良き思いを持ち続けることで生まれた、老舗企業×スタートアップの運命的な出会いとは?明石吉田屋産業株式会社・代表インタビュー後編

静岡県西部地域・愛知県東部にてエネルギー供給事業を担う明石吉田屋産業株式会社が、アグリテックにより農家を支援する株式会社Happy Qualityと資本業務提携を行い、スマート農業事業に新規参入しました。

▶Happy Quality株式会社様へのインタビューはこちら!

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今回は、地域の老舗企業×今熱いスタートアップという異例のタッグが生まれた経緯や、今後目指す将来について、明石吉田産業株式会社・代表取締役社長の明石真さんに取材をさせていただきました。今回は、株式会社Happy Qualityさんとの資本業務提携について詳しくお聞きした、インタビューの後編をお送りします。

▶インタビュー前編はこちら!

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静岡県西部地域・愛知県東部にてエネルギー供給事業を担う明石吉田屋産業株式会社が、アグリテックにより農家を支援する株式会社Happy Qualityと資本業務提携を行い、スマート農業事業に新規参入しました。▶Ha...

ー引き続き、よろしくお願いいたします。前回は、農業などの一次産業もエネルギーも共通して、生活になくてはならないものだというお話を伺いました。では、今回の資本業務提携の背景についてお伺いできればと思います。
まず株式会社Happy Qualityさんや代表の宮地さんとの出会いについて教えていただけますか?

去年の夏に地元で開催された浜松いわた信用金庫主催の「ビジネスマッチングフェア」にHappy Qualityさんが出展されていて、弊社の幹部がそこに訪れたのがきっかけです。僕自身は行けなかったんですけど、彼も同じように供給先の一次産業に興味を持ってたんですよ。

Happy Qualityさんのブースに足を止めて話を聞いて後日、「社長面白いの見つけましたよ!」と教えてくれました。そこでちょっと話を聞いてみてくださいと言われ、アポを取って直接伺ったという経緯です。実は、元々訪問する予定だった日にちだと宮地さんがいらっしゃらない日だったんですけど、たまたま僕の都合が悪くなってリスケしてもらったんです。リスケしたらちょうど宮地さんがいる日に行けることになって、そこでお会いできたのは運命的な何かですよね(笑)

現地で2時間ぐらいビニールハウスを案内してもらって、宮地さんの熱意と素晴らしい思いやビジネスモデルに感銘を受けました。しかも、話を聞いていたら共通でお世話になっている方がいて、様々な繋がりがあったんですよ。これもまた運命というか、引き寄せられているものがありますよね。

宮地さんご自身もその場でどんどん話を進めてくださる方なので、僕も直感で絶対に面白くなるなと確信して、すぐに具体的な話を聞かせていただきました。そして、僕は「やらずに後悔するより、いいと思ったらやろう」という性格なので、その場で一緒にやることを決めました。それが去年の夏ですから、たった1年で実際にHappy Qualityさんに出資をして僕たちの方でも農業法人を立ち上げて、農業を引き継いで始めてますからね。

良き思いを持ち続けることで生まれた、老舗企業×スタートアップの運命的な出会いとは?明石吉田屋産業株式会社・代表インタビュー後編

ースピード感がすごいですし、実行力や決断力が段違いですね。興味があるものに出会ったときに「いいですね」と言うだけで終わってしまう人が多い中で、実際にやる人は一握りな気がします。

地域に貢献したいという強い思いじゃないですかね。これが、ただお金儲けだけのことを考えていると、大変だからやめておこうとなってしまいます。僕は元々持っていた思いがあって、地域になるためになることだったら苦労してでも挑戦する価値があると考えているので、そこが違うんだと思います。

ーなるほど。宮地さんとの出会いにも運命的なものがあったんですね。宮地さんも明石さんもお名前が同じ「まこと」さんという点でも...(笑)

そうそう。本当に運命を感じますね。漢字は違いますけど(笑)

ーHappy Qualityさんとの取り組みを進める中で、大変だったことはありますか?

一番大変だったことは、農業に知見がある人材が社内にいなかったことです。どれだけ「地域を良くしたい」と思っていても、会社の中でもみんな農業未経験ですから。決めたのはいいけどどうしよう...となりました。

そんな時に、ふと数年前の高校の同窓会で再会した2人の同級生が農業を始めたと言っていたことを思い出しました。彼らは高齢で後継者がいない農家を引き継いで、ビニールハウスでトマトを栽培していたので、声をかけて一緒に農業部門の事業をやることになったんです。やると決めると自然と道が開けるものです。

高校1年生のときに同じクラスだった人たちと、20〜30年近く経ってこうやって一緒に仕事をするのもすごく運命的ですよね。多分クラスが一緒になってなかったらそうなってないですし、何年か前に同窓会でたまたま会って聞いた話を覚えていなかったら実現していなかったことですし、これもご縁だと思います。

ー15歳の時に同じクラスだった人と、20年後に同じ事業を行うことになるなんて想像がつかないです...!明石さんのお話を伺って、何かやると決めたときに足りないリソースや仲間を集めてくる力が、経営者や起業家に最適な気質だと感じました。

そうですね、会社の状態が悪かった時期は会社の中の雰囲気も、自分達を正当化するように「環境が悪い」「業界が悪い」という他責思考で、諦めムードが漂っていたと思います。結局、そういう思考だと赤字も良くならないですよね。負の考え方を持っていると、さらに負の状況を呼び込んでしまう。

そんなこと言ったって赤字なんだから、良くするしかないじゃないですか。だから、僕が会社に戻った時はとにかく前向きに会社を良くしようという想いで、いろんなことを変えて挑戦してきました。失敗ももちろんありましたが、やったら何かしらの結果が得られるので。やってみて反省があれば、改善をすればいいんです。

「やるって決めてまずやってみる」ことで、自然にご縁のようなものが繋がっていって、運命がいい方に向かっていくことをこの20年で結果がついてきたことで感じました。

もちろん、その起点になる想いが大事ですけどね。世の中のために、地域のために、働いている人のために。そんな良き想いを持って始めることで、純粋な想いに周りを巻き込む力がついてくるんだと思います。

ー応援したくなりますよね。良い想いがあるからこそ、運命をも味方につけて人を集められるんですね。

僕が尊敬する経営者で、去年お亡くなりになった『稲盛和夫』さんという方がいらっしゃいます。京セラの創業者であり、日本航空の再建にも貢献された稲盛さんですが、想いをものすごく大事にされるんですよ。「善き想いを持って善きことをなせば、必ず善き結果が得られる」というのが稲盛さんの教えで、僕も心から共感をして、努めて善き想いを心の中に描くようにしています。

自分の根底にある経営哲学には稲盛さんの影響も大きいです。経営手法の前に、人としての正しい考え方や哲学を持ちなさいという教えを心に刻んでいます。

ー明石さんの経営に関する考え方には「善き想いを持つ」という稲盛さんの教えが根底にあるんですね。では改めて、Happy Qualityさんと資本業務提携を結ばれたということですが、今後は農業事業への進出の点で一緒にどのようなことをされていく予定なのかをお伺いしてもよろしいでしょうか?

Happy Qualityさんは現在、静岡県の袋井を中心にHapitoma®︎(※)を生産しています。それをもっともっと浜松エリアで拡大したい、という展望を以前から宮地社長にお聞きしていました。既にHappy Qualityさんの関連会社で浜名湖のほとりにある『村櫛町』というところではビニールハウスでの生産を行っており、浜名湖の周辺はちょうど私たちの事業基盤の強いエリアということもありました。

そこで、是非浜松エリアでの生産を明石吉田屋産業に任せてもらえませんか、とお願いをして村櫛町のビニールハウスでの生産を引き継ぐことになりました。僕たちがまず始めることで、周辺で同じように法人で興味を持っていただける会社さんを増やせればと思っています。そして、浜松で生産農家が広がっていくことを目指しています。

先ほどお話しした高校の同級生に、村櫛町のビニールハウスで現場責任者として入ってもらい7月から『明石ファーム株式会社』という農業生産法人を立ち上げてハピトマの生産を始めたところです。

※Hapitoma®︎:ハッピークオリティー社が手掛ける、生鮮食品では日本初のGABA・リコピンのダブル成分の機能性表示食品。リコピンは通常のトマトの2倍以上、生鮮トマトで初の「ストレス緩和」のヘルスクレーム(健康表示)も認められている。

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Hapitoma ハピトマ | 静岡県袋井市で生産しているリコピン約2倍、GABAトマト「ハピトマ」の通...
静岡県袋井市にあるHappy Quality(ハッピークオリティー)では、AI技術を用いた独自の栽培方法で、生鮮トマト初の

良き思いを持ち続けることで生まれた、老舗企業×スタートアップの運命的な出会いとは?明石吉田屋産業株式会社・代表インタビュー後編

ー地域の老舗の会社さんとスタートアップが手を取り合うって珍しい事例ですよね。

経営者として、Happy Qualityさんと関わることですごく刺激をもらって勉強になっています。正直、ベンチャー企業さんが老舗の会社を相手にしてくれるなんて思ってなかったんですよ、最初は(笑)。

ーいやいやそんなことは(笑) でもHappy Qualityさんというスタートアップの会社が地元の中小企業さんに支えられて資金調達を成功させたのは、他のスタートアップさんにも勇気を与えるような事例だと思います。

僕らからすると、地域を良くして農業に貢献しようという思いが一致していれば、こんなベストなパートナーはないと思います。今後も、もっと多くの企業さんと一緒にHappy QualityさんのAI農業を広げていけるといいですね。

ー今まさに実際に生産を始めてすぐというところなんですね。明石吉田屋産業さんの元々のエネルギー事業に加え、農業分野に参入することで今後どんな相乗効果が生まれると考えられていますか?

ビニールハウスや農場で使う重油などのエネルギーを、弊社から納めさせてもらえるようになってきています。エネルギーの供給を通じて、今後農家さんの取引がもっと増えることで、エネルギー事業の方にもいい影響が及ぶと思っています。

ー明石吉田屋産業さんご自身が農業を始められることで、より農家の方との繋がりも強くなっていきますね。では、会社としての将来はどのようなものを描かれていますか?

地域の生活に必要なものとして「食」はやっぱり大事だと思っています。やっぱり、コロナの影響で飲食業さんはものすごいダメージを受けていますよね。特に飲食業界の中では会社や法人・事業規模が小さいところも多いです。飲食業しかやっていない分、経営体質や財務体質的に弱いところがあるので、廃業してしまった例も見てきました。

農業と同じで、「食」は地域に欠かせないものです。地域にお世話になっている会社として、今のエネルギーや農業事業からもう少しくくりを大きくして、飲食などの食に関わる事業展開ができたらいいと考えています。 さらに、地元の食材を使うことで、地元の農家さんがハッピーになる展開を目指したいという想いはあります。先ほど、漁業の取引もあるというお話をしましたけど、漁業とも関わりをより深めたいですね。

実は、地元で獲れた魚介類ってなかなか地元で消費されてないんです。当社は浜名湖の周辺の魚介を扱う浜名漁協さんとの取引があり、そこに漁船の燃料を収めています。取引の中で組合長さんや漁師さんの話を聞くと、いい魚がとれても結局地元で消費されずに、卸売市場を通じてほとんど大消費地である東京に出荷してしまうそうです。それを聞いたときに、確かに現状だとあまり地元の漁師さんにプラスになるものが少ないと感じました。そこで、地元で消費を促すようなことを考えないと駄目だなと。

ですので、そういった農作物や魚介、地元等のものを扱うことで、農家さんや漁師さんにとってメリットが生まれるような飲食の展開をする価値は十分にあると考えています。

ー確かに、地域生活に欠かせないものという点ではエネルギーも食も通じるものがありますね。今後の、Happy Qualityさんとのますますの連携と明石吉田屋産業さんが地域の食を支える存在になる未来に期待しています!本日はありがとうございました。

[会社概要]
【会社名】明石吉田屋産業株式会社
【URL】https://www.ay-sangyo.co.jp/
【創業】1900年(明治33年)
【設立】1946年(昭和21年)12月
【代表者】代表取締役社長 明石 真
【所在地】浜松管理本部:〒430-0944 静岡県浜松市中区田町228-5
     本社所在地:〒441-8075 愛知県豊橋市神野ふ頭町5-3