アークスグループがAmazonとの協業を発表
少し話は変わりますが、今後の展望としまして、スーパーマーケット業界におけるDX化にM&Aがどう貢献できるかについてご説明します。
2023年10月3日、北海道・東北・北関東地域でスーパーマーケットを約370店舗(2023年5月23日時点)展開するアークスグループが、Amazonとの協業を発表しました。Amazonプライム会員に登録している顧客が、Amazonショッピングアプリ上の「アークスネットスーパー」で、アークスの商品9000点の中から選び、自宅で受け取ることが可能になるものです。
アークスは独自のネットスーパーとして、「アークスオンラインショップ」を設置していましたが、若い世代の活用率が低いことが課題でした。この協業を機に、すでにAmazonプライム会員に登録している若い世代での活用が期待でき、若い世代から高齢者までの幅広い年代で、アークスの商品を手に取ることが可能になります。
スーパーマーケット業界で進むDX化
先般のアークスグループに限らず、スーパーマーケット業界においてDX化が進んでいます。「DX化」というと広い括りになってしまいますが、例えば1736年創業の山形県の老舗スーパーマーケット「食品館256」は、キャッシュレスレジの導入・増設をすることを発表しました。キャッシュレスレジの導入によって、会計時間の短縮と人件費の削減が期待できます。
また、アークス、バローホールディングスのように、Amazonを始めとする配送サービスとの協業を行う事で、競合となりつつあるコンビニエンスストアよりも、よりコンビニエンスな存在になることが期待できます。
そもそも食品業界は「胃袋の数」に左右される業界ですが、少子高齢化に伴い、特に地方において、胃袋の数は減る一方です。今後地方スーパーが発展していくためには、DX化を行うことで生産性を向上させ、少ないエネルギーで生み出された利益を次の投資に充てるという「良い軌道」に乗せることが重要になると思います。
まとめ
2023年度上半期の事例にもあった通り、【異業種×スーパー】のM&Aが増えています。それは決して一過性のものではありません。
2003年から2005年、スーパーのM&Aが最もピークと言われているこの3年間で行われたM&Aは、50%以上がスーパー同士のM&Aだった一方で、2021年から2023年に行われたM&Aのうち、スーパー同士のM&Aは全体の約40%程度にとどまり、「スーパー×食品製造・卸売業」と「スーパー×ドラックストア」の件数が大幅に増加しています。今後もこの【異業種×スーパー】の流れは続くものと思われます。
(※レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンターが作成)
また、DX化の流れ、コンビニエンスストア・ドラックストアとの競合、少子高齢化に伴う胃袋の数の減少など、資本力の少ない地方スーパーにとって、オーガニックで成長していくことは困難な時代に突入すると考えます。 M&A戦略を行うことで、譲渡企業は、譲受企業で既に保有するノウハウの共有を受け、生産性を向上させ利益を生める体制を整えることが可能になったり、コンビニエンスストアやドラックストアとの競争にも負けない商品力を手にすることが可能になったりします。一方譲受企業は、譲渡企業が長年いい関係性を気づいてきた地域の水産事業者、農業事業者等との取引の共有を受けることで、地域のスーパーとして根強い知名度を獲得できるなど、明確な相乗効果があると考えます。
その結果、譲渡企業にとっては、新規の店舗拡大やマーケティング戦略、ネットスーパーの拡大など、新たな投資を行うことが可能になり、また、譲受企業にとっては、地方スーパーとしてのアイデンティティを確立し、地域経済の発展にも寄与する企業としての立場を確立でき、ひいては地方のスター企業に成長する、など成長イメージは広がるものと考えます。
また、ドラックストア・食品卸売業の会社と資本提携を行うことで、同地域でパイの奪い合いを行うのではなく、共にノウハウを共有し地域経済を支えるような存在になることも、M&Aによる相乗効果の1つといえると思います。
今後は、「スーパー」「ドラックストア」「食品卸売業」などの垣根を越えて「地方経済・日常を支えるスター企業」のような形で、若者が働く場所になり、高齢者の生活を支える企業が誕生する日も近いのではないかと考えます。M&A戦略の情報を知り、効果的に活用してみてはいかがでしょうか。