和元年7月1日から、分割協議書や同意書がなくとも相続人が個別に一定額を限度として預金の払い戻しを受けられるようになりました。
遺産分割協議に時間がかかりそうだが当座の葬儀費用や税金などが必要、という時に役立てられる制度となっています。
株式債権の請求
証券会社への請求
証券会社や信託銀行に運用管理を任せている株式などの有価証券債権であれば、回収請求手続きは金融資産の場合とほぼ変わりありません。
ただし、預貯金と違い、株式は価格が日々流動しているので、まずは管理会社に被相続人が持っていた全ての株式の評価証明書を発行してもらう必要があります。
請求が認められれば、相続人が管理会社に開設した自分名義の口座に株式の名義が書き換えられます。
払い戻し手続きなどはその後に行います。
個人保有の株式の請求
中小企業など、非上場の株式債権がある場合は、直接株式発行会社に連絡し、請求手続きについて問い合わせます。
個人に対する貸金債権への請求
契約書どおり定期的に支払いが行われている回収可能債権であれば、相手に「相続が発生したため今後の振込み先(または支払い先)が変更になること」を伝えれば済むこともありますが、もし、相手方が相続を証明する書類を要求してきた場合には応じる必要があります。
一方、支払いが滞っているなど、債権の回収が難しそうな場合は、最終的に訴訟となる可能性も考えておいた方がよいでしょう。
訴訟となれば、裁判所に自分が正当な債権の相続人であることを証明するため、「預貯金債権の請求」の項で説明した①②の書類が必要になります。
まとめ
被相続人の遺産債権の種類は、上記で説明したものの他にもありますが、いずれの場合であっても債権の存在、被相続人の死亡、請求人が当該債権を相続したことの3点が証明できるように準備しましょう。
また、金融機関によってはさらに他の書類が求められることもありますので、各機関での問い合わせ時にしっかりと確認しましょう。
(提供:相続サポートセンター)