矢野経済研究所
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パンの値上げ方法は若年層ほど容量減を望まず、高齢層ほど原料グレードダウンを望まない傾向

~パンの値上げ後の消費者離反を防ぐには、ターゲットや中心購買層に最適な価格改定方法が必要~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、消費者アンケート調査を実施し、AI(機械学習)による分析を通して、パンに対する消費行動などを明らかにした。

パンの値上げについてどのような方法を望みますか(単数回答)

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アフターコロナにおいてどのようなパンの販売方法を望みますか(単数回答)

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1.調査結果概要

昨今の円安による原材料・光熱動力費高騰を受けて、断続的に値上げが実施されているパンに対する消費行動について、2023年6月にアンケート調査を実施した。本調査では全国に居住する20歳~79歳の男女のうち、「食パン」「食卓ロール」「デニッシュ」「堅焼きパン」の何れか1つについて、1か月に1回以上、自身で購入し、自身も好きで食べていると回答した1,291名を対象とする。主食となるパン(菓子パンを除く)を対象とすることで、消費者にどのように継続的にパンを消費してもらい、さらに消費を拡大させていくことができるかを分析する。ここではパンの値上げや陳列・販売方法についての消費者意識を考察する。

様々な食品で値上げが実施される中、パンの値上げについてどのような方法を望んでいるか(単数回答)を聞いたところ、全体では、「価格転嫁」が43.4%で、「容量減で価格据え置き」が33.8%、「原料グレードダウンで価格据え置き」が22.9%となった。

年代別で見ると、20代では「原料グレードダウンで価格据え置き」が43.4%で最も多く、「容量減で価格据え置き」が23.1%となり、年代が下がるほど容量減を望まない傾向であった。また、年代が上がるほど原料グレードダウンを望まない傾向があるという結果であった。

値上げについては、価格を据え置きながら、容量や数量を減らした実質値上げを採⽤するケースや、そのままの仕様で⽣産コスト上昇に伴い、⼩売価格に上乗せして価格改定を実施するケースもあるが、本アンケート結果から、パンの値上げは、商品のターゲットや中心購買層に合わせて、最適な価格改定方法を採用することで、値上げによる消費者の離反を防ぐことができるものと考える。

2.注目トピック

コロナ禍を経験した消費者のパンの裸売り(袋詰めなし)に対する意識

2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行された。本調査を実施した同年6月には、生活が徐々にコロナ禍前に戻りつつある状況であった。こうしたなか、本アンケート調査の対象である全国の20歳~79歳の男女1,291名のうち、「食パン」「食卓ロール」「デニッシュ」「堅焼きパン」の何れかを、最近1年くらいで、「一番よく買う」と回答したパンについて、購入先が「ベーカリー店・パン屋※1」とした339名を対象に、コロナ禍を経験した消費者として、ベーカリー店・パン屋におけるパンの裸売り(袋詰めなし)について、どのように考えているか(単数回答)を聞いた。

全体では、「焼きたてが美味しいパンのみ裸売り」が34.8%で、「袋詰めが良い」が28.0%、「裸売りでケース陳列が良い」が18.9%、「裸売りが良い」が18.3%となった。

男女別で見ると、「裸売りが良い」は男性が22.9%で女性が14.5%となり、男性の方が「裸売りが良い」と考える割合が多い。ただし、焼きたてが美味しいパンについては男女ともに裸売りを好む傾向がある。一方で、男性は「袋詰めが良い」が32.7%、「裸売りでケース陳列が良い」が11.8%であるのに対し、女性は同24.2%、同24.7%となった。男性は女性に比べ、裸売りでケース陳列されるよりも、袋詰めされている方が良いと考える割合が多い結果となった。

本アンケート結果から、ベーカリー店・パン屋は、男性が好む傾向のある商品については焼きたての裸売り、もしくは袋詰めで陳列し、女性が好む傾向のある商品では、商品により焼きたての裸売りをしながら、陳列ケースを活用するなど、ターゲットとなる顧客層に合わせた陳列方法を工夫する必要があると考える。

※1. ベーカリー店・パン屋とは、店舗で、焼きたてのパンを販売するベーカリー店・パン屋をさす。スーパーマーケットでも、店舗内で焼きたてを提供している場合は、ベーカリー店・パン屋に属する。また、焼きたてパンを提供する移動販売を含む。

調査要綱


1.調査期間: 2023年6月
2.調査対象: 全国に居住する20歳から79歳までの男女1,291名(男性646名、女性645名)
3.調査方法: インターネットアンケート調査
<パンの消費に関する消費者アンケート調査とは>
昨今の円安による原材料・光熱動力費高騰を受けて、断続的に値上げが実施されているパンに対する消費行動について、2023年6月にアンケート調査を実施した。本調査では全国に居住する20歳~79歳の男女のうち、「食パン」「食卓ロール」「デニッシュ」「堅焼きパン」の何れか1つについて、1か月に1回以上、自身で購入し、自身も好きで食べていると回答した1,291名を対象とする。主食となるパン(菓子パンを除く)※を対象とすることで、消費者にどのように継続的にパンを消費してもらい、さらに消費を拡大させていくことができるかを分析する。

※本調査対象のパンの詳細は以下のとおり。
「食パン」は、デニッシュ系の食パンの場合、「デニッシュ」とする。
「食卓ロール」(テーブルロール)は、ロールパン全般とする。
「デニッシュ」は、クロワッサンなどのデニッシュ、デニッシュ系食パンなど、パン生地が層でサクサクした食感のパンとする。 アップルパイや、フルーツ、クリームなどがのるデニッシュは除く。
「堅焼きパン」(ハード系)は、フランスパン、バゲットなど堅いパン・石窯パン(ハードブレッド、ハードロールなど)とする。
「包装パン」は、パンメーカーが工場で生産するパンであり、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどで売られる、袋に包装されたパンとする。
<市場に含まれる商品・サービス>
食パン、食卓ロール、デニッシュ、堅焼きパン

出典資料について

資料名パン消費行動のAI分析 ~価格改定によるブランドスイッチ・嗜好のマーケティング戦略最適化~
発刊日2023年07月31日
体裁A4 470ページ
価格(税込)385,000円 (本体価格 350,000円)

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