荒井氏・大澤氏

「ファンド」と聞くと身構えてしまう方もいるかもしれない。だが現在において、PEファンドはさまざまな業界で中小企業の成長を支える社会インフラとして欠かせない存在になっている。

最終回の第5回目は、ファンド企業(みずほキャピタルパートナーズ)の担当者とM&A専門企業(M&Aセンター)担当者がPEファンドのメリットについて語る対談をお送りする。(聞き手:山岸裕一、編集構成:上杉桃子)※本インタビューは2019年12月に実施されました

荒井圭佑
荒井 圭佑(あらい・けいすけ)
みずほキャピタルパートナーズ株式会社・ファンドビジネスグループディレクター。のむら産業ほか担当。みずほキャピタルパートナーズは、みずほフィナンシャルグループにおける投資ファンド企業。のむら産業のような中堅中小企業を中心に株式取得やバイアウト業務などを提供している。
大澤 卓也
大澤 卓也(おおさわ・たくや)
株式会社日本M&Aセンター・戦略統括事業部経営者支援部M&Aアドバイザー。みずほキャピタルパートナーズ担当ほか。

株式公開と海外展開でメリットを発揮

―M&Aセンターの大澤さんが考える、ファンドと組むメリットはズバリ何でしょうか?

荒井氏

大澤:自分たちの持っている経営資源、ヒト・モノ・カネ・情報だけでは解決できない課題がある場合ですね。それをファンドが上手く整理してくれるので、共通の課題を設定してクリアし成長していく。そこにファンドと組むメリットがあります。
特に次の2つの場合、メリットが大きいです。
1、株式公開
2、海外展開

株式公開する場合は、組織体制を整えるにも時間がかかります。その点でファンドは事例を多く持っている強みがあります。

海外展開する場合も同様です。多くの中小企業はノウハウを持っていませんが、ファンドには過去の投資先で行った経験・ノウハウがありますので、それを活用して展開を進めて行くことが可能です。

―海外展開で具体的にどのような支援をファンドから得られますか?

荒井:海外支店にファンドを持っているファンドや商社系のファンドなら、海外のチャネル・ネットワークが使えます。また、ファンドに海外拠点がなくても、コンサルティング会社の活用等進め方はいくらでもあります。だから、海外に経営資源がない企業でも外部と連携しながら上手く展開していくことができます。

―ファンドを選ぶ際のポイントはありますか? みずほCPならではのメリットは?

荒井:みずほと名前がついているくらいですから、やはりほかの独立系ファンドと比べると、みずほフィナンシャルグループの一員である強みがあります。

大澤:日本で20年の実績があり、それだけノウハウも蓄積されています。数多くの業界への投資実績があるので、その点も信用につながります。

ファンドと組んだほうがいい企業とは?

―こういう企業はファンドと組むことをおすすめ、という具体的な企業の状態はありますか?

大澤:まずは成長意欲ですね。「3年後、10年後の姿を描いているけど、自社のリソースが不足している」「特にマーケティング等の組織が不足している」ような場合、また、成長スピードに課題を抱えている場合は、ファンドと組んで自社を更なる成長軌道に乗せていくことができると思います。

特にIPO(株式公開)を目指す場合は期限を切って、スピード感をもって進めていくため、ファンドの経験やノウハウが役に立つと思います。。また、のむら産業様のように「属人的」だった経営を組織化して進めて行きたい場合にも、「個人商店からの脱皮」を目指せます。

―ファンドというと多くの経営者が不安を感じ、敬遠しがちです。納得していただくための諭し方はありますか?

大澤:当然、みなさん経験が無いと不安を感じるわけです。これまでの経営者人生の中で、ファンドの方と会ったことがなく、ドラマのハゲタカや村上ファンドのなどイメージを持たれていて、力技でコントロールされてしまうと思ってらっしゃることが多いです。

しかし実際によくよく話しを聞くと、単によく分かっていなくて不安を感じていることがほとんどです。

しっかりと経営者と話をし、「双方にとってメリットがある場合しかお話を進めない点」をお伝えすることで、腹落ちすることが多いです。

荒井:信頼を獲得しないと私たちも進めません。事業を進めるのは結局、会社の中にいる人々ですから、そこは避けて通れないんです。会社の状況にもよりますが、私の経験則では、時にはプライベートの場、特にお酒のを通じての関係構築も重要になることがあります(笑)。

「あいつの頼みごとだったらやってやる」と言っていただくため、当初私は用がなくても担当企業に顔を出しました、清川代表とも飲みに行きました(笑)。

イメージと雰囲気はドライなファンドも、投資対象の企業規模によっては、このような活動を通じて信頼を獲得しています。

もちろん大企業や大企業からのカーブアウト等では必ずしもハマる事例ではないですが、中小企業のオーナー系だと、こういう関係性を重視する方が多いと思います。

ファンドとM&A企業の関係

―ファンドから見て、M&Aセンターにはどのような期待をしていますか?

荒井氏

荒井:いいお会社様を沢山ご紹介いただくことですかね(笑)。

大澤:出会いの創出ですね。さまざまな角度からのご提案を求められていると思います。出会いを創出した双方が、会ってすぐすんなり案件が進むことはありません。事業承継や株式に関する課題感がない、素晴らしい会社様が多いので、事業上の課題をヒアリングし、その課題がファンドと組むことでできそうだったら、一緒に進めます。

荒井:オーナー様が事業承継する際には、売る理由やさまざまなニーズがあります。経営や事業承継だけでなく、株の集約などでもファンドは使えます。さまざまなソリューションがあり、株を売りたいというニーズに幅広くお応えできます

大澤:その点では事業会社より守備範囲は広いと言えるでしょう。事業会社の場合は自社の事業とのシナジーがなければM&Aをおこないません。

もし、ファンドの方からお声がけがあれば、まずは、先入観を持たずにファンドの方と会ってみてほしいです。ファンドは『いい会社』にしか投資しないので、『声をかけられたら光栄なこと』だと思っていただいていいと思います。
ファンドの方と事業のディスカッションを行うことで、課題感や事業展開のヒントを得ることもありますので、彼らからの提案をまずは聞いてみるとよいと思います。

―ありがとうございました。


中小企業はプライベートエクイティ・ファンドを上手く利用せよ!」
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