税金,差し押さえ通知,対応方法
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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
税理士・公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

税金を納付すべき期限までに納付せずに放置しておくと督促状が送られてきたり場合によっては税務署や国税庁の徴収担当の職員が乗り込んできたりすることもある。それでもまだ放置してしまうと、最終的には財産を差し押さえられ、その財産は競売などによって強制的にお金に換えられてしまい税金として徴収されてしまうのだ。今回は税金の差し押さえに来たときの対処法などについて解説する。

目次

  1. 税金の「差し押さえ」とは?税金を滞納すると調査が行われる
    1. 長期的な滞納を続けると「財産調査」が行われる
    2. 差し押さえの対象、対象でないものは?
  2. 自己破産すれば差し押さえられても税金は払わなくてよい?
    1. 税金を支払わなくてもいい?「滞納処分の執行停止」とは?
    2. 税金以外の「非免責債権」の種類は?
  3. 税金の差し押さえで生活に困ったら?分割返済を相談しよう
  4. 差し押さえになる前に計画的な税金の納付を

税金の「差し押さえ」とは?税金を滞納すると調査が行われる

給与所得者の場合は、所得税や住民税が給料から天引きされるので通常税金の滞納が問題になる可能性は少ない。しかし自営業者や中小企業の経営者、サラリーマンでも副業で一定以上の所得があったり不動産収入などがあったりする人は、確定申告のうえ納税が必要だ。そのような場合には、様々な理由で滞納が生じてしまう可能性がある。

税金を滞納したまま放置しておくと「滞納処分」が下されかねない。まず滞納の定義であるが、納付書や納税通知書に書かれている納期限を1日でも過ぎた場合、法律上は滞納となる。しかしすぐに税務署から取り立てが来ることはないだろう。まずは滞納開始から1ヵ月ほどたった後に督促状が送られてくる。それでも払わない場合、電話による督促が行われ最終的に訪問による徴収の相談へと至るのだ。

長期的な滞納を続けると「財産調査」が行われる

長期にわたって滞納を続けている場合、「滞納者がどのような生活や仕事をしているのか」といった身辺調査や、支払い能力を調べる財産調査が行われる。そして、財産調査を基に、換価可能な資産があった場合は、差し押さえが行われる。動産の場合は、自宅や事務所などを捜索される場合もある。その後、差し押さえられた財産は、競売にかけられ、滞納している税金の支払いに充当される。

税金の滞納に関する差し押さえは、法律で定められたもののため、通常の民事の債権と異なるのが特徴だ。そのため裁判所での判決などの手続きを経ることなく差し押さえが行われる。財産調査はどのようなことを調べられるのだろうか。結論からいえば税務署などに個人情報を丸裸にされる可能性があるといっても過言ではない。

なぜなら財産調査は、国税徴収法第141条に定められた権限として「個人情報保護法には抵触しない」とされているからである。具体的には以下のような内容について調査が行われる。

・勤務先
・取引先の状況
・収入元の状況
・家族構成
・戸籍や住民票の推移の状況
・給料の金額
・所有している動産・不動産・債権、銀行口座およびその取引の内容
・生命保険の契約状況など

金融機関や勤務先に税金の滞納がばれることにもつながり社会生活にも影響を及ぼすこともある。

差し押さえの対象、対象でないものは?

差し押さえの対象について銀行口座から給料債権、不動産や自動車・貴金属・棚卸資産・機械などの動産や生命保険にも及ぶ。しかし国税徴収法第75条により生活や営業に欠くことができない財産は、差し押さえができないことになっている。

具体的には、以下のようなものは差し押さえができない。

・衣服
・寝具
・家具
・台所用具
・畳および建具
・生活に必要な3ヵ月間の食糧や燃料
・収入を得るために必要な道具(農業のための農機具や、漁業のための船や網など)
・業務に欠くことができない器具
・実印など

自己破産すれば差し押さえられても税金は払わなくてよい?

税金をどうしても払えない場合、どのような解決策があるのだろうか。真っ先に思い浮かぶのは自己破産だろう。しかし破産、特に個人の自己破産の場合、税金や国民健康保険料や社会保険料も免除になることはない。その根拠は破産法第253条にあり租税等の請求権については破産しても免除にならないことが明確に定められていることである。

このような債権のことを非免責債権という。法人の場合もこの規定は適用されるが、一般的に法人が税金を滞納している場合は、破産ののち清算して会社そのものがなくなってしまうので税金を払わずに済んでしまうことが多い。しかし個人が滞納している場合は、破産をしたとしても個人としては生き続けるし、仕事も再開することになる。

そのため非免責債権たる税金や社会保険料については、少しずつでも支払っていくことが必要だ。

税金を支払わなくてもいい?「滞納処分の執行停止」とは?

しかし例外的ではあるが税金等の滞納を支払わずに消す方法がある。それを「滞納処分の執行停止」という。その請願をすることにより滞納税金を消滅させ、延滞税も含めて納税義務をなくすことが可能だ。滞納処分の執行停止は、差し押さえる財産がない場合、「差し押さえを執行することで生活を著しく窮迫させる恐れがある」と認められたとき国税徴収法153条などの規定に基づき要件を満たす。

認められれば税金の督促をされることはなくなり国税徴収法第153条4項により通常3年後経過すると税金の納付義務は消滅する。自己破産の手続きで免責が認められたということは、すでに差し押さえる財産はないため、滞納処分の執行停止も受けられる可能性が高い。自己破産をして滞納税金がある場合は、滞納処分の執行停止の請願も検討してみてはいかがだろうか。

ただし自己破産で免責された債務とは異なり3年経過して債務が消滅する前に資力が復活した場合は、当然ながら税金を支払う必要が生じてくる。就職したり仕事を再開したりして一定以上の収入が得られるようになれば自己破産する前のものに関しても税金はしっかりと払わなければならない。税金は非免責債権であるが、税金や社会保険料以外に非免責債権にはどのような種類があるのだろうか。

税金以外の「非免責債権」の種類は?

まずは破産法第253条2項の「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」があげられる。例えば故意に他人をだましてお金をとってしまった場合、それに対する損害賠償については、自己破産をして免責されたとしても支払いを続ける義務があるのだ。この場合の悪意とは、積極的な加害の意思と解釈されており過失によって不法行為となってしまった場合には、免責される。

また破産法253条3項の「故意や重い過失によって加えた、人の生命や身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」も非免責債権の一つだ。例えば故意に他人を殴りケガを負わせたことに対する損害賠償や、著しい不注意が原因で交通事故を起こし、他人にケガを負わせたことに対する損害賠償は免責が確定した後も支払いを継続する必要がある。

悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償と異なるのは、積極的な加害の意思は必要ではなく重過失による不法行為によって生じたものも免責されない。そして破産法253条4項の「夫婦間の協力・扶助の義務、婚姻費用分担の義務、子の監護に関する義務、扶養の義務、またこれらの義務に類する義務であって契約に基づくもの」も非免責債権だ。

例えば離婚した子供に対する養育費や日常の生活費などについては、免責が確定した後も支払いを続ける必要がある。破産法253条5項の「従業員への給料や預かり金」も非免責債権だ。これは、未払いの給料などを免責できるとしてしまうと一定期間のお給料が入ることが確保されなくなり従業員の生活が立ちいかなくなってしまう可能性があることから、その保護のために定められている。

さらに破産法253条6項にうたわれている「破産の申し立ての際に債権者名簿に記載しなかったもの」についても非免責債権だ。自己破産の手続きにおいては、すべての債権者をしっかりと報告する必要があるため、申し立ての際に裁判所に申告しなかったものについては、免除されない。「あとから高額の債権者が登場した」とならないように破産の際は、債権者の洗い出しを念入りに行う必要がある。

最後に破産法253条7項の「科料や過料」があげられる。これは、破産してしまえば支払わなくてよいことになれば科料や過料の制度が無意味なものになってしまう。そのためしっかりと履行させるべく非免責債権とされている。

税金の差し押さえで生活に困ったら?分割返済を相談しよう

税務署もむやみやたらと差し押さえをすることはない。連絡をしても応じない場合や納付できる能力があるのにもかかわらず難癖をつけたりギャンブルなどに浪費して支払わなかったりする場合は税金の差し押さえを行う。しかし支払いの意思があるのに資力のない人の生活を困窮させてまで差し押さえることは少ないだろう。

とはいえ滞納をそのまま放置をしていては悪質とみなされて差し押さえをされてしまうことになるため、税務署や役所に相談に行き、分割返済の滞納計画を策定することが重要だ。場合によってはかなり長期の返済計画で許容してもらえる場合もあるため、支払いが難しい事情をしっかりと説明しよく理解してもらおう。

自己破産をして他の債務が免責されている場合については、その事実を証明する「破産手続き開始決定書」や「免責決定書」を提示することが必要である。しかしそのような分割計画による支払いは法律に定められた権利ではない。あくまで税務署や役所と納税者の間の信頼関係に基づくものであるため、それさえ延滞してしまうようなことがあれば、差し押さえに入られてしまっても文句はいえないだろう。

再度の延滞の可能性がある場合は、税務署や役所に相談に行くのはもちろんであるが、生活保護の申請をする必要があるかもしれない。役所によって対応が違う可能性はあるが、一般に生活保護期間中は過去の税金の滞納処分停止扱いになり具体的に請求されることはなくなる。前述の通り執行停止になった税金は、ただちに消滅するわけではないが3年間経過すれば時効となり消滅する。

差し押さえになる前に計画的な税金の納付を

税金の滞納はよく生じてしまいがちであるが、通常所得税や住民税に関しては所得以上の税金が生じることはない。また消費税に関しても、きちんと預かり金を計算して管理していけば納付できないものではないだろう。もちろん大型の投資など資金繰りが逼迫するなか、高額の税金が生じる可能性がある場合もある。

そのような場合に備えて税金は滞納する前に金融機関や税理士ときちんと相談したうえで綿密なキャッシュプランを立案していく必要があるだろう。

文・公認会計士 内山瑛

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